JOURNAL #4162025.03.21更新日:2025.03.24
広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
テレビや新聞、各ニュースサイト等で、高層ビルやマンションで火災が起きている写真や映像を見たことはありませんか。それをみて「もしも自分の部屋あるいは隣の部屋が火事になったら、燃え移ってしまうのだろうか?」と、不安を感じられたかもしれません。マンションは、火災に備えた構造になっているケースが多いものの、マンション特有のリスクも持ち合わせており、身の安全を守るには事前知識と対策が欠かせません。この記事では「マンション防災」の一環として、マンションでの火災リスクと事前の備え、いざ火事が発生したときの行動について解説します。
通常、マンションは、戸建てよりも火災に強い構造になっています。また、戸建てで火災が発生すると全焼するリスクも高いですが、マンションでは火災が発生した部屋のみの被害にとどまり、全体的なダメージは少なくて済むのが一般的です。
その理由は、マンションに義務付けられている『耐火構造』です。耐火構造とは、火災が収束するまでの間に建物の倒壊や延焼を防ぐための建築物に必要とされる性能を意味しています。
具体的には、「各構造部分の種類や建物の階数に応じて、平均して1時間から3時間まで、熱を加えても各構造部分が変形や破壊、溶解など、構造耐力上支障ある問題を生じない」とされています。
それでも、現状としてマンション(アパート)での火災は起こっています。消防庁の統計によると、令和5年(2023年1月~12月)に起きた建物火災 20,974 件のうち、17.7%にあたる3,712件は共同住宅での火災でした(*1)。
また、東京消防庁のデータによると、11階以上の高層マンションにおける火災件数は、増減しながらも増加傾向にあり、近年では100件を超える件数が続いていることがわかります(*2)。
こうして考えると、「マンションは確かに火災への耐久度が強いけれど、火災によるダメージは起こり得る」ものと言えるでしょう。
消防庁が発表した令和5年(2023年1月~12月)に起きた住宅火災の主な原因は、
と報告されています(*1)。
もっとも多い原因は「コンロ」で、調理中の火の扱いであることがわかりました。揚げ物や焼き物などをしている最中に火元を離れた結果、起きてしまう火災です。こうした火災はガスコンロだけでなく、IHコンロでも起こり得るため、調理中には十分な注意が必要です。
そのほかにも、たばこの吸い殻やストーブ、配線や電気機器の扱い等も火災の原因になり得ます。特に年式の古い電化製品は、火災を引き起こすリスクが高いため、10年以上使用しているものは買い替えを検討しましょう。
マンションで火災が発生した場合、一般的な火災と同様、
などのリスクが考えられ、身の安全や健康上のリスクが高いことに変わりありません。
逃げ遅れは、大規模なマンションや高層マンションによく指摘されるリスクです。マンションに火災が発生すると、火元の部屋から廊下、階段にまで熱や煙が及びます。ここで逃げ遅れてしまうと、熱や煙による窒息や火傷などの二次被害につながってしまいます。
また低層階の方がパニックになって窓から飛び降りるケースが見受けられますが、これも非常に危険な行為です。
こうしたリスクを避けるためにも、火災発生時はまず火元を確認した上で消防に通報し、速やかに安全な場所に逃げましょう。
マンションは気密性が高く、そのため火災が発生すると、一酸化炭素中毒や酸欠のリスクが高まります。この状態が続くと命の危険に関わるケースもあるため、火災報知機や一酸化炭素検知器を用意し、リスクの早期発見に役立てましょう。
また、火災を収めるために消火活動を行うと、建物や設備、入居者の家財などが濡れてしまいます。鎮火には必要な活動ではありますが、水損のダメージを抑えるために、火災保険や家財保険に加入しておくことをおすすめします。
地震と同様に、火災が起こるとマンションのエレベーターは停止します。仮に動いていても、途中で閉じ込められるリスクが高く、密閉された状態で熱や煙のダメージを受けることもあります。そのため、火災発生時はエレベーターではなく、階段を使いましょう。
さらにマンションは多くの入居者が生活するため、逃げるときには人が集中し、密集状態になることが想定されます。とりわけ火災発生時は混乱状態になりやすく、逃げるのに時間がかかることも考えられるため、全員が安全に避難することを前提に、入居者同士で協力しましょう。
マンションの火災は、マンションという構造上、火や煙によるダメージに加えて人災も起こり得ます。そのことを踏まえ、以下のポイントを抑えましょう。
マンションでの火災対策として、はじめに以下の5つの点について確認しましょう。
建築構造が「鉄筋コンクリート造」または「鉄骨鉄筋コンクリート造」であれば、鉄筋や鉄骨をコンクリートで覆っているため、火災が起きても高温を防げます。火災の影響による変形や崩壊も起こりにくいため、火災に強いといえるでしょう。
周囲の建物と距離が近いと、火や煙がほかのマンションにまで広がるリスクがあります。この場合には、隣のマンションからダメージを受けることもあるため、周囲との距離を確かめてみましょう。
自動火災報知器やスプリンクラー、消火器、避難ハッチ、非常口や避難階段などの防災設備も、マンションの安全性を左右します。
火災警報器は、火災発生の早期発見と警告には欠かせないものです。つまり、火災警報器に何らかの問題があれば、住民に火災を知らせることができず、被害の拡大につながります。だからこそマンションの管理人や住民同士で連携をとり、電池の残量などを定期的に確認する必要があります。
スプリンクラーとは、自動的に水を噴射して鎮火する装置のことで、11階以上のマンションには設置する義務があります。高層マンションの管理者は、スプリンクラーがいざというときにしっかりと作動するように点検しておく必要があります。
また、管理人や防災スタッフが常駐しているマンションは、火災の発生や延焼について専門的な知識を持ち合わせており、適切な対応を促してくれます。
自分が住んでいるマンションの安全性や設備などが確認できたら、
など、個人レベルで可能な確認および準備をしていきましょう。
マンションの非常階段、非常口などの避難経路を事前に把握していると、火災発生時に冷静に避難することができます。また、消火器や消火栓などの避難器具も、初期消火をスムーズに進めるために役立ちます。火災発生時は多くのケースでパニックになりやすいため、事前確認や準備が何よりも大事です。
そのほか、避難はしご、緩降機(かんこうき)、すべり台、すべり棒、避難橋、避難用タラップ、救助袋、避難ロープなどの避難器具も確認しておきましょう。ベランダには、避難はしごがある
また、日ごろの生活から火災に備えるには、布製品を防災タイプで揃えておくことも選択肢のひとつです。発煙や有毒ガスの発生量を抑えられ、二次被害を防ぐのに役立ちます。近年ではソファやベッド、カーテンなどに防災タイプの商品が販売されているため、買い替えの時期に検討してみましょう。
最後に、避難訓練への参加は非常に重要なポイントです。一般的に50人以上のマンションでは避難訓練は法令的に定められていませんが、年に一度の定期防災訓練が義務付けられています。
飲食店があるマンションでは、年に2回以上の避難訓練や消火訓練がされる決まりとなっています。避難訓練で段取りを確認することで、火災発生時の冷静さに直結しますので、積極的に参加しましょう。
万が一マンションで火災が起こったときは、「直後の行動」と「避難するための行動」の2つの視点が必要になります。それぞれ詳しくみていきましょう。
ここで言う“直後”とは、火災が発生して間もないころです。二次被害やダメージの拡大を防ぐためにはすぐに逃げるのではなく、以下のような行動を意識しましょう。
火災を発見したら、まず大声で「火事だ!」と叫びましょう。これはマンション内の入居者や近所に火災を知らせるための行動です。全フロアに声を掛けていると、ご自身が逃げ遅れてしまうため、自分が住んでいる階だけでも構いません。非常ベル、アラームなどでもマンション全体に火災を知らせましょう。
身の安全を確保できたら消防の119番に通報し、火災の発生場所の住所を冷静に伝えましょう。
マンションでの火災発生時には火災報知器が自動で作動しますが、時によって動かないケースもあります。火災報知器が機能していない場合には、自身で火災報知器を鳴らすようにしましょう。
火災が初期消火できるほどに小規模である場合には、消火器で対応します。その際には、逃げるルートを確認しながら、火元に向かってピンを抜き、レバーを握りましょう。消化場所に着くまではピンを抜かず、いざ使う時まで待ちます。消火器の使い方は避難訓練でも習いますので、手順を覚えておきましょう。
もしも炎が天井まで広がっていたら、初期消火は不可能です。そこで身の安全を確保するために、ただちに避難することが大切です。その際には、以下のポイントを覚えておきましょう。
火災で避難する際には、煙を吸わないように気をつけることが重要です。鼻と口をタオルやハンカチ、マスクなどで守り、煙や炎が見られるところで使います。水に濡れたハンカチがあればより理想的ですが、なければ衣服の袖でも鼻と口を守ることができます。
煙を吸わないためには、顔を下に向け、姿勢を低くして非難します。煙の色が黒くなると一酸化炭素によるリスクも高くなり、命の危険に及ぶこともあります。床を這うほどに姿勢を低くし、壁を頼りに避難しましょう。
マンションから避難する際には、部屋の窓やドアを閉め戸締りを徹底することで燃え移りや消火活動による水損を防ぐことができます。
通常のエレベーターは止まるリスクが高いため、利用は避けるべきです。火災時に利用できる非常用エレベーターもしくは避難ハッチ(避難はしご)や非常階段などを利用しましょう。
下の階に降りられない場合には、屋上に逃げます。煙は下から上にのぼるために屋上も安全ではありませんが、避難具が設置されていれば地上に避難できます。またレスキュー隊も屋上であれば救出できるため、どうしても避難が不可能な場合には有効な手段です。
マンションの部屋から部屋への移動が必要になった場合には、ベランダから避難します。このとき、緊急避難用の『隔て板』がありますが、通常時に損傷しないために造られているため、普通の力で蹴っても逃げられるほどの穴は空きません。
このとき、後ろから何度も蹴ると、蹴る力が強くなり、穴が開きやすくなります。直径40センチくらいまで開いたら隣の部屋まで逃げ、避難を進めましょう。
火災発生時に冷静に行動するには、個人での心がけはもちろん入居者同士の共助も必要です。
火災が起こり得ることを踏まえ、日常的に挨拶をするなど声掛けをして協力体制を築いておきましょう。また、避難経路についての情報を共有することで、さらに強い協力体制がつくられます。共用消火器や避難器具の設置も、直後の対応に役立ちます。
マンションでの火災は全焼のリスクこそ低いものの、逃げ遅れや一酸化炭素中毒、現場の混乱などのリスクが考えられます。さまざまな不安があるかとは思われますが、ダメージを最小限に抑えるには、事前準備と現場を想定しての行動が不可欠です。今回の記事を参考に、いざというときの備えを進めておきましょう。
*1)消防庁|令和5年(1~12月)における火災の状況*
*2)東京消防庁|令和6年版 火災の実態
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空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
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