JOURNAL #4882025.10.21更新日:2025.10.21

【能登半島地震】震災に奪われない「心のよりどころ」を。能登の子どもたちと紡ぐ未来の笑顔。

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

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2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震は、奥能登地域に甚大な被害をもたらしました 。空飛ぶ捜索医療団を運営するピースウィンズは、緊急支援から復旧・復興支援へと軸足を移す中で、未来の能登を見据えた「子ども事業」に今、力を注いでいます 。
長期化する避難生活や復旧作業のなかで、不安を抱える子どもたち、そして子育て世帯に寄り添い続ける珠洲事務所のスタッフ2人に話を聞きました。
活動の最前線で支援を続ける国内事業部次長 兼 珠洲事務所事業統括の橋本笙子と瀬川しのぶの熱い想いをお伝えします。

高齢化率54%の町。未来を担う子供たちを守るために

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(橋本)
珠洲市は発災前から高齢化が進み、2024年10月1日時点で54.1%まで高齢化率が上がっています。当初は高齢者への支援が中心でしたが、この町で暮らす子どもたちの存在が、より強く心に残るようになりました。
未来の珠洲を担う子どもたちが希望を持って成長できる環境をつくることは、私たち大人の未来への責任だと感じています 。被災地の復旧が続く中でも、子どもたちを取り残すわけにはいかない。その想いから、こども事業に注力し始めました。

▶関連記事:珠洲事務所はリニューアルし、子どもたちの未来を照らす希望の拠点として活用。こどもひろば(仮)プレオープンの模様(活動報告)

転んでも大丈夫。チャレンジできる環境

私たちが活動の根幹として常に考えているのは、「その時、怪我をさせないように守ること」と、「子どもの成長を守ること」は決して同じではない、ということです。今は子どもたちが「守られすぎている」時代であり、本来身につけるべき「危険予知能力」や「自分で考える力」を潰してしまっているのではないかという強い危機感があります 。
私たちは、なんでもかんでも守る場所ではなく、子どもたちを心身ともにケアしつつ、「チャレンジできる場所」でありたいのです。転んでもいいという環境の中で、自ら伸びる力を信じて成長できる環境を作っていきたい。この「チャレンジできる環境」が、実は親御さんたちの心のケアにも深く繋がっています。

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初日は苦しい顔をされていたお母さんたちが、子どもが思いきり遊ぶ姿を見ることで、次第に穏やかな顔に変わっていくんです。ここで親が子と少し離れ、別々の大人や場所で遊ぶ時間を持つことが、親子の心のバランスを保つ上で非常に大切だと感じています。
私たちは、単に「子ども支援」をするだけでなく、子どもたちが様々なチャレンジを通して自分の人生を切り開いていく、その成長の伴走者でありたいと願っています。そして、この活動を地元に根付いたものとして継続していくために、地元の方々を巻き込み、一緒に活動を担っていく土壌を作り上げることが大切だと感じています。

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親子で安心して過ごせる場所を

(瀬川)
お母さんたちは日々の育児と震災後のストレス、子どもの教育への焦りを深く抱えていらっしゃいます。私たちが「こどものひろば」をオープンしたとき、スタッフが思った以上に、乳幼児を抱えたお母さんたちが来場しました。
これは、珠洲市の現状が背景にあります。震災後、校庭が仮設住宅になったことで、乳幼児から児童まで、子どもたちの自由に遊べる場所が大きく減少しました。

だからこそ、まだ歩けない乳幼児と、思い切り体を動かしたい児童という、異なるニーズを持つ子どもたちが、共に安心して過ごせる居場所の選択肢を増やす必要性がありました。

微力ではありますが、「こどものひろば」が少しでも救いの場になっていれば嬉しいです。

「ここが居場所だ」

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活動をする中で、リピートしてくれる子が非常に多くなったという変化を感じています。
最初、子どもたちは恐る恐る来るのですが 、一度来て、「ここは僕たちが来ていい場所なんだ」という確信を持ったら、その子たちは繰り返し来てくれるようになります。この、最初のこわごわした顔から、「ここが私の居場所だ」と思った時の顔つきや行動の変化は、本当に印象的でした。

また、こどものひろばの真の意義は、「親御さんたちにとっても、子どもたちにとっても居場所には選択肢がある」という状態を作り出すことです。
特に今の珠洲市には屋内の広い遊び場は他にありません。
この居場所が、選択肢の中の重要な一つになれる意義は大きいと考えています。

マイナスの経験で終わらせないために

(橋本)
災害そのものは、人生におけるマイナスの経験です。私たちの目標は、このマイナスの経験をそのままにせず、この時期を通して、いかにそれをプラスに転じられるかを探ることです。

私たちは、この目標を達成する活動を、子どもたちの成長を支える「入り口」だと捉えています。そのため、ご連携いただく企業様やボランティアの方には、単なる物資支援よりも、「子どもたちに経験をさせてほしい」とお願いしています。これまでに延べ200人もの外部の方々が関わり、様々なプログラムを提供してくださいました。今後も多様な方と連携しながら、事業をさらに充実させていきたいです。

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ふるさとの誇りを未来へつなぐ

(瀬川)
能登の里山里海は、世界農業遺産に指定された素晴らしい場所ですが、「どう自然体験をさせたらいいか分からない」という親御さんの声も聞かれます。そこで私たちは、このひろばを里山里海への「出発点」として積極的に活用し、地元の団体と連携した体験プログラムをさらに充実させていきたいです。

震災によるマイナスなイメージを払拭し、能登のこの土地ならではの魅力を子どもたちに伝えるためです。進学などで故郷を離れる子どもたちが、能登を「心のよりどころ」として思い出せるよう、海や山での特別な経験を未来にわたって届け続けていきます。まずは、今年12月のグランドオープンに向けて、着実に準備を進めていきたいです。

共に悩み、共に進む

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(橋本)
今回の能登半島地震からの復興は、過去の災害と比べても圧倒的に遅いと感じています。

3年連続の地震に加え、2024年9月の豪雨などにより、「立ち上がろうとしては、くじかれる」という厳しい状況が続いています。懸命に頑張っている人ほど心が折れそうになり、どう頑張っていいのか分からなくなった人も少なくありません。公的・民間の支援が引いていく中でも、安易に「時間が経ったから大丈夫」とはせず、地域の方々と共に長く伴走し続けることが不可欠です。

あなたの寄り添いが希望に

どうか、私たちと一緒に、子どもたちの笑顔とふるさとの誇りを守るための伴走者になっていただけませんか ?
皆様の温かいご協力が、震災を乗り越える子どもたちの力となり、能登の未来を照らす確かな光となります。
ぜひ、ARROWSサポーター(月に一度の継続寄付)で災害支援活動に参加してください。

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