JOURNAL #4102025.03.11更新日:2025.03.13

津波に備える|津波から命を守るために知っておくべき備えと避難行動~3.11の記憶と教訓~

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

東日本大震災で津波被害を受けた、気仙沼・鹿折地区

津波は命を脅かすおそろしい自然災害である――そのことを2011年3月11日に発災した東日本大震災で私たちは目の当たりにしました。過去の津波被害から学んだ大切な教訓は「事前の備え」と「迅速な避難」です。この記事では、家族や自分の命を守るための準備や避難行動について解説します。日々の備えが生死を分けると認識し、いざという時に冷静に対応できるよう準備を進めましょう。

津波について

津波は地震や火山噴火、海底地滑りなどによって発生し、大規模な海水移動を引き起こす現象です。特に海溝型地震(海洋プレートと大陸プレートの境界で発生する地震)が発生すると、持ち上げられた大量の海水が波となり、広範囲に影響を及ぼします。以下に津波発生のメカニズムと特徴を解説します。

津波が発生する仕組み

津波は、主に海底の地震によって発生します。震源が海底の浅い場所にある場合、地殻の割れ目で地面がずれること(断層運動)で海底が隆起または沈降し、それに伴って海面が大きく変動します。この変化が周囲に波として広がり「津波」となるのです。

<津波が発生する主な流れ>

1.地震の発生:海底で大きな地震が発生する(震源が比較的浅い場合、海底の変形が海水全体に影響を与えやすい)
2.海底の変形:断層運動により、海底の一部が隆起・沈降する
3.海面の変動:海底の変化が海水全体を持ち上げ、波を発生させる
4.波の伝播:発生した大きな波が四方八方へ拡がり、沿岸を襲う

地震の規模や海底の変動によって、津波の大きさや到達速度は異なります。いずれにしても津波は非常に速いスピードで進行するため、発生を知った時点で速やかに避難することが極めて重要です。

津波の特徴

2011年3月11日、大津波が宮城県宮古市を襲い、閉伊川河川堤防を越波した瞬間(画像提供:東北地方整備局震災伝承館

津波にはいくつもの特徴があります。正しく理解することで、迅速かつ適切な避難が可能になります。以下に、津波の主な特徴をご紹介します。

<津波の主な特徴>

●速さ
深い海では時速500~800kmと、飛行機並みの速さで進む。一方、水深が浅くなるにつれて速度は低下するが、依然として非常に速く、海岸付近でもオリンピックに出場するような短距離選手並みのスピードで押し寄せることがある。
●高さ
浅瀬に近づくにつれて波のエネルギーが圧縮され、津波は急激に高くなる。特に海岸の地形によっては数倍の高さに達することもある。
●リピート
最初の波が最大とは限らず、後続の波がより高くなる場合もある。津波は反射を繰り返しながら何度も押し寄せることがある。
●時間の長さ
通常の波と異なり、津波は長時間にわたって強い潮の流れを生み出し、引き波も強烈である。
●地形による増幅
湾の形や海岸線の構造によっては波が集中して高さが増すことがある。特にV字型の湾や岬の先端では、最大で4倍程度の標高まで駆け上ることもある。

津波の速度は浅瀬で低下しますが、その分エネルギーが圧縮されるため、波の高さや破壊力が増す点に注意が必要です。

また「津波の前には必ず潮が引く」という考えは誤りとされており、目に見える変化がなくても津波は発生するため、速やかに高台へ避難することが重要です。

津波の被害とその恐ろしさ

2011年3月11日、東日本大震災で津波による甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市内の様子。奥が津波堆積物で覆われた津波遡上区域(画像提供:東北地方整備局震災伝承館

津波は台風による高潮や大波とは異なり、大量の海水が一気に流れ込むため、非常に大きな被害をもたらします。その主な影響は次のとおりです。

<津波の被害>

●人的被害
避難が間に合わない場合、命を落とすリスクが高まる
●浸水や津波の勢いによる建物の損壊
家屋が破壊され、住民の安全が脅かされる
●船舶の損傷・衝突
津波の力で船舶が損傷し、他の物体と衝突する可能性もある
塩害や土壌汚染
農業や漁業に大きな影響を及ぼし、地域の生活基盤を脅かす
ライフラインの寸断
電気、水道、ガスなどのライフラインが停止し、生活に困難が生じる

2011年3月11日に起きた東日本大震災では岩手、宮城、福島の太平洋沿岸部が巨大な津波に襲われました。震災の人的被害として、死者の9割が津波による溺死とされています。

内閣府防災情報のページ『特集 東日本大震災』によると、震災で観測された津波の高さは、福島県相馬で9.3m、岩手県宮古で8.5m、大船渡で8.0m、宮城県石巻市鮎川で7.6m以上を記録。さらに、宮城県女川漁港では14.8mの津波痕跡も確認されています。

2011年3月11日、仙台市南蒲生浄化センター屋上からの津波遡上状況(画像提供:東北地方整備局震災伝承館

また、津波の最大遡上高(陸地の斜面を駆け上がった津波の高さ)は40.5m、浸水範囲は6県62市町村・合計561km²に及び、山手線内側の約9倍の広さが被害を受けました。この経験から、津波への備えと迅速な避難の重要性があらためて認識されています。

津波への備えを万全に|個人や家庭ですべきこと

津波は突発的に発生するため、事前に適切な準備を行い、迅速に行動することが求められます。日頃から以下のポイントを押さえて、万全の対策をしておきましょう。

ハザードマップを確認する

各自治体が作成する津波ハザードマップを確認し、自宅や職場、学校周辺の浸水予想区域や避難場所を把握しておきましょう。ハザードマップには、津波の浸水想定や避難経路、避難場所等が記載されています。

海沿いだけでなく、河川沿いでも津波の影響を受ける可能性があるため、広範囲のリスクを確認することが大切です。

なお、ハザードマップの確認は国土交通省のハザードマップポータルサイトでも確認できます。

津波避難ビル・津波避難タワー・避難場所と経路をチェックしておく

適切に避難するためには避難場所だけでなく、そこへ向かう経路も事前に確認しておくことが重要です。以下のポイントを参考に、災害時に備えましょう。

  • 最寄りの高台や指定避難場所(津波避難ビル、津波避難タワー等)を確認する
  • 徒歩での移動時間を把握しておく
  • 災害時に利用可能なルートを複数確保する
  • 津波標識や身近な危険個所を事前にチェックする

災害時には道路の寸断や建物の倒壊など想定外の事態が起こる可能性があります。そのため、避難ルートは一つだけでなく、複数の選択肢を用意しておきましょう。実際に避難経路を歩いてシミュレーションすることで、いざというときに迅速で安全な避難が可能になります。

また、津波標識や危険個所の確認は日常生活だけでなく、旅行や出張先でも意識しておくと安心です。

非常用持ち出し袋を準備する

津波発生時は迅速な避難が何よりも重要です。必要最低限の持ち物を事前に準備し、すぐに持ち出せるようにしておきましょう。

  • 飲料水と非常食
  • 懐中電灯(夜間の避難を考慮)
  • モバイルバッテリー
  • 笛(救助を求めるため)
  • 常備薬・救急セット
  • 防寒具・レインコート
  • 家族の連絡先情報

津波避難では素早く高台へ逃げることが最優先です。荷物は最小限にし、できるだけ両手を自由にして移動しましょう。事前の備えが安全を左右するため、定期的に持ち物を見直し、家族と避難計画を共有しておくことが大切です。

【関連記事】防災グッズを見直そう|負担感のない安心安全な備え方とは?

家族との連絡方法を決めておく

災害時には通信回線が混雑し、電話やメールがつながりにくくなる状況が予想されます。そのため、家族と事前に連絡方法を確認しておきましょう。たとえば、以下のポイントを参考にしてください。

■複数の連絡手段を確保する

家族と安否確認を行うために以下の手段を活用しましょう。

■連絡ルールを決めておく

  • どの手段を優先するか(例:171→SNS→メール)
  • 安否確認のタイミング(例:地震発生後30分以内にメッセージを送信)
  • 緊急時の集合場所(自宅・避難所・親戚宅など)

■事前に試しておく

実際に災害用伝言ダイヤル(171)や三角連絡法を家族で試し、緊急時のスムーズな利用につなげましょう。また、災害時に使用するアプリをスマートフォンにインストールし、使い方を確認しておくことも大切です。

日頃から家族で話し合い、確実な連絡手段を確保しておきましょう。

防災訓練に参加する

地域で行われる防災訓練に進んで参加し、実際の避難経路を確認しておきましょう。訓練に参加することで緊急時に落ち着いて行動でき、家族や地域の防災意識も高まります。また、防災訓練だけでなく、地域行事などに積極的に参加し、顔なじみをつくっておくことで、いざというときの声かけや助け合いにつながる場合があります。

津波発生時の避難行動

2011年3月11日、発災当日17時過ぎ、津波で冠水した多賀城市街地。横断歩道橋に大勢の方が避難している(画像提供:東北地方整備局震災伝承館

津波は、地震などによって突然発生し、短時間で大きな被害をもたらす可能性があります。そのため、津波情報が発表された際には正確な情報を速やかに確認し、迅速な避難行動をとることが重要です。

以下に、津波情報の把握と迅速な避難行動について解説します。

津波警報や注意報を確認する

気象庁は、平成25年3月7日から新しい津波警報の運用を開始しました。地震発生から約3分(一部の地震では約2分)を目標に、大津波警報・津波警報・津波注意報を発表しています。これらの情報をリアルタイムで把握し、適切な避難行動をとることが求められます。

<津波警報・注意報の種類>

発表基準予想される津波の最大波の高さ想定される被害と取るべき行動
大津波警報予想される津波の高さが3mを超える場合10m超/5m/3m・木造家屋が全壊
・流失し、意図は津波による流れに巻き込まれる
・沿岸部や川沿いの人は、ただちに高台や避難ビルへ避難する
津波警報予想される津波の高さが1mを超え、3m以下の場合3m・標高の低い地域では浸水被害が発生し、人は津波に巻き込まれる危険がある
・沿岸部や川沿いの人は、ただちに避難する
津波注意報予想される津波の高さが0.2m以上、1m以下であっても被害が予想される場合1m・海の中では人が早い流れに巻き込まれ、養殖いかだの流失や小型船舶の転覆の恐れがある
・海岸付近の人はすぐに離れる
参照:国土交通省「津波警報・注意報、津波情報、津波予報について

津波警報や注意報を発表した場合には、津波が到達する予想時刻や津波の高さなどを津波情報で発表します。

「巨大」と予想される大津波警報が発表された場合、東日本大震災のような規模の津波が襲来するおそれがあります。また、30cmの津波であっても流される危険があるため、油断せず迅速に行動することが重要です。

津波警報や注意報は、以下の手段でリアルタイムに確認できます。

<津波情報の入手方法>

津波フラッグとは津波警報等の発表を視覚的に伝える旗を指し、聴覚障害者や音が聞き取りにくい場所(海水浴場や海岸付近)でも警告を伝えるものです。

携帯電話やスマートフォンでの受信に関しては、各社の警報配信に関する情報を確認しておきましょう。

NTTドコモauソフトバンクワイモバイル楽天モバイル

迅速な避難行動を心がける

地震の強い揺れや長い揺れを感じた場合、津波の危険性を即座に認識し、速やかに避難することが重要です。避難する際は、次のルールを守り、冷静に行動してください。

<避難の基本ルール>

  • 地震を感じなくても津波警報が発表されたら、即座に避難する
  • 強い揺れや長い揺れを感じたら、すぐに海岸から離れ避難する
  • 津波注意報でも海岸や河川は危険なので近づかない
  • 正確な情報はラジオ、テレビ、防災無線などで確認する
  • 津波は繰り返し襲うため、警報や注意報解除まで海岸や河川には近づかない

「津波が見えない=安全」という誤った認識を持たず、すぐに安全な場所へ避難することを心がけてください。また、事前に避難経路や避難場所を家族と確認し、緊急時に冷静に行動できるよう準備しておきましょう。

津波は短時間で甚大な被害をもたらすため、迅速な避難行動が生死を分けることになります。正確な情報をリアルタイムで取得し、警報が発表されたら即座に行動しましょう。

なお、こちらの記事では地震発生時の避難行動について詳しく解説していますので、本記事と合わせてご確認ください。

【関連記事】地震に備える| 震災からあなたと家族を守るために今すぐできる対策、地震発生時の行動を解説

津波避難の心得~津波てんでんこの教え~

「津波てんでんこ」は三陸地方で伝わる教えであり、津波が発生した際には各自がすぐに避難することを促すものです。この教えは「自助」の重要性を強調しつつ、個々の迅速な行動が結果的に「共助」へとつながる側面も持っています。津波は想像以上の速さで襲ってくるため、誰かを待つ余裕はありません。大切なのは、家族がそれぞれ避難していると信じ合い、迅速に避難して自分の命を守ることです。

実際、2011年の東日本大震災では、岩手県釜石市で防災教育を受けた児童生徒約570人が「津波てんでんこ」を実践し、全員が無事に避難しました。この教訓は、命を守るためには日常的な避難準備と、家族や地域の信頼関係が不可欠であることを教えてくれます。

命を守るための津波への備えを万全に

地震や津波は突然発生し、その威力は計り知れません。命を守るためには事前の備えが不可欠です。防災グッズの準備に加え、津波に関する知識や警報の確認、家族との連絡手段、避難経路の把握を徹底しましょう。  

また、防災訓練や地域活動に参加し、避難行動をシミュレーションすることで、冷静な対応が可能になります。「津波てんでんこ」の教えを念頭に置き、迅速な判断と行動ができるよう、日頃から準備を整えておくことが大切です。

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【参照】
国土交通省|津波防災のために
気象庁|津波から身を守るために
気象庁|津波警報・注意報、津波情報、津波予報について
気象庁|津波を予測するしくみ
気象庁|津波発生と伝播のしくみ
気象庁 仙台管区気象台|津波からいのちをまもる
気象庁 福岡管区気象台|災害に備える – 地震・津波災害に備える」〜津波に対する心得〜
ながおか防災|津波を知る

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