JOURNAL #4492025.07.03更新日:2025.07.03

能登半島地震から一年半が経過。復旧・復興を支える支援レポート

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

令和6年能登半島地震から1年半が経過しました。
発災直後の出動以来、約1年半ぶりに石川県珠洲市に滞在した空飛ぶ捜索医療団の坂本看護師から、
今の被災地ではどんな支援が必要とされているのか?
私たちにできることはあるのか?
活動の様子とともに現地の今をお届けします。

能登半島地震緊急支援時の坂本看護師の写真
患者さんの緊急搬送を行う坂本看護師_2024年1月4日能登半島地震 緊急支援

今回の滞在で行ったこと

今回は空飛ぶ捜索医療団を運営しているピースウィンズが主催しているお茶会や薬剤師相談会をはじめ、珠洲ささえ愛センター(珠洲市社会福祉協議会)が主体で行っている健康相談会や、現地のNPO団体主催の田植えなどをサポートしてきました。その中での会話からも被災地が抱えている課題や支援活動の必要性を肌で感じる機会になったので、いくつかご紹介します。

お茶会の参加者と会話をする坂本看護師の写真1
お茶会の参加者と会話をする坂本看護師の写真1

「やわやわ(ゆっくり)と生活も戻ってきてるけど、眠れないときもあるし、ちょっこしちきない(少し辛い)ねぇ。」

これは住民の方々と日常的な会話を交わす中で話してくださった言葉です。
地域住民の集まる様々な場で、お話しを聞きながら住民の方々の健康状態の把握や、日頃どんな不安をかかえているのか耳を傾け、必要に応じて定期的な個別相談やクリニックにつなぐなど、体調の悪化を未然に防ぐ取り組みを行ってきました。

参加される住民の方々の平均年齢はおおよそ80歳前後であり、血圧や脈拍測定を通じて血圧・脈拍等において身体面でのフォローアップが必要と考えられる方もいます。
お話ししてくださった方のように、身体的な健康だけでなく、仮設住宅や自宅避難で高齢独居の方々において精神的な孤独感や不安を抱えているケースも見受けられます。

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こういった背景から見えてくるのは、復旧・復興期において、身体の健康面のサポートだけではなく、安心して過ごせる「人が集まる場」の継続的な提供と、精神面へのサポート体制の維持・強化が今後の重要課題であると再認識しました。

「となりのばあちゃんが、部屋の温度の調整が難しいって毎日俺のところに来るんだけど、一緒に話しをきいてくれないかな?」

仮設住宅で認知症で一人暮らしの女性が、部屋の温度調整が分からなくなってしまい、隣に住む方に助けを求めているところに居合わせ、相談を受けました。

そのため「●●のときは、エアコンの冷房スイッチを押してください。」などエアコンを使った温度調整の具体的な方法を、イラストと文章で分かりやすくした掲示物を作り、女性の部屋の温度湿度計がある壁に掲示しました。その後、元々支援をしていた機関にも継続的にサポートができるよう、情報共有を行いました。

珠洲市内の仮設住宅の風景写真

仮設住宅で生活している高齢者への見守り支援は珠洲ささえ愛センターが中心に行っており、介護保険が適用されている方には訪問看護等の支援が受けられますが、各機関から応援要請を受けたときや公的支援では対応が難しい支援ニーズが発生したとき、支援活動を単体で行っていると、ときに支援に”狭間”ができてしまうケースがあるため、関係機関と連携し続けることが重要です。

そういった連携体制で息の長い支援を届けていくことは、空飛ぶ捜索医療団を運営するピースウィンズのモットーである「あきらめない集団」とも重なり、その重要性を改めて実感しました。

健康相談会で座ったままのストレッチを行う参加者の写真

「もう先は長くはないんだけどさ、ほんでも、最期まで、できたら自分の家で住みたいね。」

現在、珠洲市では住まいの再建に向けて仮設住宅から公営災害住宅、あるいは自宅の修繕・再建への移行が加速して進んでいる時期です。
高齢者の中には「住み慣れた自宅で最期まで暮らしたい」との思いを強く持ち、家屋が半壊以上の状態でも解体申請に踏み出せない方もいます。

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復興という段階において、生活再建を単なる「物理的な復旧」ではなく、「人生の選択」として本人の尊厳とQOLを考えながら、支援者として丁寧なサポートや関わり方を改めて深く考えさせられました。

地震、豪雨被害__いまだに残る複合災害の爪痕

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今回は支援活動の合間に大谷地区から輪島の方まで続く日本海沿いのエリアも訪問しました。昨年、発災数日後に支援ニーズ調査に訪れて以来の訪問でしたが、地震に加えての豪雨被害の影響はかなり大きく、その変わりようは想像をはるかに超えていました。

地震や豪雨の影響は海岸線にとどまらず山容にも大きな変化を及ぼし、周辺の街全体に大きな打撃を与えていました。
複合災害の恐ろしさを目の当たりにし、改めて今回の災害の深刻さと、今もなお続いている道路工事など、長期的な影響を実感しました。

能登半島の豊かな自然、住民の笑顔

複合災害での大きな爪痕が残る一方で、昨年の地震直後には想像できなかったほどに復興が進んでいるところもありました。地元の豊かな食を活かした飲食店の再開、珠洲の自然が見せる美しい海や空、そしてなによりも、住民の方々が向けてくださった笑顔です。
今回の滞在で目の当たりにした一つひとつの光景をとおして、地域が大変な毎日の中でも着実に復興への歩んでいることを実感し、大変感慨深い思いがしました。

「復旧・復興支援」と「将来の災害への備え」両輪で対応

今回の滞在で現場に足を運び、地域の声に直接耳を傾け、多様な課題を「現場の温度感」とともに捉えることができた貴重な機会でした。そして、住民の方々、一人ひとりの尊厳を守りながら、長期的な視野を持った支援を継続していくことの意義を、改めて実感しました。
加えて、昨今の気象変動を踏まえると、異常気象に伴う繰り返される豪雨被害等のリスクも否定することはできません。今後の災害支援活動においては「復旧・復興支援」と「将来の災害への備え」の両輪での対応が必要であると肌で感じました。

今回の滞在で感じたことや経験を大切に、これからも、その地域、そのときに、本当に必要な支援を届けていきたいと思います。

能登半島地震・豪雨で被害を受けた被災地に、継続的なご支援をお願いします

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