JOURNAL #4292025.04.21更新日:2025.04.18

地域防災を支える「消防団」とは?消防士との違いや役割、入団方法をわかりやすく解説

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

火災や地震、台風など、さまざまな災害から地域を守る「消防団」。その存在は知っていても、「消防士とは何が違うの?」「ボランティアなの?」「自分でも参加できるの?」といった疑問を持つ方も少なくないでしょう。

この記事では、消防団の基本的な役割や消防士との違い、さらに待遇や入団方法まで詳しく解説します。「名前は聞いたことがあるけれど、実際はよくわからない」「興味はあるけれど一歩踏み出せない」という方にとって、きっと役立つ内容です。地域防災の要として活躍する消防団について理解を深めていきましょう。

消防団とは?

消防団とは、火災時の消火活動に加え、地震や風水害などの災害時には救助・救出活動や避難誘導、災害の拡大を防ぐための防御活動も行う組織です。地域に密着した消防組織として、各地の防災力を支える重要な役割を担っています。

消防団の最大の特徴は、団員の多くが会社員や自営業者など、本業を持ちながら活動している点です。平時は火災や災害の被害を未然に防ぐための予防活動や啓発活動を行い、災害時には一斉に集まって地域の安全のために行動します。

団員は「非常勤特別職の地方公務員」として位置づけられており、完全なボランティアではなく、公的な身分と一定の報酬もあります。

消防団の主な役割

前述のとおり、消防団の活動は火災対応に限られません。近年では、火災による出動は減少傾向にある一方で、風水害など自然災害への出動が増加しています。さらに、消防団は災害対応にとどまらず、平常時には防災啓発活動や地域イベントの支援など、地域に密着した役割を担っている点も大きな特徴です。

ここでは、消防団が担う災害時および平常時の主な活動内容を紹介します。

【災害時の活動】

  • 火災の現場での消火や救助
  • 地震や台風、豪雨といった自然災害時の避難誘導や被害状況の確認
  • 土のう積みや排水活動など、地域の初動対応

特に近年は、火災よりも風水害や地震などの自然災害に対応するケースが増加しています。日本では南海トラフ地震や首都直下地震などのリスクが高まっており、こうした大規模災害における初動対応を担う力として、消防団の存在がますます重要になってきています。

【平常時の活動】

  • 地域の巡回や見回りによる火災予防活動
  • 高齢者宅などへの防火訪問
  • 自治体や学校と連携した防火・防災教室の開催
  • AED(自動体外式除細動器)や応急手当の講習会

普段から地域の人々と密接に関わり、信頼関係を築いているのも消防団の大きな強みです。その結果、災害時には地域住民との連携が取りやすく、迅速かつ的確な対応につながっています。

消防団の多様な参加形態

消防団の活動は地域コミュニティの絆を深めるとともに、防災意識を次世代へ受け継ぐ重要な役割も担っています。特に近年では、多様なライフスタイルに対応できるよう柔軟な参加形態が用意されています。

  • 女性消防団員:防火訪問や応急手当指導など、きめ細やかな地域支援に活躍する
  • 学生消防団員:学業との両立を図りながら、消火や救助活動を通じて地域防災について学ぶ(就職活動に活用できる「学生消防団活動認証制度」もある)
  • 機能別消防団員:すべての活動には参加できないが、特定の業務(訓練補助、啓発活動など)に特化して貢献する

このように、年齢や性別、職業、ライフステージを問わず「できることに取り組む」スタイルでの消防団への参加が可能となっています。

消防団と消防士の違い

消防団と消防士は、どちらも地域の安全を守る存在です。ただし、その立場や役割には明確な違いがあり、以下のように区別されます。

項目消防団消防士
身分非常勤公務員(市町村条例による)常勤公務員(地方公務員法による)
所属消防団消防署・消防本部
本業別にあり消防業務が本業
活動非常時中心常時勤務(シフト制)

消防団は地域住民による非常勤の公務員であり、「自分たちの地域は自分たちで守る」という精神のもと活動します。災害時の初期対応や啓発活動が中心です。

一方、消防士は常時勤務の専門職として火災・救急対応や防火業務を担います。両者は役割こそ異なりますが、特に大規模災害時には互いに支え合う、いずれも地域防災に欠かせない存在です。消防団は地域に密着した柔軟な支援ができる点でも重要な役割を果たしています。

消防団と企業との関わり

かつては自営業者が中心だった消防団員も、現在では約7割が企業に勤める会社員などの被雇用者となっており、地域防災を支えるには企業の理解と協力が欠かせません。社員が非常勤公務員として消防団に参加するには、勤務先の出動支援や訓練への配慮が不可欠です。

こうした背景から、国も「消防団協力事業所表示制度」を設け、協力的な企業を評価・認定する体制を整えています。企業にとってはCSR(企業の社会的責任)活動の一環となるだけでなく、地域住民とのつながりや従業員の防災意識向上といった波及効果も期待されます。

消防団との連携で企業と地域の双方にメリットを生み出すことが、防災力を高める鍵といえるでしょう。

消防団はボランティア? 報酬や処遇について

消防団は地域の安全を守る存在として、ボランティア的な性格を持ちながらも、実際には地域貢献に見合った適正な処遇が整備されています。

参照:総務省|消防団の組織概要等に関する調査(令和6年度)の結果

近年、消防団員の数は年々減少しており、特に20~30代の加入減少が深刻な課題です。その一方で、女性や学生の消防団、機能別消防団など、新しい参加スタイルも広がりつつあります。こうした現状を踏まえ、団員の処遇改善の必要性が高まり、2021年(令和3年)には消防庁から「非常勤消防団員の報酬等の基準」が示されました。

この基準に基づき、以下のような報酬や手当などが設定されています。

項目内容備考
年額報酬年間36,500円(「団員」階級の場合の標準額)費用弁償として扱われ、年間5万円まで非課税対象
出動手当(災害対応)1日あたり8,000円(標準額)火災・風水害・地震など災害に関する出動時/1日あたり8,000円まで非課税対象
出動手当(その他の出動)業務負荷等を勘案して決定訓練や行事など/1日あたり4,000円まで非課税対象
交通費出動にかかる交通費が支給非課税対象
公務災害補償制度公務中のケガや病気に対して補償療養補償・障害補償・遺族補償など7種の補償項目あり
退職報償金勤務年数や階級に応じた慰労金が支給される多くの市町村で条例により定められている
表彰制度職務にあたり、功労・功績のあった方を表彰する消防表彰規程に基づいて表彰される

※詳しくは総務省消防庁『消防団員の処遇について』のサイト情報をご確認ください。

活動にあたっては報酬や補償制度も設けられており、多くの人が安心して参加できる環境が整いつつあります。なお、消防団の制服については通常、支給あるいは貸与されます。

処遇や支給内容については自治体ごとに異なる場合があるため、入団を検討する際には各自治体の公式情報を確認することが大切です。

消防団に入るには?

消防団への入団資格や方法は市区町村の条例で定められていますが、一般的には以下のような条件があります。

  • 18歳以上
  • 地域に居住・通学・勤務している
  • 心身ともに健康である
  • 公務員の方は報告や許可が必要

入団を希望する場合は、まずお近くの消防団や消防署に問い合わせてみましょう。その後、面談や活動内容の説明を受け、納得したうえで手続きを進める流れになります。

現在では、性別や職業を問わず、さまざまな方が自分のライフスタイルに合わせて活動しています。学生や子育て中の方などでも、柔軟な関わり方ができるのも特徴です。

なお、お近くの消防団はこちらから検索可能です。「自分にできることがあるかも」と感じたら、まずは気軽に話を聞いてみるところから始めてみてください。

消防団は地域防災を支える身近で頼れる存在

消防団は「自分たちの地域を自分たちで守る」精神のもと、平時から非常時まで幅広く活動する防災の要です。消防士とは異なり、地域住民が本業と両立しながら地域防災に貢献しています。

報酬や補償制度も整っており、学生や女性、企業勤めの方でも無理なく参加できる仕組みが用意されています。

「地域に貢献したい」「防災に興味がある」そんな気持ちがあれば、誰でも参加を検討できる消防団。地域防災の知識を深め、できるところから行動に移したいと思っている方は、ぜひ地元の消防団について調べてみてください。

【参照】
総務省消防庁|消防団
東京消防庁|首都東京を守る消防団
総務省|消防団の組織概要等に関する調査(令和6年度)の結果

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