JOURNAL #612021.03.15更新日:2023.10.24

新型コロナウイルス感染症に対する官民協力による支援

ファンドレイジング担当:会沢 裕貴

こんにちは!
空飛ぶ捜索医療団ファンドレイザー兼レスキュー隊員の会沢と申します。
今回は、私が2020年12月28日から2021年1月4日までの8日間、広島市役所内に設置されていた広島市新型コロナウイルス感染症対策本部(以下、対策本部)の戦略特命チームの一員として、支援活動を行った際のレポートをご紹介させていただきます。

対策本部では、50名以上の職員が年末年始にも関わらず毎日朝から夜遅くまで出勤して、陽性者への電話での聞き取り調査、医療リソースが逼迫している中での入院調整、クラスター発生施設への支援者派遣調整など、必要となる様々な対応にあたっていました。
よくニュースで取り上げられるのは、医療リソースの逼迫、病院や高齢者施設でのクラスター発生情報、陽性者の推移が多い一方、保健師をはじめとした行政職員の方々にも大きな負担がかかっていることはなかなか取り上げられません。
私は、こうした行政職員の皆さんの日の当たりにくい地道な対応に対して、支援をさせて頂きました。

特に力を入れたのは、市役所が行う記者会見の資料作成でした。
東日本大震災以降、リスクコミュニケーションやクライシスコミュニケーションといった言葉を聞いたことがある方もいるかと思いますが、今回はアメリカ疾病予防管理センター(CDC)が2002年に開発したCERC(クライシス・緊急事態リスクコミュニケーション)の方法論を参考に市民の皆様へのメッセージの出し方を検討しました。

https://emergency.cdc.gov/cerc/ppt/CERC_Introduction.pdf
※詳しく知りたい方は、こちらの書籍をご覧ください。


クライシス・緊急事態リスクコミュニケーション(CERC)—危機下において人々の命と健康を守るための原則と戦略
https://www.amazon.co.jp/dp/446926900X/ref=cm_sw_r_em_api_i_AA4dGbKFJPM1S

市中感染を抑制するには、何より市民一人一人の行動変容にかかっているので、記者会見のメッセージの出し方によって市民の行動に影響を与えられるかが勝負になります。
そのため特に意識したのは、CERCの6原則の5つ目である「行動を促す」ことで、「自分は被害を受けるだけの無力な存在ではない。状況をコントロールすることができる」というようにエンパワーメントすることでした。

具体的には、
①10万人あたりの1週間新規陽性者数の推移データをもとに感染が縮小傾向にあり、
②これは12/12から始まった集中対策を市民の皆様が確実に実行に移してくれたからだという理由を伝え、
③市民の皆様の行動で感染をコントロールできたという事実を強調し、
④さらに陽性者を減らすために効果的な具体的な行動を伝える
といったステップでメッセージを伝えるべく発表資料を作成していきました。

広島市の10万人あたりの1週間新規陽性者数は、12/20前後には東京都よりも多く約40人/1週間・10万人を超えていたのですが、この文章を執筆している1/26現在、他の都市は軒並み高止まりしているのに対して、広島市は約10人/1週間・10万人と顕著な減少を見せています。

果たして、市役所のメッセージの出し方によって市民の行動変容が起こったのか、それとも広島市民が自発的なに行動変容を起こしたのかは定かではありませんが、クラスターが発生した病院に支援はどうしても対処療法的な支援対応となってしまうのに対して、今回の対策本部での支援活動はクラスターが発生しないように先回りする予防的対応と呼べると思います。
一緒に活動を行った対策本部の職員からは、「「グラフで示す」「わかりやすいメッセージをことばで示す」など、様々な工夫が凝らされるようになり、内外を通じて私たちの目標が分かりやすく記され、向かうべき方向性がしっかり共有できるようになりました。」とのお言葉をいただきました。

NGOの立場で、行政機関が担っている予防的対応に関われたことは私自身にとっても光栄なことでした。
こうした連携ができたのも、私たちNGOがクラスター発生病院の支援を行なっているなど、支援のプロフェッショナルであるからこそだと思います。
まだまだ広島市も完全に感染者がでなくなるまでには時間がかかると思いますが、今回の支援は官民が一体となってコロナ対応にあたることができたモデルケースと呼べるのではないでしょうか。
今後は災害時でも、行政機関への支援を通した市民のエンパワーメントをしていく支援を行っていければと思います。
一日も早く、感染がおさまることを願って、これからも私たちができる支援を続けていきます。

WRITER

ファンドレイジング担当:
会沢 裕貴

1987年生まれ、茨城県出身。大学院修了後、街づくりのコンサル、NPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン等を経て、2018年4月ピースウィンズ・ジャパン入職。

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