
JOURNAL #5172026.02.09更新日:2026.02.09
空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”は、国内外の多様な自治体や関係機関と連携し、いつどこで起こるかわからない大規模災害に備えています。こうした平時からの連携のひとつとして、行政や自治体が主催する災害訓練にも積極的に参加しています。
2026年1月25日、長崎市にて実施された「令和7年度長崎市孤立集落状況把握・支援訓練」に、空飛ぶ捜索医療団からプロジェクトリーダーで医師の稲葉、看護師の坂本、佐々木、そしてロジスティシャンの田邊、ロスターの水澤の計5名が参加しました。官民の枠を超え、総勢200人以上の市民や機関が結集した実働訓練の様子を報告します。
訓練の舞台となったのは長崎市茂木地区。「長崎市で震度6強の地震が発生し、周囲の複数地点で土砂災害が起きたことで道路が完全に寸断。ライフラインも停止し、茂木地区全体が孤立状態に陥った」というシナリオで訓練が実施されました。
橘湾に面した「茂木港」を中心に展開する茂木地区は、背後に急峻な山地が迫る「扇状地」や「埋立地」で構成されています。この地形的特性により、地震の際には土砂崩れが起きやすく、長崎市中心部へと続く県道32号などの主要道路が寸断され、物理的に「陸の孤島」となるリスクを常に内包しています。
こうした孤立の懸念がある地域は、茂木地区に限らず日本全国に存在します。令和6年能登半島地震発生時、当時の珠洲市は地震による土砂崩れや地割れなどで道路が寸断し、金沢から10時間もの大渋滞を経ないと辿り着けない場所になっていました。能登半島の最端にある珠洲市内に医療支援チームが本格的に集まったのが地震発生から5日目以降でした。

道路も情報も絶たれた中で、「一秒でも早く、一人でも多く」の命を救い出すために、現場の特性に合わせたリアリティのある実働訓練は非常に重要な意味をなしています。
実働訓練の大きなテーマは、大規模災害によって地域が孤立した際、いかに迅速に状況を把握し、命を繋ぐための支援を届けるかという点にあります。被災地での支援には、行政と民間支援団体など、あらゆる機関の枠組みを超えた連携が欠かせません。今回の訓練は、そうした多機関による活動を検証し、緊密な協力体制を築くことで、地域全体の災害対応力を底上げすることを目的としています。
刻一刻と変化する現場のニーズを網羅できるよう、訓練は発災からの時間経過に合わせた以下の3つのフェーズで構成されました。
発災から約6時間半後を想定したフェーズ1では、空飛ぶ捜索医療団は外部から最初に入る支援チームとして空路で現地入りした設定で活動を開始。指定避難所に多くの住民が殺到している中、私たちはすでに避難所で活動していた長崎市の消防団と緊密に連携し、負傷者に対し、トリアージと安定化処置を実施しました。重傷者については、関係各所と緊密に連携し、空路で重病者を搬送するための調整に全力を注ぎました。



発災翌日を想定したフェーズ2では、主に避難所運営体制を構築するフェーズに。調整本部を設営し、後続で到着したDMAT(災害派遣医療チーム)へ詳細な避難所情報や医療ニーズの引き継ぎを行いました。ここでは消防、自治会、長崎海上保安部といった多様な機関と膝を突き合わせ、混乱が続く避難所運営の役割分担を明確にすることで、情報の集約と組織的な支援の土台を築きました。

発災4日目を想定したフェーズ3では、空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”とDMATによる医療活動は地元の医師会、歯科医師会、薬剤師会へと引き継がれ、口腔ケアや臨時処方など、避難者の健康維持に直結する専門的な診療が行われました 。
また、電気・水道・通信といったインフラの復旧支援に加え、車両や船舶の進入が困難な孤立集落へドローンで医薬品を輸送する検証も行われ、最新技術を用いた支援の可能性が示されました。


訓練を終え、参加した佐々木看護師は次のように振り返りました。
「地域の情報を熟知している消防や自治会の方々と、私たちのような外部支援チームがいかに素早く連携できるか。その重要性を訓練を通して改めて痛感しました。また、今回は医師・看護師ではないロジスティシャンのロスター(登録派遣隊員)も参加し、チームとしての対応の幅が広がっていることも実感しています。」
「いつか」ではなく「明日」起こるかもしれない災害から、一人でも多くの命を守りたい。その一心で、私たちは現場の最前線に立ち続けます。自治体や行政との連携をさらに強固なものにし、「一秒でも早く、一人でも多く。」の命を救うために、迅速かつ的確に動ける強靭なチームであり続けます。
このような実践的な訓練を継続し、有事の際に迷わず動ける体制を維持できているのは、皆様からの温かいご支援があるからです。ぜひ、ARROWSサポーター(月に一度の継続寄付)で私たちの活動に参加してください。
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