JOURNAL #3592024.08.22更新日:2024.08.28
広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
2024年8月8日に日向灘を震源とする地震が発生し、その後「南海トラフ地震臨時情報」や「巨大地震注意報」がニュースやメディアで頻繁に報じられるようになりました。これらの情報は、自然災害時に発表される通常の避難情報とは異なり、戸惑った方も多いかと思います。なかには、「南海トラフ地震が近々発生するのではないか」と不安に感じた方もいるでしょう。
この記事では「南海トラフ地震臨時情報」とは何かを正しく理解し、適切な行動を取るためのポイントを解説します。臨時情報が発表された際に冷静で正確な対応ができるよう、ぜひ参考にしてください。
南海トラフ地震は、駿河湾から日向灘沖にかけての海域でプレートのずれによって発生する地震です。過去には、100~150年周期で大規模な地震が発生しており、現在も次の地震発生が懸念されています。
「南海トラフ地震臨時情報」は緊急性が高く、迅速な対応が求められる情報であり、正しく理解し、適切に対応することが重要です。
ここでは、南海トラフ地震臨時情報が発表されるタイミングや関連するキーワードなど、理解しておきたい重要な事柄について解説します。
南海トラフ地震臨時情報は、南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合や、南海トラフ地震と関連性が疑われる状況が生じた際に発表されます。過去には、南海トラフ沿いで巨大地震が時間差で発生した事例がいくつかありました。
たとえば、1854年には安政東海地震と安政南海地震が約32時間の間隔で発生し、1944年と1946年には昭和東南海地震と昭和南海地震が約2年の間隔で発生しました。海外でも、巨大地震が発生した後に隣接する領域で同様の規模の地震が時間差で発生した事例が確認されています。
このように、時間差で連続的に巨大地震が発生する可能性があるため、臨時情報は早期に発表され、警戒を呼びかけることがあります。
南海トラフ地震臨時情報には「調査中」「巨大地震警戒」「巨大地震注意」「調査終了」といった4つのキーワードが付記され、それぞれに異なる対応が求められます。各キーワードの意味は以下のとおりです。
調査中 | 異常な地震活動や前兆現象が観測された際に発表され、関連性の調査が進行中であることを示す |
巨大地震警戒 | 巨大地震が差し迫った可能性があると判断された場合に発表され、早急な対応が求められる |
巨大地震注意 | 巨大地震の可能性が高まったと判断された場合に発表され、国民に準備をうながす |
調査終了 | 調査結果として、巨大地震の発生の可能性が低いと判断された場合に発表される |
直近の日向灘地震によって、テレビの画面上や自治体の放送などを通じて継続的に発令されていたのが「巨大地震注意報」です。注意報を含む4つのキーワードにもとづく適切な行動については、のちほど詳しく解説します。
南海トラフ地震臨時情報は、異常な地震活動や前兆現象が観測された際に発表されます。ただし、情報が発表されたからといって、必ずしも大地震が発生するわけではありません。たとえば、マグニチュード7程度の地震が起きた場合でも、数百回に1回の確率で、1週間以内に隣接地域でマグニチュード8クラスの大地震が発生する可能性がありますが、それが確実に起こるわけではないのです。
そのため、南海トラフ地震臨時情報が発表された際には、冷静さを保ちながら防災対策を行うことが重要です。過度な不安から急いで行動を起こすのではなく、日常生活を維持しつつ、計画的に備えを進める姿勢が求められます。
南海トラフ地震臨時情報が発表された際には、各キーワードの意味を理解し、状況に応じた適切な行動をとることが重要です。以下では、それぞれのキーワードに基づいて、どのような意識と行動が求められるかを解説します。
「調査中」の情報が発表されたときは、南海トラフ沿いで異常な地震活動や前兆現象が観測され、関連性の評価が行われている状態です。この段階では、南海トラフ地震との関連性はまだ不明です。まずは冷静に状況を見守り、防災準備を進めることが大切です。
具体的には避難経路や家族との連絡手段を確認しましょう。地震発生から最短2時間後に調査結果が発表されるため、最新情報に注意を払い、次の指示に備える姿勢が重要です。
「巨大地震警戒」の情報が発表された場合、南海トラフのプレート境界でマグニチュード8.0以上の地震が発生する可能性が高いとされています。
特に高齢者や身体が不自由な人、要介護者など、避難に時間がかかる方々は地震発生後の避難が難しいため、1週間程度の事前避難が推奨されます。そうした状況では、命を最優先に考え、必要最低限の準備を整えて早めに避難することが肝要です。
その他の方々についても日頃の備えや避難所の場所、避難経路を再確認し、地震発生後に迅速に避難できるよう、可能な限りの準備を整えておきます。
「巨大地震注意」の情報は、南海トラフ監視領域内でマグニチュード7.0以上(8.0未満)の地震が発生した場合や、通常と異なるすべりが短時間に観測された際に発表されます。
この段階では事前の避難が特に推奨されるわけではありませんが、地震に対する備えを再確認しましょう。避難所の位置や避難経路を確認し、緊急時に備えた準備を進めておくことが求められます。
また、家族の居場所を把握する、玄関にヘルメットや持ち出し袋を置く、枕元に靴を用意するなどの準備も重要です。これらの対策を整えて、万が一の際に迅速に対応できるようにしましょう。
「調査終了」は、南海トラフ地震に関連する異常な現象が確認されなかった場合に発表されます。この段階では、地震発生の可能性が低くなったわけではありませんが、通常の生活を行うことが可能です。ただし、引き続き防災意識を持ち、日常生活においても地震への備えを怠らないようにしましょう。
以上の点を考慮して、南海トラフ地震臨時情報が発表された際には状況に応じた冷静な対応を心がけてください。過度な不安や焦りから行動するのではなく、適切な判断と行動をとることは被害を最小限に抑えるうえで非常に重要です。
巨大地震警報や注意報が発令された際には、短時間での準備が困難になる場合があります。そのため、日頃から突然の地震発生に備えておくことが大切です。ここでは、家庭、地域、企業で取るべき具体的な対策を紹介します。
家庭での対策 | ・家具の固定 ・避難所の確認と避難経路の準備 ・非常食・水の備蓄 ・家族での連絡方法の確認 ・防災訓練への参加 |
地域での取り組み | ・自治体や地域の防災リーダーとの連携 ・高齢者や体の不自由な方への配慮 |
企業での取り組み | ・BCP(事業継続計画)の策定 ・定期的な訓練活動 |
家庭での備えとして、以下の点を常にチェックしておきましょう。
地震による家具の転倒や落下を防ぐため、大型家具や家電を壁にしっかりと固定しましょう。特に寝室やリビングでは、家具の配置に注意し、安全性を確認します。テレビや本棚など、倒れると大けがにつながる可能性のあるものには、専用の転倒防止具を使って固定しましょう。
家族全員が避難所の場所と避難経路を把握しておくことが重要です。地震発生時にスムーズに避難できるよう、最寄りの避難所の場所や、そこに到達するための最短かつ安全な経路を家族で確認しておきましょう。
南海トラフ地震に備えて、1週間分の備蓄(非常食や水など)が必要であるといわれます。賞味期限の確認と新しいものへの交換を定期的に行い、備蓄の状態を最新に保ちます。
持ち出し用グッズ、避難所から帰宅後に必要な備蓄などは、別々に管理し、家族全員がその場所を知っておくことが重要です。
地震発生時に家族がどこにいるか確認できるよう、連絡手段を事前に決めておきます。また、仕事や学校など自宅以外で被災した場合の安否確認方法や避難場所についても話し合っておきましょう。
地域で行われる防災訓練に積極的に参加し、実際の避難経路や避難方法も確認しておきましょう。防災訓練を通じて意識を強化し、迅速で効果的な行動がとれるようにすることが重要です。
「南海トラフ地震臨時情報」が発令された際に慌てて準備を始めるのではなく、平常時からの備えが重要です。日向沖での地震発生後「南海トラフ地震臨時情報」が発表された際には、水やトイレットペーパー、米などの買い占めや混乱が一部地域で発生しました。このような状況を防ぐためにも、各家庭で事前に備えを整えておくことが求められます。
以下の記事では、日頃の備えに必要なものや留意点について解説しています。あると便利なものや状況に応じた準備の仕方も紹介していますので、家庭における防災対策の参考にしてください。
【関連記事】防災グッズを見直そう|負担感のない安心安全な備え方とは?
地域全体での防災対策を強化するためには、次のポイントに注意して取り組みましょう。
効果的な地域防災を実施するためには、自治体や地域の防災担当者との連携が欠かせません。地域や町内会で最新の防災情報を共有することで、適切な対応が可能になります。
住民に対して地域で行われる防災訓練への参加をうながす取り組みも欠かせません。地域住民の防災意識を高め、協力する姿勢を育むことは地域防災の重要な役割といえます。
支援が必要な高齢者や体の不自由な方々に対しては、地域全体での配慮が重要です。具体的には、支援体制を整え、避難時に必要な防災用具を準備したり、個別の避難支援計画を策定したりすることが求められます。
また、当事者が家族や地域の防災担当者と相談できる機会を設けることも大切です。これにより、住民自身が自分の命を守る意識を高め、具体的な行動をとることができます。
企業が効果的にリスクに対応するためには、以下の取り組みが不可欠です。
BCPは、災害や事故の発生時にも事業を継続し、迅速に復旧と再開を果たすための計画です。BPCでは、取引先や提携先を含めた広範な対応が求められます。計画には避難方法や重要業務の優先順位付け、連絡体制の整備などが含まれます。
定期的に訓練を実施し、従業員の避難能力や対応力を確認しましょう。訓練によって従業員が実際の災害時に冷静に行動し、適切な対応ができるようになります。時には事前連絡なしの訓練を実施したり、地域の防災訓練と連携したりすることで、いざという時の対応力を高め、被害の最小化や事業の持続を実現します。
なお、BCP対策については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
【関連記事】BCP対策とは?災害時に事業を守るために抑えるべきポイントを解説
空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”は、大規模災害時において迅速かつ専門的な支援を提供する団体です。一秒でも早く、一人でも多くの命を救うために、南海トラフ地震の発生に備えて日々準備と訓練を行い、支援体制の強化を行っています。以下に空飛ぶ捜索医療団の活動についてまとめました。
空飛ぶ捜索医療団は、大規模災害が発生した際に陸路だけでなく、空路(ヘリコプター)や海路(船舶)なども駆使し、医師やレスキュー隊員が被災地に駆けつけて負傷者の救助や救命活動を行います。現場では自治体や病院、NPO、企業、自衛隊、消防などと連携して活動します。
避難者の支援も重要な活動です。被災された方々が安心して避難生活を送れるように、避難所の設置や運営、必要物資の配布などを実施します。また、中長期的な復興支援として被災地の再建に向けた継続的な支援を提供します。
空飛ぶ捜索医療団では、実際に具体的かつ円滑な救助・支援活動ができるように、日頃から訓練を実施しています。訓練の様子についてはこちらの記事が参考になります。
【関連記事】【空飛ぶ捜索医療団_訓練】誰が見ていなくても尊い命のために
空飛ぶ捜索医療団の活動は、多くの方々の支援や寄付によって支えられています。こうしたサポートは、災害時の迅速な対応につながり、被災者の命を守る助けになります。
また、寄付や支援に参加するのは、空飛ぶ捜索医療団の活動を支えるだけではありません。支援者の方々も「社会貢献に関わっている」「自分の力が役に立っている」といった有用感や防災意識を強化できるなどの効果を得られます。
こちらの記事では、災害救援団体の紹介や寄付の方法、メリットなどについて解説していますので、この機会にぜひご確認ください。
【関連記事】災害支援団体とは?支援先の選び方や寄付の方法について解説!
この記事では、南海トラフ地震臨時情報の概要と日常的な備えの重要性について解説しました。4つのキーワード情報が発表された際には、冷静で適切な対応が求められます。日ごろから防災意識をもち、定期的に家族で避難計画を確認することが大切です。正しい理解と事前の備えを徹底し、いざという時の被害を最小限に抑えましょう。
また、地域やコミュニティとの連携も大切です。防災に関する情報を共有し合い、互いに支え合うことを心がけ、より強い防災体制を築いていきましょう。
【参照】
内閣府 防災情報のページ|南海トラフ地震臨時情報が発表されたら!
国土交通省 気象庁|南海トラフ地震に関連する情報の種類と発表条件
国土交通省 気象庁|南海トラフ地震とは
NHK首都圏ナビ|「南海トラフ地震臨時情報」とは 「巨大地震注意」でどう対応? Q&Aで詳しく
国土交通省 気象庁|南海トラフ地震に関連する情報の種類と発表条件
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