JOURNAL #3832024.12.25更新日:2024.12.25
広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
1月1日に発災した令和6年能登半島地震からまもなく1年。中長期にわたる支援活動のなかで大きな課題となってくるのが災害関連死です。その対策として今、災害ケースマネジメントの取り組みが注目されています。現在も珠洲市に駐在し支援活動を続ける空飛ぶ捜索医療団"ARROWS"のスタッフも、災害ケースマネジメントの一翼を担う支援を続けています。今回は、災害ケースマネジメントをテーマに、その取り組みの実際と意義についてレポートします。
災害ケースマネジメントは、東日本大震災、熊本地震、平成28年鳥取県中部地震等の災害において、地方公共団体が主体となっておこなわれてきた、災害支援の取り組みです。
令和3年度に内閣府によって
「被災者一人ひとりの被災状況や生活状況の課題等を個別の相談等により把握した上で、必要に応じ専門的な能力をもつ関係者と連携しながら、当該課題等の解消に向けて継続的に支援することにより、被災者の自立・生活再建が進むようマネジメントする取組」
と、定義されています。
この「定義」に「課題」を照らし合わせると、災害ケースマネジメントは以下のように説明できます。
このように、災害ケースマネージメントとは、支援を届ける各機関(社会福祉協議会、弁護士、災害ボランティア、NPO、保健師、民生委員・児童委員、ケアマネジャーなど)が手を取り合い、きめ細やかに支援を届けるための取り組みで、災害関連死や支援から抜け落ちてしまう人を防ぐ効果が期待されています。
【関連記事】災害ケースマネジメントとは?“個人に寄り添う”新たな視点からの支援について解説
「被災したら我慢して当然」という意識は、どこの国よりも多くの被災経験があり、誰もが明日被災者になる可能性を持つ災害大国・日本では特に、変えるべき意識です。私たちは、個人の尊厳を守る支援を行い、助け合うことが重要だと考えます。
避難先を選択する際のプライオリティも「家族」「財産」あるいは「仕事」「ペット」だったり、その人が何を大切にしているかによってその選択も多様化します。
在宅避難者のAさんは、当初は避難所での暮らしからペットも同居可能な仮設住宅に入ることを検討していました。しかし、愛犬は仮設住宅に入った友人宅に行ったときに固まり、怖がってしまったそうです。
「普段はほとんど吠えないけれど、慣れない場所ではそうもいきません。ほかの方のご迷惑になるのではと心配もつきませんでした」といいます。
そこで悩んだ末に、Aさんは自宅を修理して愛犬と一緒に暮らすことを選択されました。
空飛ぶ捜索医療団はその選択を尊重し、戸別訪問で看護師による健康チェックを継続しながら、技術系団体やボランティアにつなぎ、雨漏りを防ぐ補修や防寒対策など、時期や必要に応じた支援を届けながら見守っています。
現在Aさんは、愛犬との暮らしをとおしてストレスによる体調不良も回復してきました。
在宅避難者のBさんは、様々な事情が重なって避難所にはいかず、自宅を修復しながら夫婦で暮らていました。
在宅避難の場合、支援者側から出向き、コミュニケーションを図っていかなければ、抱える悩みや課題に気づくことは極めて難しいといえます。空飛ぶ捜索医療団は、Bさんのお宅にも訪問活動をこまめに続けました。
スタッフは、屋根の補修、瓦礫などの片付けのために技術系団体やボランティアを依頼したり、困り事があれば丁寧に聞いたりすることを通じてBさんの信頼を得て、今では些細なことでも相談してくださるようになりました。
現在は、心配していた体調も徐々に安定し、長年の大工仕事で培った技術で耐震強化を施した新しいご自宅を、夫婦でマイペースにつくっています。
「心配事があればいつでも言ってくださいね」と支援者側が投げかけても、被災者の方々は、様々な事情で支援窓口を訪ねたり声を上げることが難しい方も多くいます。
そういった事情を放置してしまうと抱えている問題が時に悪化し、最悪の場合「災害関連死」につながることが過去の災害で示されています。
私たちが続けている「一人ひとりに寄り添う」支援は、災害ケースマネジメントの特徴のひとつでもあり、支援を届ける側としてとても重要な姿勢です。
ときに支援を届ける側は、自分ができる支援の範囲内での限定された再建への筋道のみにこだわってしまう傾向にあります。実際には被災者の方が何に困っているのかを伺うと、例えば生活再建のための公的制度へのアクセスだけではなく、福祉へ繋げる必要もある場合が少なくありません。これは高齢化社会のいま、日本中のどこでもあり得ることです。
公的機関だからできる支援、医療・保健・福祉関連事業団体だからできる支援、そして私たち民間の支援団体だからこそできる様々な支援、それぞれが強みを生かして連携し被災地を支えることで、「一人ひとりに寄り添う」という概念は本当の意味で機能します。
本格的な冬を迎える目前の能登半島、民間団体としての柔軟かつ迅速な支援を強みに、他の機関との連携を強め、相次ぐ災害に疲弊している被災地を支えてまいります。
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