JOURNAL #4122025.03.14更新日:2025.03.14

【東日本大震災から14年】未だ帰れぬ故郷と、新たな挑戦の地

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

東日本大震災・福島第1原発事故から14年が経ちました。空飛ぶ捜索医療団を運営するピースウィンズ・ジャパン(ピースウィンズ)は、発災直後から被災した各所で支援をおこない、現在も主に福島の原発事故で影響を受けた地域への支援を続けています。

浜通りはいま、新たな挑戦を生み出すインキュベーターに

福島第1原発について昨今のニュースで見かけるのは、廃炉作業の重要な課題である処理水の海洋放出や燃料デブリの取り出しについてではないでしょうか。この地域の現状といえば、上の地図からも分かるように、ピンク色の部分は未だに帰宅困難区域のままです。

しかしそのなかでも、緑色の斜線部分である、避難指示が解除され居住を可能とする「特定復興再生拠点区域」が年々広がってきており、本当に少しづつですが帰還が進んでいます。

この帰還困難区域の多い浜通りの北側は「相双地域」と呼ばれ、相馬市、南相馬市、新地町、飯舘村、広野町、楢葉町、川内村、富岡町、大熊町、双葉町、葛尾村、浪江町があり、ピースウィンズは現在も、この地域で支援活動を続けています。

被災してから手付かずのままの建物(双葉町、2023年4月撮影)
あちこちに放射線計が(常磐自動車道、2023年4月撮影)
大量に積まれた除染土(浪江町、2023年4月撮影)
この先は立ち入り禁止区域(浪江町、2023年4月撮影)

浪江町は、原発事故の影響で全域が避難対象となり、一時は住民がゼロになりました。災害前は約21,500人だった人口は、現在14,518人(住民登録がある人の数、2025年2月末)ですが、実際に住んでいる人数は2,274人に留まっています。

何年も経ってやっと帰ってきた人、帰りたくても帰れない人、避難先に住み続け、浪江にはもう帰らない、と決めた人…。

しかしそんななか、これまで特に浪江に縁があったわけではない「移住者」も増えています。

移住者が増えている要因のひとつ「福島イノベーションコースト構想」は、東日本大震災及び原子力災害によって失われた産業を回復するため、新たな産業基盤の構築を目指す国主導のプロジェクトです。

「廃炉」、「ロボット・ドローン」、「エネルギー・環境・リサイクル」、「農林水産業」「航空宇宙」等の重点分野があり、「福島国際教育研究機構F-REI」や「福島ロボットテストフィールド」ができて、最先端の研究が進められています。

それ以外にも、新たにお店をはじめる人、被災によって失われた特産物の農場を再建しようとする人、ベンチャーを立ち上げる人など、若い人の移住も多くなっています。

津波に流されてしまった浜通りはいま、新たな挑戦を生み出すインキュベーターになっているのです。

福島ロボットテストフィールドに設置されている滑走路

馬を軸に人と人をつないでいく

一方、相双地域には昔から根付く伝統があります。

「相馬野馬追」をご存知でしょうか?甲冑姿で乗馬し、騎馬戦や「お行列」、競馬等をおこなう、1000年以上続く伝統の神事です。

相双地域では、一般家庭で馬を飼っている人もおり、野馬追の時期が近くなると、会場となる雲雀ケ原祭場地では、出場者が練習をする姿も見られます。老いも若きも、野馬追に出場するのは名誉なことで、家族総出で応援に行きます。

相馬野馬追の様子(2023年)
練習帰りの馬

ピースウィンズは、地元NPO「相馬救援隊」と連携し、馬を軸に多様な人たちをつなぐ事業をおこなっています。

大きくて温かい馬に触れることで心の癒しの場を提供しつつ、いろいろな人たちがつながり新しいコミュニティができあがっていく、そういう事業を目指しています。

お年寄りからは、「懐かしい。昔はうちにも馬がいたのよ」といったお話が聞けたり、都会から来た若者は「初めて馬に触れた。こんなに大きいんだと思った」という感想もお寄せいただき、仕事や学校など、日常生活に疲れてしまった人が「温かくて癒される」と話してくれました。

相馬救援隊の馬たちは、かつては競走馬でした。殺処分するのではなく、人間と一緒に働く仲間として第二のキャリアを歩んでほしいという思いで、ピースウィンズと相馬救援隊は引退競走馬の保護をおこなっています。

馬の保護事業を行っている中澤ピースウィンズ福島支援事業現地責任者

相双地域は、厳しくつらい記憶だけの土地ではもうありません。さまざまな新しい挑戦が始まり、それが新しい人の輪をつくって、コミュニティが形成されていく、未来へ向かう土地になっています。ピースウィンズは、これからも支援活動を通じて地域に寄り添い、応援していきます。

馬とのふれあいイベントにて

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