JOURNAL #4812025.10.05更新日:2025.10.05

【静岡県竜巻被害から1カ月】つながりの力で「支援の限界」を打破するために

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「国内最大級」と言われる竜巻が9月5日に静岡県牧之原市や吉田町を襲ってから、今日で1カ月になります。空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”は被害の拡大を受け、看護師ら5名を被災地に派遣し、支援を行いました。

現地入りしたメンバーの1人が、能登半島地震で被災した石川県珠洲市に現在も駐在し支援を続けている橋本笙子です。災害支援で豊富な経験を持つ橋本が、今回の竜巻被害や支援活動の様子や、見えてきた課題を振り返りました。

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地震とは全く違う「竜巻」での被災

日本では大規模な竜巻の発生はこれまで多くなく、地震や台風などに比べると、警戒すべき災害としてあまり認識されてきませんでした。ただ今回の竜巻で大きな被害が出たことで、地震などとは違う竜巻特有の被害状況が浮き彫りになりました。

竜巻が大きな被害をもたらすのは主にその通り道で、被災地域は非常に局所的になります。被災した家とまったく被害を受けていない家が道路を1本挟んだところにあるなど、「被災した生活」と「通常の生活」が同時期にすぐそばで存在するという点が、周辺地域一帯が被災する地震などとは異なる特徴です。

人によってまったく受けた損害が異なるため、住民感情も複雑で、つらいものがあります。「なぜうちだけがこんな目に」と思うのも無理のないこと。こうした被災者の方の心を安らげるために私たち支援者ができることは、とにかく気持ちに寄り添うこと、丁寧にコミュニケーションをとることしかありません。出来る限りのことをしましたが、それでも「もっと丁寧に対応するべきだった」と後悔したこともありました。

住宅被害に乏しい支援、その理由は?

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また今回の被害では、被災住宅への公的支援の問題が明確になりました。今回の竜巻で、2,000棟近くの家屋が被害を受けましたが、実は公的支援が限られます。

竜巻で屋根が損傷したケースが多いのですが、屋根の被害だけでは、罹災証明書に記載される被害の程度は「準半壊」以下。公的支援が限られるため自主再建を中心に生活を再建することを考えなければなりません。しかし、屋根が壊れた状態で日常生活を続けるのは困難ですし、雨が吹き込めば家全体が傷んでしまいます。

この問題は以前から存在していたのですが、今回、それが多くの方の生活再建に影響を及ぼすこととなってしまいました。改善が急がれる制度上の課題です。

「つながりは力」実感した支援活動

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こうした課題の一方で、支援の中で感じた手応えもありました。その筆頭が、官民で連携しての活動です。牧之原市では、私たちが現地入りしてすぐに災害対策本部会議に加えていただき、協力して活動することができました。

私は、災害支援は官民両方の力を生かすことが重要だと考えています。行政の大きな支援から零れ落ちてしまう人たちを拾い上げるような活動は、民間だからこそできること。行政とピースウィンズでできることが異なるからこそ、協力し合うことで包括的な支援につなげられます。行政でなくても、自分たちでできない支援は他にできる人を探す。そうやって、「支援者の限界を支援の限界にしない」ことが必要だと感じています。

これまでピースウィンズ、ARROWSの活動では、巨大地震などの大規模災害での緊急支援が目立っていたと思います。しかし、今回のような災害の現場でも私たちにできることがある、ということが今回実感できました。風水害の発生が増えているこの日本で、必要な支援を必要な場所に届けられるよう、「つながりの力」をこれからも育てていきます。

復旧から生活再建へ、支援のフェーズ移行と今後の連携

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ARROWSは発災直後から約2週間にわたり、現地でのニーズ調査、戸別訪問、そしてボランティアセンターの運営サポートといった緊急性の高い活動に尽力しました。
現在は現地での直接支援から、自治体や社会福祉協議会といった現地の体制と密に連絡を取り合う支援のかたちへと移行しています。

被災地では、被害のあった建物の修復や仮設住宅への入居が開始されます。私たちは引き続き、被災地が抱える「新たな課題」や「支援の隙間」に関するご相談に、これまでの知見と全国のネットワークを活かし、適切な情報提供や専門的なアドバイスで支援させていただきます。

皆さまからの温かいご支援で、現地の支援に駆けつけることができ、今後の支援を柔軟に展開することのできる体制を整えることができました。

引き続き、静岡県の復興を見守り、必要とされる場面に対応してまいります。

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