JOURNAL #1792022.08.10更新日:2023.10.24
医師:坂田 大三
2022年7月7日、倉敷市主催の介護保健事業者総会にて『コロナ禍と避難』という題目で講演をさせていただく機会をいただきました。
空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”では、今までに20以上の高齢者福祉施設でのクラスター対応支援を現場で行ってきましたが、災害時と同様に需要と供給のバランスが崩れパニックになった現場を多く目にしてきました。
そこで前半では、実際にクラスターが起きた病院や施設での経過を紹介した後、災害医療では有名な基本原則であるCSCATTTを紹介しました。
CSCATTTとは、災害発生後にとるべき行動、7つの基本原則の頭文字をとったものです。
Command and Control (指揮と連携)
Safety (安全確保)
Communication (情報収集伝達)
Assessment (評価)
Triage (トリアージ)
Treatment (治療)
Transport (搬送)
高齢者福祉施設ではスタッフの人数に余裕がなく、クラスターが起きた場合は職員も感染や隔離されるため、通常より少ない人数で膨大な業務をこなさなければなりません。
関連施設からの応援スタッフ、行政から派遣される感染症専門チーム等の外部支援を有効に取り入れるためにも、迅速にCSCAを確立して組織としてのマネージメントを行っていく必要があり、また平時にその準備を行っておくことが必要になります。
広島県内のある地域でのアンケート結果を参考にすると自施設内でクラスターが起きた場合の対応について事前準備・シミュレーションまで行っている施設は、全体の3〜4割弱というのが現状のようです。
後半では、避難所の現場を実際の写真を交えて紹介しました。
2018年7月6日、戦後最大級の水害をもたらした西日本豪雨に見舞われました。4年前、私は岡山市内の川の土手横に住んでおり、ほぼ土手と同じ高さまで上がってきた水位に危険を感じ夜中に家族で避難しました。
その後、川は氾濫しアパートの一階は床上浸水、数日間、自宅に帰ることができなかったのを覚えています。
被害が大きかった倉敷市真備町地区では、河川決壊や土砂崩れが同時多発し、死者51人(災害関連死を除く)の犠牲が出ました。
空飛ぶ捜索医療団を運営するピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、被災直後から、緊急医療支援・避難所運営支援・物資支援を実施してきました。
講演中にアンケートをとると、避難所へ避難した経験がある人は1割程度でしたが、「自分が住んでいる地域にどのような災害の危険があるのか」を知っていると答えた人は、7割程度でした。
これは非常に高い数値であり、「逃げ遅れゼロの町」の実現を目標とする真備地域ならではだと思います。
PWJでは地域防災事業を継続的に行っており、岡山県倉敷市真備町岡田地区では、西日本豪雨の災害検証を3つの冊子にまとめる作業のお手伝いをさせていただきました。
当日の被害状況、避難の様子、支援の状況が時間軸にそってよく分かりますので、ご関心ある方はPWJまでお問い合わせください。
また、コロナ感染者数が急速に増加している状況ですが、このまま台風シーズンに突入します。
より多くの人が、「備える」ということについて改めて考えるきっかけとなるように、引き続き防災事業に取り組んでいこうと思います。
※本事業はアメリカ合衆国国際開発庁(USAID)からの助成金やみなさまのご寄付により実施しています。
WRITER
医師:
坂田 大三
ピースウィンズ・ジャパン 空飛ぶ捜索医療団 医師 千葉県習志野市出身。外科専門医。 2019年2月から現職、バングラデシュ国ロヒンギャ難民キャンプ診療所運営に携わりつつ、平時は広島県の僻地診療所、災害時にはARROWS医師として現場へ派遣。
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