JOURNAL #5032025.12.18更新日:2025.12.18

「北海道・三陸沖後発地震注意情報」とは?|令和6年青森県東方沖地震から考える防災

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

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2025年12月8日、青森県東方沖で最大震度6強の地震が発生し、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が初めて発表されました。この情報は巨大地震の発生を断定するものではなく、リスクが高まった可能性を伝え、備えを促す防災情報です。北海道から東北太平洋側に住む人をはじめ、出張や帰省で訪れる人にとっても知っておくべき内容といえます。

この記事では、注意情報の内容や仕組み、「南海トラフ臨時情報」との違い、そして発表時に取るべき行動を分かりやすく解説します。

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青森県東方沖地震の概要と今回の注意情報発表の背景

2025年12月8日23時15分頃、青森県東方沖を震源とする強い地震が発生し、最大震度6強を観測しました。地震の規模はマグニチュード(M)7.5(速報値)で、その後の詳しい分析により、※モーメントマグニチュード(Mw)7.4と評価されています。

震源の位置や規模を踏まえ、気象庁は国の防災計画で定める後発地震への注意基準に該当すると判断。これを受け、翌日午前2時に「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表されました。

この情報は、北海道の根室沖から三陸沖にかけての地域で、平常時より大規模な地震が起きやすい状態に入った可能性があることを知らせるものです。

※モーメントマグニチュード(Mw):地震がどれだけ大きなエネルギーを出したかを、より正確に表す指標

「北海道・三陸沖後発地震注意情報」とは

「北海道・三陸沖後発地震注意情報」は過去の地震と同じ、または隣接する領域で、Mw8クラス以上の巨大地震(後発地震)が続く可能性が高まったことを知らせる情報です。

避難を求める警報ではなく、地震発生後おおむね1週間を目安に備えを強化する注意喚起として、2022年12月から運用されています。防災対応が想定されるエリアは、内閣府の資料で確認できます。

なぜ先発地震のあとに「注意情報」が出るのか

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出典:内閣府|北海道・三陸沖後発地震注意情報の解説ページ|2.北海道・三陸沖後発地震注意情報とは?

北海道の根室沖から三陸沖にかけて広がる日本海溝・千島海溝沿いでは、過去にMw7級の地震のあと、同じ領域や隣接領域でMw8以上の巨大地震が続いて発生した事例が確認されています。

例えば、2011年の東日本大震災では、本震(Mw9.0)の約2日前にMw7.3の地震が発生していました。1963年には択捉島南東沖でMw7.0の地震が起きた約18時間後に、Mw8.5の巨大地震が起きています(*1)。

一方で、世界の地震統計では、Mw7以上の地震1477例のうち、7日以内にMw8級以上の地震が続いたのは17例(約1%)にとどまります。ただし、これは平常時にMw8級の地震が起きる確率(約0.1%)と比べると、相対的には約10倍に上昇している状態です(*1)。

このように「発生頻度は低いが、平常時より明確にリスクが高まる」状況を共有し、早めの備えにつなげる目的で、この注意情報は制度化されました。

*1)気象庁|北海道・三陸沖後発地震注意情報について

どんな条件で注意情報が出されるのか

日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震想定震源域、またはその影響が及ぶ周辺海域でMw7.0以上の地震が発生した場合に、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表されます。震源が想定震源域の外側であっても、地震の規模や影響を評価し、想定震源域に影響を及ぼすと判断されれば対象となります。

注意情報の発表期間中は前述の地震統計を踏まえると、Mw8クラス以上の大規模地震が起きる可能性が平常時の約0.1%から約1%に高まるとされています。情報は、地震発生後おおむね15分〜2時間で規模を評価し、基準を満たした場合に発表されます(*2)。

後発地震はどれくらい危険なのか

後発地震の発生確率自体は高くありませんが、Mw8〜9級の巨大地震が起きた場合、被害は極めて深刻になります。日本海溝沿いの巨大地震では、最大津波高が約30mに達し、死者数は最大で約19万9千人に及ぶと想定されています(*3)。特に、津波による溺死や、避難の遅れによる低体温症のリスクが高い点が特徴です。

一方で、揺れを感じたらすぐに避難する行動の徹底や、津波避難ビルの活用、防寒用品の準備などにより、死者を約8割減らせるとされています(*3)。

*2)時事通信|「すぐに避難できる態勢維持を」 北海道・三陸沖後発地震注意報を発表―気象庁と内閣府が会見
*3)内閣府|北海道・三陸沖 地震・津波に備えを!

巨大地震の発生確率が低くても、なぜ重要なのか

後発地震注意情報は、巨大地震を予知したり、避難を指示したりするものではありません。今回の発令でも同じように、結果的に注意期間中に大規模地震は起きずに終わることもあります。

それでも、ひとたび発生すれば被害は甚大であり、しかも巨大地震は注意情報が出ていない状況でも突発的に起こり得ます。だからこそこの情報は、過度に恐れるものではなく、「警戒意識を一段と高め、日頃の備えや行動を見直すためのきっかけ」として、冷静に受け止めることが重要です。

「南海トラフ地震臨時情報」との違い

南海トラフを示す図版

青森県東方沖の地震で津波警報が出されるなか、2022年の運用開始後に初めて発表されたのが「北海道・三陸沖後発地震注意情報」です。仕組みや役割が似ていることから「南海トラフ地震臨時情報」と混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。まずは、ポイントを絞って整理してみましょう。

◆後発地震注意情報と南海トラフ臨時情報の比較

項目北海道・三陸沖 後発地震注意情報南海トラフ地震臨時情報
情報の段階1段階のみ2段階(注意/警戒)
避難の要否避難を求めない(備え強化)「警戒」は事前避難を求める場合あり
発表の背景M7級→M8~9級の連動の歴史がある東西で巨大地震が連続した歴史を持つ
目的巨大地震が平常時より起きやすい状態を周知段階的にリスクを住民と共有

後発地震注意情報と南海トラフ地震臨時情報はいずれも、巨大地震が必ず起きると断定するものではありません。過去の事例や統計からリスクが平常時より高まった可能性を共有し、被害軽減を図るための情報です。

違いとして、南海トラフ臨時情報は段階的にリスクを示し、状況によっては事前避難を求める「警戒」が設けられています。一方、後発地震注意情報は1段階のみで避難開始は求めず、備えの再点検を促します。

地域ごとの制度を正しく理解し、不安に流されず冷静に行動することが重要です。

【関連記事】「南海トラフ地震臨時情報」を正しく理解して適切な避難行動につなげる – 空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”

注意情報が発表されたら、住民はどう行動すべきか

前述のように「北海道・三陸沖後発地震注意情報」は、避難開始を求める情報ではありません。ただし、巨大地震や巨大津波が平常時より起きやすい状態に入った可能性があるため、揺れや津波が発生した瞬間に、迷わず行動できる準備を整えておくことが重要です。

ここでは、住民が取るべき行動を5つのステップで整理します。

①まずは身を守れる準備を整える

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巨大地震は、注意情報の有無にかかわらず予告なく発生します。最も重要なのは、揺れが来た瞬間に命を守れる環境を日常から整えておくことです。

強い揺れを感じたら、机の下などで頭を守り、落下物から離れる行動が最優先です。しかし、家具が固定されていない、物が高所に置かれているなど、室内が危険な状態では、正しい行動を取っても被害を受けかねません。

実際、震度5弱でも食器や本が飛び出し、巨大地震では家具の転倒・落下による致命的被害が想定されます。特に就寝中や揺れが増幅しやすい高層階では、家具固定などの対策が不可欠です。

今一度、以下の点を見直しましょう。

  • 家具・本棚・テレビの固定
  • 落下物の確認 就寝場所の見直し(倒れる家具の横で寝ない) 
  • 家の中で身を隠せる場所を家族で共有 
  • シューズ・懐中電灯を枕元に準備

「まず身の安全を確保し、その後に避難する」と意識することが大切です。この順番を家族で共有し、室内の安全対策を確実に進めておきましょう。

②津波避難の準備を整える

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日本海溝・千島海溝沿いで巨大地震が起きると、条件次第では津波が短時間で沿岸に到達するおそれがあります。特に冬の夜間は暗さや寒さで避難が遅れやすいため、懐中電灯や防寒具をすぐ使える状態にしておきましょう。迅速な避難と命を守る行動につながります。

◆事前に確認しておくこと

  • 最寄りの高台・津波避難ビル
  • 夜間・悪天候時の避難ルート
  • 高齢者・子ども・ペットのサポート役
  • 車避難を想定する場合の渋滞回避ルート
  • 避難バッグは玄関・寝室・車内など、すぐ取れる位置へ

揺れを感じたり、津波警報等が発表されたら、ためらわず即避難が原則です。

誰がどのルートで、誰を支援するのかを家族で話し合い、夜間を想定した準備をしておくことが迅速な避難につながります。

③「今いる場所」で変わる危険を知る

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地震時の危険は、そのときいる場所によって大きく異なります。同じ揺れでも環境により取るべき行動は変わるため、その場のリスクを瞬時に判断する意識が必要です。場所ごとの注意点を事前に把握しておきましょう。

◆海岸部

  • 揺れの強さに関係なく、津波を疑い即避難
  • 揺れを感じなくても津波が来る場合あり

◆市街地

  • 損傷した建物、ブロック塀、ガラスから距離を取る
  • 落下物の少ない場所へ移動

◆山沿い・斜面付近

  • 土砂災害の危険が高まる
  • 崖側の部屋での就寝は避ける

「今いる場所の危険を判断する」ことが命を守る上で欠かせません。自宅だけでなく、通勤・通学先や外出時も想定し、揺れを感じた瞬間の行動を日頃から意識しておきましょう。

【関連記事】津波に備える|津波から命を守るために知っておくべき備えと避難行動~3.11の記憶と教訓~

④正しい情報源をチェックする

災害時はデマや誤情報が広がりやすい状況になります。混乱を避けるためにも情報の出どころを必ず確認し、真偽不明の情報を拡散しないことが重要です。

例えば、以下に紹介する情報源を活用するようにしましょう。

SNSは状況把握の参考にはなりますが、一次情報で裏付けを取ったうえで行動することが大切です。また、地域ごとの対応は異なるため、お住まいの自治体の防災情報メール「都道府県や市区町村(自治体のメールサービス等について)」等を確認してください。

⑤家庭・職場の備えを今すぐ見直す

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後発地震注意情報は、避難や行動を一律に強制するものではありません。一方で、日頃の備えを再確認し、必要な対策を整えるための重要なタイミングでもあります。

◆再点検チェック

  • 家具の固定
  • 水・食料の備蓄(最低3日、可能なら1週間)
  • 車のガソリン残量
  • 複数の避難場所の確認
  • 家族・職場の連絡方法(災害伝言ダイヤルの活用など)

なお、経済的・社会的混乱を防ぐため、必要以上の買いだめや買い急ぎは控えることも大切です。津波警報や地震情報など、今後発表される公式情報に注意しながら、地域や状況に応じた適切な防災対応を続けていきましょう。

【関連記事】地震に備える| 震災からあなたと家族を守るために今すぐできる対策、地震発生時の行動を解説

今こそ防災&備えをアップデートしよう

「北海道・三陸沖後発地震注意情報」は、過度な不安を生じさせるためのものではなく、巨大地震に備える行動を後押しするための情報です。後発地震の発生確率は高くありませんが、12月8日の地震に続き、12日にも青森県東方沖を震源とする地震が発生するなど、実際に地震活動は続いています。

注意情報が解除されたとしても、リスクが消えるわけではありません。家具固定や避難経路の確認、津波時の即避難といった基本行動を、今このタイミングで改めて見直し、すぐ動ける備えを整えておきましょう。日常の小さな行動の積み重ねが、いざという時に命を守ります。

【参照】
気象庁|「北海道・三陸沖後発地震注意情報」について
気象庁|北海道・三陸沖後発地震注意情報について
内閣府|北海道・三陸沖後発地震注意情報の解説ページ

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