JOURNAL #4432025.06.06更新日:2025.06.11
広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
日本では毎年、台風や豪雨などの自然災害が頻発し、多くの被害が発生しています。そんななか、被害を最小限に抑えるために欠かせないのが「気象情報」です。特に「防災気象情報」は、適切な避難行動を促す重要な役割を果たします。
この記事では、気象情報の基本から防災気象情報の活用法、さらに命を守る行動につなげるポイントまでを解説します。災害時に慌てず安全を確保するために、ぜひ日頃から気象情報に目を向けておきましょう。
気象情報とは、天気の変化や自然現象について気象庁が発表する情報の総称で、私たちの日常生活から防災まで広く活用されるものです。気象情報には「いつ」「どこで」「どのような現象が起こるか」を知らせる機能があり、平時から備えるための手がかりにもなります。
近年では災害の激甚化を受け、気象情報にも防災の視点が強く反映されるようになりました。早めの避難行動や適切な判断につなげるための「気づき」の役割も果たしています。
防災に特化した「防災気象情報」は、大雨や台風などの災害につながる現象について、気象庁が発表する重要な情報です。避難判断や行政対応を支援し、危険度を段階的に示すことで、命を守る行動につなげるのが目的です。住民の危機意識を高め、自主的な備えや避難にも役立ちます。
また、気象庁は『防災気象情報とその効果的な利用』のなかで、防災気象情報について以下のように提示しています。
情報の種類 | 概要 | 行動の目安 |
気象情報 | 警報・注意報の前後に注意喚起や防災のポイントを伝える | 防災対策や準備の参考にする |
気象警報・注意報 | 災害の可能性に応じて「注意報」「警報」「特別警報」を発表 | 注意報:警戒を始める/警報:避難準備/特別警報:すぐ避難を |
台風情報 | 台風の位置、強さ、大きさなどの実況と予報 | 台風の進路に注意し、早めの備えと避難準備を行う |
キキクル(危険度分布) | 災害発生の危険度を5段階に色分けして地図で表示 | 自宅や周辺地域の危険度を確認し、必要に応じて避難行動を取る |
記録的短時間大雨情報 | 数年に一度の猛烈な大雨を観測した場合に発表 | 直ちに安全な場所へ避難/水害・土砂災害に厳重警戒 |
土砂災害警戒情報 | 土砂災害の危険度が高まった市町村に発表(避難時間を考え、2時間先の土壌雨量を予測) | 土砂災害リスクのある地域ではすぐに避難を検討する |
指定河川洪水予報 | 重要な河川の増水・氾濫の予測 | 浸水想定区域の確認/早めの避難判断が必要 |
解析雨量 | 1km四方単位での精密な雨量観測 | 局地的な大雨の把握に利用/リアルタイムの状況確認 |
降水短時間予報 | 今後1時間ごとの雨量予測(15時間先まで) | 数時間先の大雨への対策や避難準備に活用 |
ナウキャスト(雨雲・雷・竜巻) | 数十分先の雨雲の動きや突発的現象を高精度で予測 | 突然の豪雨・落雷・竜巻などへの即時対応に活用 |
防災情報を正しく活用するには、まず自分の地域の情報を把握することが大切です。各種リンクをチェックし、最新の気象警報や防災情報を確認しましょう。ハザードマップや避難所、避難経路も事前に把握しておくと安心です。
また「防災情報は種類が多くてわかりづらい」と感じている方も多いのではないでしょうか。実際、こうした課題は以前から指摘されており、気象庁では情報の見直しを進めています。2026年春頃からは、より直感的で、行動に結びつきやすい情報提供が行われる予定です。
気象情報を正確に知ることが「守る力」につながります。ぜひ日頃から地域の防災情報に目を向けてみてください。
「特別警報」は、大雨や津波など命に関わる異常な自然現象に対して発表され、最大級の警戒を促す情報です。数十年に一度の災害級の現象が対象となり、2013年に運用が開始されました。通常の警報を大きく上回る基準で、知事や市町村長の意見も踏まえて発表されます。
気象現象に関する特別警報は、主に以下のように分類されます。それぞれの警報は「数十年に一度」の重大な災害リスクがあることを示し、最大級の警戒が必要です。
特別警報の種類 | 概要・基準 | 対応 |
大雨特別警報 | 土砂災害や浸水害など、避難指示を超える非常に危険な大雨 | 土砂災害警戒区域や浸水想定区域の住民は直ちに命を守る行動を。被害が少ない地域も油断せず警戒。 |
台風等を要因とする特別警報(暴風・高潮・波浪・暴風雪) | 伊勢湾台風級の猛烈な台風や同等の温帯低気圧による暴風や高潮 ※中心気圧930hPa以下、最大風速50m/s以上(沖縄など一部は910hPa以下、60m/s以上) | 強風や高潮による浸水・倒木・建物被害に備え、屋外からの避難や安全な場所へ移動する。 |
大雪特別警報 | 数十年に一度の大雪、50年に一度の積雪深で、警報級の降雪が丸一日以上続く見込み | 屋根の雪下ろし等危険な作業は控え、外出は極力避ける。交通機関の乱れに注意し、不要不急の外出を控える。 |
その他 | 波浪や暴風雪など、地域の災害リスクに応じた特別警報も発表される | 気象庁や自治体の最新情報に常に注意し、指示に従うことが重要。 |
特別警報は、避難指示を超える命に危険が迫る極めて深刻な状況で発表されます。警報や土砂災害警戒情報を経て段階的に発表されるのが基本ですが、台風などの場合は注意報から特別警報へ急に切り替わる場合もあります。発表を待たず、気象庁や自治体の情報に常に注意し、早めの避難・安全確保を徹底しましょう。
災害時には「自分の命は自分で守る」という意識が重要です。避難に関する情報は、危険度に応じて警戒レベル1〜5で段階的に示され、レベル3の「高齢者等避難」やレベル4の「避難指示」が出た場合には、速やかな避難が求められます。
ただし、気象庁などが発表する防災気象情報は、多くの場合、自治体の避難指示よりも早く発表されます。そのため、前述で紹介した気象情報、たとえば「キキクル(危険度分布)」や「指定河川洪水予報」といった情報をもとに、自ら状況を判断し、早めの避難を心がけることが重要です。
避難先も必ずしも指定された場所に限定せず、近くの安全な建物の上層階など、状況に応じて最適な方法で身の安全を確保しましょう。
なお、以下の記事では避難情報や警戒レベルの詳細、情報収集の方法について詳しく紹介していますので、ぜひご確認ください。
【関連記事】避難情報とは?警戒レベルの概要と実際の避難につなげるポイントを解説
近年、全国で甚大な被害をもたらしている「線状降水帯」は、発達した積乱雲が帯状に連なって同じ場所に停滞し、幅20~50km、長さ50~300kmにわたって激しい雨を降らせ続ける現象です。これにより土砂災害や河川の氾濫など、深刻な災害が発生するおそれがあります。
気象庁ではこのリスクに対応するため、2021年から「顕著な大雨に関する気象情報(※1)」の発表を開始し、2023年には最大30分前の早期発表が可能になりました。今後は2~3時間前の予測を目指し、半日前から広域への注意喚起も進めています。
私たちに求められるのは、情報を的確に受け止め、早めに避難する姿勢です。素早い判断と行動が、被害の拡大を防ぐ鍵となります。
※1)「線状降水帯」による激しい雨が続き、災害リスクが高まる状況を伝える警戒レベル4相当以上の補足情報
気象情報は知るだけでなく、理解し、行動に結びつけることが大切です。以下のポイントを押さえましょう。
これらの準備が、いざというときの迅速かつ安全な行動につながります。
なお、マイ・タイムラインの意味や作り方については、こちらの記事も参考にしてください。
【関連記事】「マイ・タイムライン」とは?災害時に迷わないための避難計画を作ろう
気象情報は単なる天気予報以上の重要な防災ツールです。この記事を通じて、さまざまな気象情報や防災情報の活用法が理解できたかと思います。日頃から情報を正しく把握し、手軽に確認する習慣をつけることで、いざという時に迅速で適切な判断ができます。
気象情報に目を向けることが、防災の第一歩。ぜひ、日常生活に取り入れて備えを強化しましょう。
【参照】
国土交通省 気象庁|気象情報 (警報・注意報に先立つ注意喚起や警報・注意報の補足など)
国土交通省 気象庁|気象情報とその効果的な利用
国土交通省 気象庁|防災気象情報と警戒レベルとの対応について
国土交通省 気象庁|防災気象情報の体系整理と最適な活用に向けて(「防災気象情報に関する検討会」取りまとめ)
国土交通省 気象庁|特別警報(全般)について、特別警報について
国土交通省 気象庁|線状降水帯に関する各種情報 | 気象庁
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