JOURNAL #3992025.01.31更新日:2025.01.31

気候変動が引き起こす自然災害|地球環境と私たちの生活を守るためにできること

近年、地球温暖化や異常気象が引き起こす災害の規模や頻度は、私たちがこれまで経験してきたものとは異なり、予測を超えるものとなっています。この状況において「私たちができることは何か」「どのようにして地球環境を守るための対策を講じるべきか」を考える姿勢が大切です。この記事では、気候変動が起きる背景と自然災害との関連性について解説します。また、個人レベルで実践可能な対策も紹介しますので、日々の生活にぜひ役立ててください。

気候変動とは?

「気候変動」とは、地球の気象パターンが長期的に変化する現象です。この変化は数十年から数世紀にわたり、気温や降水量、風向きなどに大きな影響をもたらします。特に近年、気候変動のスピードや規模が増大し、自然環境や人々の生活に深刻な影響を及ぼしています。

気候変動の原因には自然要因が含まれますが、最も懸念されるのが人為的要因です。火山活動や太陽の放射量変動などの自然要因と比べて、人類の活動による地球温暖化が急速な気候変動の主な原因といわれています。

地球温暖化のメカニズムとそれが気候変動に与える影響について詳しくみていきましょう。

なぜ気候変動は起きるのか?

出典:地球環境研究センター|ココが知りたい地球温暖化(JCCCA WEBサイトより)

気候変動の主な原因は、人類の活動による温室効果ガスの増加にあります。これらのガスが大気中に蓄積され、地球の熱を閉じ込めることで気温の急上昇を引き起こしているのです。

温室効果ガス(CO2やメタン、亜酸化窒素など)は、地球の気温を適度に保つ重要な役割を担っています。しかし、その濃度が過剰に増えると地球に留まる熱が増加し、気温が急激に上昇します。この現象が地球温暖化の仕組みであり、気候変動の直接的な原因です。

温室効果ガスの濃度が急増した背景には、以下のような人為的要因が挙げられます。

  • 化石燃料の大量燃焼:産業革命以降、石炭・石油・天然ガスの使用増加により、CO2が大量に放出
  • 森林減少:CO2を吸収する森林の伐採が進行し、吸収能力が低下
  • 農業と畜産:家畜からのメタン排出や農業による亜酸化窒素の増加
  • 経済成長とエネルギー需要:特に発展途上国での化石燃料依存の増加

これらの活動により、大気中の温室効果ガス濃度が急激に増加しました。

具体的に、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告から国土交通省や環境省がまとめた資料によれば、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度は1750年から2019年の間に約47%増加しました。同時に、産業革命以降、地球の平均気温は約1.09℃上昇しています。

このような状況は自然の調整能力を超えたものであり、地球全体の気候バランスを崩していると考えられます。

出典:温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)/気象庁|地全体の二酸化炭素の経年変化(JCCCA WEBサイトより)
出典:IPCC第6次評価報告書(JCCCA WEBサイトより)

気候変動による影響

気候変動がもたらす影響は、異常気象の増加や生態系の変化を通じて、地球全体に広がっています。その具体例をみていきましょう。

異常気象の増加

地球温暖化は、異常気象を引き起こしています。たとえば、豪雨や熱波、干ばつの頻度が増加しており、雨の降り方が極端化しています。さらに、氷河の融解や海水の熱膨張による海面上昇も深刻な問題です。

生態系の変化

気温や降水量の変化は生態系に直接的な影響を及ぼします。多くの動植物が生息地の移動を余儀なくされ、一部の種は絶滅の危機に瀕しています。また、海洋生態系でもサンゴ礁の白化現象が進み、海洋生物に深刻なダメージを与えています。

農業や畜産、漁業への影響

気候変動は、さまざまな産業にも大きな影響を及ぼしています。気温や降水パターンの変化により、農作物の収穫量が減少し、食料供給の安定性が脅かされています。また、酷暑による家畜の健康悪化やストレス、漁業では一部魚類の減少、回遊パターンの変化なども深刻な課題です。

以上のような変化は、自然環境だけでなく人間社会にも大きな影響を及ぼします。日々の食生活や仕事に影響を与えるだけではありません。異常気象により、沿岸部や島嶼地域が洪水や浸水のリスクに直面するなど被害が増加しています。

自然災害と気候変動の因果関係

出典:気象庁|日降水量400mm以上の年間日数(JCCCA WEBサイトより)

地球温暖化が進行するなかで、気象パターンの変化が顕著となり、これが自然災害の激甚化や頻発化を引き起こしています。ここでは、災害の規模と頻度をもとに気候変動と自然災害の関連性についてみていきましょう。

豪雨・短時間強雨の増加

国土交通白書2022(1 気候変動に伴う災害の激甚化・頻発化)によれば、1901年以降、国内の51観測地点において1日の降水量が200mmを超える日数が約1.7倍に増加。また、全国約1,300の観測地点では、短時間強雨(1時間降水量50mm以上)が1976年以降で約1.4倍増えており、地球温暖化による大気中の水蒸気量の増加が主な原因とされています。

熱波や猛暑

近年の記録的な熱波や猛暑も気候変動との関連が指摘され、たとえば異常ともいえる暑さが近年顕著に起きています。EU気象機関「コペルニクス気候変動サービス」によれば、2024年の世界平均気温は観測史上最高を記録し、産業革命前からの気温上昇幅が初めて1.5℃を超えたことが発表されました(*)。

また、アメリカではラスベガスで観測史上最も早い時期に43.9℃を超える気温が記録され、インドのニューデリーでは40℃以上の暑さが1か月以上続くなど、異常気象は世界的な規模で発生しています(**)

参照:*BBC NEWS|2024年世界の平均気温 抑制目標の「1.5度」初めて超える/**ウェザーニュース|2024年 世界の気象トピックス 各地で熱波や大雨被害

台風の強度や頻度

地球温暖化が台風に与える影響は複雑です。過去の観測データでは、台風の発生数や強度の長期的変化は明確でなく、自然変動も大きいとされています。しかし、将来的に強力な台風の頻度や降水量が増える可能性が高いとの予測もあり、特に日本では極端な降雨や、台風の経路変化による災害が増える可能性が指摘されています。

実際に昨年9月に発生した能登豪雨では多大な被害が発生しました。一部では、この豪雨が地球温暖化と関連している可能性が指摘されています。

能登豪雨と気候変動

2024年9月に発生した能登豪雨では記録的な降水量が観測され、石川県能登半島を中心に大きな被害が出ました。この豪雨は温暖化による気象パターンの変化が影響していると考えられています。

近年、日本各地で豪雨が頻発しており、特に能登地方では海の熱波の影響が顕著で、気象庁気象研究所「令和6年9月の石川県能登の大雨に地球温暖化が寄与」によると、再現実験の結果、地球温暖化がなかった場合と比べて、能登地方の9時間積算雨量が約15%も増加したことがわかりました。

温暖化が進行すると、海面水温が上昇し、それに伴い大気中の水蒸気量も増加します。気象庁気象研究所の藤部文昭氏によると、気温が1℃上がるごとに空気が保持できる水蒸気量は約7%増加するため、降水量が増え、豪雨が激化します。この影響により、極端な天候がより頻繁に発生するリスクが高まるのです(*)。

能登豪雨は、気候変動による異常気象の一例として、今後同様の災害が発生する可能性が高いことを示しています。温暖化の進行とともに、効果的な対策を講じる重要性が増しているといえるでしょう。

参照:*気象庁気象研究所|温暖化に伴い強雨は増えるのか?-アメダス観測が示す気温と強雨の関係-

気候変動への対策と具体的な取り組み

近年、気候変動がもたらす災害の頻度と規模が増加しており、2024年には世界の平均気温が産業革命前から1.5℃を初めて超えた(1.6℃)ことが報告されました。これは、地球温暖化の進行が人間社会と自然環境に及ぼす影響をさらに深刻化させる可能性を示すものです。

特に、限界レベルとされる2℃に近づきつつある状況において、国際的な協力と個々の行動がこれまで以上に求められています。日本でもパリ協定に基づき、地球温暖化対策を推進する取り組みが進んでいます。ここでは、政府や企業などの具体的な対策事例を一部紹介します。

「地球温暖化対策推進法」(日本)

令和7年4月1日に施行される改正地球温暖化対策推進法は、日本の温暖化対策を一層強化する重要な改正です。この改正では温室効果ガスの排出削減目標が具体化され、企業や自治体の責任が強化されました。

2050年までのカーボンニュートラル実現が明記され、再生可能エネルギーの導入や省エネルギー技術の推進が重要な柱とされます。また、企業や自治体の積極的な取り組みが求められるとともに、温暖化対策は国民全体の課題であることも強調されています。

▶環境省|地球温暖化対策推進法と地球温暖化対策計画

トヨタの環境憲章

トヨタは、1992年に「トヨタ地球環境憲章」を策定し、環境への取り組みを強化しています。特に、2015年に発表した「トヨタ環境チャレンジ2050」では、気候変動や資源循環、生物多様性の保全に向けた6つのチャレンジを掲げ、カーボンニュートラル実現や資源の有効活用、自然共生を目指しています。

▶トヨタ|トヨタ地球環境憲章

メタンガスを減らす取り組み

メタンガスは、牛の消化過程で発生し、地球温暖化に影響を与えます。北海道大学の小林泰男教授は、カシューナッツ殻液を飼料に加えることでメタン排出を20~30%削減することに成功しました。また、北海道大学と出光興産株式会社との共同研究によれば、このカシューナッツ殻液の使用は乳牛の乳量を増加させ、肉牛は肉質を維持しつつ体重が増加することが確認されています。

参照:Think and GROWRICC|牛のげっぷに含まれるメタンガスを減らす取り組み/エネフロ|Vol.39 牛のゲップを減らせ!地球温暖化防止のカギ

山梨県「CO2ゼロやまなし」

山梨県は「CO2ゼロやまなし」を宣言し、2019年度に2013年度比で18.2%の温室効果ガス削減を達成しました。2030年には26%、2050年にはカーボンニュートラルを目指しています。県は再生可能エネルギー由来の水素を利用する技術開発を進め、さらに「4パーミル・イニシアチブ」により土壌に二酸化炭素を貯蔵し、農業のブランド化にも取り組んでいます。

参照:ジチタイムズ|ゼロカーボンシティ宣言の背景やメリット・ 自治体の取り組み事例

これらの取り組みは、日本が温暖化対策を強化し、持続可能社会の実現が前進していることを示しています。今後も個人、企業、政府が一丸となり、協力しながらさらに成果を上げていくことが求められます。

個人(家族)でできる気候変動への対策

出典:国立研究開発法人 国立環境研究所|温室効果ガスインベントリオフィス(JCCCA WEBサイトより)

地球温暖化の進行により、気候変動が私たちの生活に深刻な影響を与えています。しかし、国民一人ひとりができることを意識し、日々の生活に取り入れることで持続可能な社会の実現に貢献できます。以下に、国連広報センターの「個人でできる10の行動」を参考にし、私たちが取り組むべき具体的な行動をまとめました。

エネルギーの節約

家庭でできるエネルギーの節約は、CO2排出量の削減に大きな効果を発揮します。冷暖房の温度設定を適切にし、LED電球の使用や、使わない家電の電源を切るだけでも、エネルギーの無駄を減らせます。また、可能であれば家庭の電力を再生可能エネルギー源に切り替えることも検討しましょう。

移動手段の工夫

車の使用を減らし、自転車や公共交通機関の積極的な利用は温暖化対策につながります。長距離の移動時には、電気自動車の選択も推奨される方法の一つです。徒歩や自転車の利用は環境にやさしいだけでなく、健康にも良い影響を与えます。

生活習慣の改善

日常生活において、ゴミを減らしたりリサイクル活動に参加したりする取り組みを進めます。また、地元の季節ごとの食材を選んで食生活を見直すなど、日々の生活に意識的な行動を取り入れていきましょう。

環境問題への関心と行動

私たちの消費行動が地球に与える影響を意識し、環境に配慮した商品やサービスを選ぶことが大切です。温室効果ガス排出削減に取り組む企業や自治体を知り、その商品やサービスを利用すれば、持続可能な未来に貢献できます。また、家族で環境問題について話し合い、意識を共有する機会を設けることも重要です。さらに、節電など具体的な行動を実践し、その効果を測定する取り組みも推奨されます。

防災意識の向上

気候変動に伴う自然災害のリスクが高まる中、防災準備が欠かせません。また、豪雨や洪水に備え、地域のハザードマップを活用して避難のタイミングを見極めましょう。高解像度化された地図を活用することで、より視覚的にリスクを把握し、早期の避難行動が可能となります。

また、過去の災害の教訓を生かし、地域の防災情報を定期的にチェックして防災意識の向上に努めましょう。

地球温暖化の進行を食い止め、気候変動に備えるためには、一人ひとりの行動が不可欠です。小さな一歩の積み重ねが大きな変化を生むことを意識し、日常生活の中でできる取り組みを積極的に実践していきましょう。

気候変動と自然災害の関係を理解し適切な対策をとろう

気候変動は、私たちの生活に深刻な影響を及ぼしており、自然災害の頻度や規模が増加しています。この問題を解決するためには、温室効果ガスの削減やエネルギーの転換など国際的な協力が必要不可欠です。

また、個人の取り組みも重要であり、気候変動への対策は個人の意識と行動が集まって効果を発揮します。私たち一人ひとりが将来の地球を救う力となることを再認識し、具体的な対策を実行に移していきましょう。

空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”の災害支援の取り組み

空飛ぶ捜索医療団は大規模災害の被災地にいち早く駆けつけ、救助・救命活動を行う、医療を軸とした災害緊急支援プロジェクトです。

「一秒でも早く、一人でも多く」の命を救うことを使命として、これまでの経験と強みである「機動力」「専門性」「ロジスティクス能力」を活かし、また、被災者に寄り添う気持ちを大切にしながら活動を行っています。

また、予測される災害に対して発災前から対象地域と協力し防災活動に取り組み、行政の支援が行き届かない地域や自主避難所などにも支援を届けるなど、民間団体ならではの柔軟な機動力で被災地を支援してきました。

これからも被災地で一人でも多くの命を救うために一秒でも早く被災地に入り、支援活動を開始できるよう、私たち災害医療支援チームへのご支援をお願いいたします。

\2分でできる被災地支援/
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【参照】
国立環境研究所 地球環境研究センター|解説 異常気象と地球温暖化の関係について
国立環境研究所 地球環境研究センター|ココが知りたい地球温暖化
環境省 |エコジン「猛暑や大雨によって起こる災害にどう備える?気候変動の観点から、防災について考えてみよう
環境省|令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書「第2章 気候変動影響への適応
国土交通省|国道交通白書2022「気候変動に伴う災害の激甚化・頻発化」
国土交通省|特集 激甚化する豪雨災害から命と暮らしを守るために
国土交通省|平成17年度 国土交通白書「コラム・事例 地球温暖化と大雨、台風の関係
農林水産省|4. 気候変動が食料供給等に与える影響
文部科学省|気象庁気象研究所「令和6年9月の石川県能登の大雨に地球温暖化が寄与-イベント・アトリビューションによる結果-
気象庁気象研究所|温暖化に伴い強雨は増えるのか? 
千葉商科大学|MIRAI Times「地球温暖化とは? 気候変動が起きるメカニズムとその影響をかんたん解説
BBC NEWS|2024年世界の平均気温 抑制目標の「1.5度」初めて超える
ウェザーニュース|2024年 世界の気象トピックス 各地で熱波や大雨被害
国連広報センター|個人でできる10の行動
全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA:Japan Center for Climate Change Actions)

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