JOURNAL #5142026.01.19更新日:2026.01.19

「長周期地震動」とは?鳥取・島根地震から学ぶ防災対策

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

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近年の地震では、高層ビルがゆっくりと、長時間揺れ続ける現象が問題になっています。その原因の一つが「長周期地震動」です。2026年新年早々に鳥取県西部・島根県東部で発生した地震でも、震度だけでは分からない大きな揺れが記録されました。

長周期地震動は、震源から離れた都市部や高層階で被害を拡大させる特徴があります。この記事では、長周期地震動の仕組みや過去の事例、緊急地震速報との関係、そして私たちが今からできる具体的な備えまでを分かりやすく解説します。

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鳥取県西部・島根県東部で発生した地震と長周期地震動

2026年1月6日午前10時18分ごろ、島根県松江市・安来市・境港市、鳥取県日野町・江府町で震度5強の揺れが発生しました。震源は島根県東部、深さ約11km、地震の規模はマグニチュード6.4と推定されています。この地震の後、午前11時29分までに計11回の揺れが確認されました。津波の発生はなく、島根原発にも異常は見られませんでしたが、島根県内で5人、鳥取県内で1人がケガを負っています。

鳥取県西部では、建物の高層階を大きく揺らす「長周期地震動」が階級4で記録されました。この影響により、民家の外壁にひびが入ったほか、石垣が崩れるなどの被害が各地で起きています。

同じ階級4の長周期地震動は、直近では2024年1月に石川県能登地方を震源とする地震でも観測されました。

長周期地震動とは?その仕組みと特徴

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地震の揺れには、私たちが普段イメージする「ガタガタとした揺れ」だけでなく、ゆっくり大きく揺れ続ける揺れもあります。このうち、周期(揺れが1往復するのにかかる時間)が長い揺れを「長周期地震動」と呼びます。

長周期地震動は、震度だけでは分かりにくい一方で、都市部の高層ビルや免震設計の建物に大きな影響を与える揺れです。そのため、近年は防災の観点からも重要視されています。

ここでは、長周期地震動が起こる仕組みと揺れの特徴、発生しやすい条件、建物への影響について解説します。

地震動の「周期」とは?長周期地震動の特徴

地震が起きると、地面はさまざまなリズムで揺れます。この揺れが一方向に動いて元に戻るまでの時間を「周期」といいます。

  • カタカタと速く揺れる → 周期が短い
  • ゆっくり大きく揺れる → 周期が長い

一般に、周期が2秒から数十秒程度の、時間をかけて大きく揺れ続けるのが長周期地震動です。

【長周期地震動の特徴】
・揺れがゆっくりで長く続く
・短い周期の揺れに比べて衰えにくく、震源から遠く離れた場所まで伝わりやすい
・高層ビルや免震構造を採用した建物、大型の貯蔵施設、長い橋などが揺れやすい
・高層階ほど揺れが大きくなり、10分以上続く場合もある

こうした特徴から、震源から数百キロ離れた都市部でも、高層ビルが大きく揺れることがあります。

長周期地震動が強くなる場所と条件

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長周期地震動は、どこでも同じ強さで発生するわけではありません。地震の規模と地盤の性質によって、揺れが強くなりやすい条件があります。

■発生しやすい条件

  • 規模が大きく、震源が浅い地震(エネルギーが大きく、周期の長い揺れが生じやすい)
  • 厚い堆積層と柔らかい地盤(揺れが増幅されやすく、高層建物では「ゆっくり大きく感じる」現象が起こりやすい)

特に、平野や盆地では、こうした条件がそろいやすい傾向があります。

さらに、関東平野や大阪平野などの都市部では、柔らかい地盤が広がり、高層ビルやマンションが密集しています。これらの条件が重なるため、長周期地震動の影響を受けやすく、揺れが大きくなりやすい環境にある点に注意が必要です。

では、こうした長周期地震動が、なぜ高層建物で特に大きな揺れにつながるのでしょうか。鍵となるのが、建物ごとに異なる「固有周期」です。

建物の固有周期と共振の関係

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建物には、それぞれ「固有周期」と呼ばれる、特に揺れやすいリズムがあります。一般に固有周期は建物が高くなるほど長くなり、木造住宅では約2秒以下、高さ100mの建物で約2秒、300m級の高層ビルでは5〜6秒程度とされています。

また免震設計の建物は、高層ビルでなくても揺れを建物全体で受け流す構造のため固有周期が長くなり、最大で約8秒程度に達する場合があります。

ここで重要になるのが「共振(きょうしん)」です。

共振とは、地震の揺れの周期と建物の固有周期が近づいたときに、揺れが次第に大きくなっていく現象を指します。これは、ブランコを同じタイミングで押し続けると、少しずつ振れ幅が大きくなるのと同じ仕組みです。

高層ビルや免震構造の建物は固有周期が長いため、長周期地震動と共振しやすいという特徴があります。その結果、ゆっくりとした大きな揺れが長時間続き、低層階よりも高層階のほうが強く揺れやすくなるのです。

次の章では、実際に起きた被害事例をもとに、長周期地震動の影響を具体的に紹介します。

これまでの長周期地震動による事例

前章で触れた長周期地震動は、震源から離れた場所でも高層建物を大きく揺らす特徴があります。実際、過去の地震では「震度がそれほど大きくない地域」で、長時間にわたる大きな揺れが発生しました。

1983年|日本海中部地震(最大震度5、M7.7)

震源から約300km離れた新潟市で長周期地震動が発生しました。石油がタンクから溢れ出る被害(スロッシング現象)が生じた一方、新潟市の震度は3にとどまり、震度と被害の大きさが一致しない例となりました。

2003年|十勝沖地震(最大震度6弱、M8.0)

震源から約250km離れた苫小牧市で、長周期地震動により石油タンクのスロッシング現象が発生しました。地震直後だけでなく、2日後に火災へと発展した点が、揺れの影響が長く続く特徴を示しています。

2004年|新潟県中越地震(最大震度7、M6.8)

内陸の中規模地震でしたが、震源から約200km離れた東京都内の高層ビルで、エレベーター用ワイヤーの損傷などが確認されました。震度は3程度でも、長時間の揺れが設備被害につながりました。

2011年|東北地方太平洋沖地震(最大震度7、M9.0)

広範囲で長周期地震動が発生し、東京都内では高層階ほど揺れが増幅されました。さらに、大阪市など遠隔地でもエレベーター停止や内装被害が発生し、影響の広がりが明らかになりました。

なぜ震度が小さくても大きく揺れるのか

これらの事例を見て、「なぜ震度がそれほど大きくないのに、あれほど揺れたのか」と疑問に感じた方も多いのではないでしょうか。

気象庁が発表する震度は、長周期地震動の大きさを直接示す指標ではありません。現在の震度は、周期0.1〜2秒程度の短い揺れ(短周期成分)をもとに算出されています。

そのため、周期が数秒から十数秒に及ぶ、ゆっくりとした長周期の揺れは、震度に反映されにくいという特徴があります。震度は人が感じる「ガタガタした揺れ」とはよく対応しますが、高層建物を大きく揺らす長周期地震動の影響は、震度の数値だけでは判断しにくいのです。

このように、震度が小さくても大きな揺れが生じる場合があり、特に都市部では長周期地震動を想定した備えが重要になります。

長周期地震動階級と実際の影響

「長周期地震動階級」は、震度では捉えにくい高層建物の高層階における揺れの「影響」を伝えるための指標です。人の行動の困難さや家具・什器の移動・転倒の起こりやすさに着目しています。

おおむね14〜15階建以上の建物を対象に、長周期地震動が観測された際の影響の目安を示します。今回の鳥取県西部・島根県東部の地震では、鳥取県西部で階級4が観測されたほか、大阪や福岡、高知などの離れた地域でも階級1が示されました。

【長周期地震動階級関連解説表】

長周期地震動
階級
人の体感:行動室内の状況
備考
階級1
(やや大きな揺れ)
室内にいたほとんどの人が揺れを感じる。驚く人もいる。ブラインドなど吊り下げものが大きく揺れる。
階級2
(大きな揺れ)
室内で大きな揺れを感じ、物につかまりたいと感じる。物につかまらないと歩くことが難しいなど、行動に支障を感じる。キャスター付き什器がわずかに動く。棚にある食器類、書棚の本が落ちることがある。
階級3
(非常に大きな揺れ)
立っていることが困難になる。キャスター付き什器が大きく動く。固定していない家具が移動することがあり、不安定なものは倒れることがある。間仕切壁などにひび割れ・亀裂が入ることがある。
階級4
(極めて大きな揺れ)
立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れにほんろうされる。キャスター付き什器が動き、転倒するものがある。固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある。間仕切壁などにひび割れ・亀裂が多くなる。
参照元:気象庁「長周期地震動に関する情報について」

長周期地震動階級は、地震発生後おおむね10分程度で気象庁からオンライン配信され、公式サイトで確認できます。

長周期地震動階級は被害を断定するものではなく、建物の構造や状態、揺れの継続時間などの条件によって影響は異なります。同じ階級でも想定より影響が大きくなる場合があり、近年の地震被害をもとに整理された目安である点に注意が必要です。

長周期地震動階級と緊急地震速報との関係|私たちがすべき備えと対応について

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ここまで長周期地震動の特徴や仕組みを解説してきました。ここでは、気象庁が提供する長周期地震動階級と緊急地震速報の関係を整理し、情報を受け取った際の行動や日常的な備えについて解説します。

予報と緊急地震速報

気象庁ではこれまで、「最大震度5弱以上」が予想される地震について、震度4以上が見込まれる地域を対象に緊急地震速報を発表してきました。これに加え、令和5年(2023年)2月からは、長周期地震動階級3以上が予想される地域についても、緊急地震速報が発表される仕組みが導入されています。

この場合、震源に近い地域への速報発表後、長周期地震動の影響が見込まれる別の地域に対して、追加で緊急地震速報が発表される場合もあります。

ただし、長周期地震動の影響は即座に判断しにくいものです。緊急地震速報は揺れの可能性を知らせる情報として受け止め、過信せず冷静な行動につなげましょう。

具体的な行動と身の守り方

長周期地震動が発生した場合、特に高層建物では、揺れがゆっくりと大きくなり、長時間続くことを想定した行動が求められます。揺れを感じたり、緊急地震速報を見聞きしたりした場合には、まず安全確保を最優先に行動しましょう。

■オフィス・住居・商業施設の場合

  • 家具や照明器具が倒れたり落下したりしにくい場所で、姿勢を低く保つ
  • 固定された机の下に入る、または手すりなどにつかまって体を支える
  • 揺れがおさまるまで、慌てて移動しない

■エレベーターの場合

  • 最寄り階で停止したら速やかに降りる
  • 閉じ込められた場合は非常呼び出しボタンを押し続ける
  • 揺れが続く間はエレベーターを利用しない

長周期地震動は揺れが長く続く特徴があるため、落ち着いて周囲の状況を確認しながら、自身の安全を最優先に行動することが大切です。

事前に行っておくべき日常的な備え

長周期地震動への備えで重要なのは発生時の行動だけでなく、日頃からの準備です。高層階では、家具の転倒や移動による被害が大きくなりやすく、エレベーター停止によって避難や救助に時間がかかる可能性もあります。被害を最小限に抑えるため、事前の対策を確認しておきましょう。

■家具・室内環境の対策例

  • 寝る場所や通路付近には、できるだけ家具を置かない
  • 家具は固定し、背の低いものを選ぶ
  • キャスター付き家具はロックして移動を防止する
  • 棚には重い物を下に収納し、落下防止器具を設置する
  • 吊り下げ式照明はワイヤーで固定する

あわせて、避難経路や安全な場所を日頃から確認し、緊急地震速報や長周期地震動階級が示す意味を理解しておくことが大切です。情報を正しく受け取り、冷静に行動できる備えが、被害軽減への第一歩となります。

【関連記事】地震に備える| 震災からあなたと家族を守るために今すぐできる対策、地震発生時の行動を解説

まとめ|長周期地震動を理解し今後の地震に備えよう

長周期地震動は、私たちが普段意識しにくい一方で、高層建物では大きな影響を及ぼす揺れです。震度だけでは判断できないため、長周期地震動階級や緊急地震速報の意味を知っておくことが重要になります。

いざという時に迷わないためにも、家具の固定や避難経路の確認など、今日からできる備えを一つずつ見直してみましょう。日常の小さな行動が、次の地震で身を守る力につながります。

【参照】
気象庁|長周期地震動について
気象庁|緊急地震速報について
札幌管区気象台|長周期地震動
日本気象協会|鳥取県西部で「長周期地震動」階級4 「長周期地震動」とは
日本気象協会|長周期地震動とは?高層ビルやマンションへの影響と対策方法
政府広報オンライン|ビルの高層階を大きく揺らす「長周期地震動」緊急地震速報に追加!
消防庁 消防大学校 消防研究センター|長周期地震動とは

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