JOURNAL #2362023.07.12更新日:2024.02.14
ライター:村田 幸音
ペット防災を考える際、避難するシーンを想定して情報を集め準備している飼育者が多いでしょう。しかし実際には、仕事中など飼育者の不在時にペットが被災する可能性もあります。
2011年の東日本大震災の時には、鉄道などの交通機関が止まり車での移動もできず、多くの「帰宅困難者」が生まれました。もし留守中にペットが被災した場合、飼育者の帰宅が数日後になってしまう可能性もあります。ペットは飼育者が帰宅するまでの時間を被災した自宅で待つことになります。
自宅は、災害が起きた時にペットがいる可能性が最も高い場所です。あなたの自宅は安全ですか?留守中のペットを守れるでしょうか?
今回はペットを守るための室内環境について解説します。
災害時にペットを守れるのは飼育者だけです。そのためにも平常時から意識して準備しておきましょう。
それぞれ解説します。
飼育者である自分が身を守れなければ、ペットを守ることはできません。まずは自分の身の安全を確保してください。ペットを守るための室内環境を整えることは飼育者自身を守ることにもなります。しっかり対策して備えておきましょう。
災害時になにが必要なのかを把握し、最低でも5日分、可能であれば2週間分は用意しておきましょう。ペットフードだけでなく、シーツやお水などの生活用品も大切です。
万が一に備えて、ペットを連れて避難できる場所や、ペットを預けられる場所を事前に把握・確保しておきましょう。避難生活が長期化する可能性がある場合は、親戚などに預かってもらえるよう事前に相談しておくことも大切です。
避難生活中で免疫力が低下したり普段とは違う場所にいくことで、体調不良になってしまう可能性があります。当然のことではありますが、日頃から正しい飼育環境で、定められたワクチンの接種、動物によっては避難所での共同生活を想定したしつけなどを行いましょう。飼育しているペットに合わせた正しい情報を知ることが大切です。
飼育者の不在時に被災した場合、家具類の転倒や窓ガラスの破損などが起きるかもしれません。ペットは被災した状態の部屋で飼育者の帰りを待つことになります。被害を最小限に抑えられるように室内環境を整えておきましょう。
ガラスの破片が散乱した部屋では、ペットの足元の怪我などにつながります。窓や戸棚のガラス扉などに貼るガラス飛散防止フィルムが有効です。もしも地震や台風などでガラスが割れてしまっても、室内への飛び散りを防ぐ効果があります。カーテンやブラインドを下げておくとより効果的です。
ケージやサークル、水槽などペットが過ごすスペースは安全な場所に設置してください。転倒の可能性がある家具や落下物のない場所、窓の破損の影響を受けない選ぶようにしましょう。
地震時の負傷者の3割〜5割は、家具類の転倒や落下によるものです。家具はL字金具などでネジ留めして固定するようにしましょう。壁の素材や賃貸などでネジ止めができない場合には、転倒防止用の突っ張り棒を利用してください。
ペットのケージやサークル、水槽などの近くはスペースを開けるか、できるだけ高さが低い家具を置くようにしましょう。落下防止のために高所に重いものを置かないことも大切です。キャットタワーなどの遊具もしっかり固定し、つっぱり棒式のものは緩みがないかを定期的にチェックしてください。
キャニスター付きの家具は地震の時に滑ってペットにぶつかったり、家具に当たって壊れた破片で怪我をしたりする可能性があります。外出時にはロックする習慣をつけておきましょう。
地震の時には、家具自体が倒れなくても扉や引き出しや開いてしまって収納してあるものが飛び出してしまうこともあります。食器棚から皿やコップなどの割れ物が飛び出して割れてしまうと、ペットがその上を歩き怪我する可能性が高くなります。地震の揺れにより扉が開くのを防ぐ耐震ラッチを取り付けたり、ストッパーを取り付けて扉や引き出しをロックしたりしておくと安心です。
飲み水を入れた容器がひっくり返り、水がすべて溢れてしまうことがあります。飲み水は必ず複数箇所に用意しておいてあげてください。電力不要のタンク式ペット給水機を用意しておくのもおすすめです。
避難の時に使うクレートを普段はしまい込んでいませんか?クレートは常に自宅の安心できる場所に設置し、いつでもペットは入れるようにしておくのがおすすめです。
「災害発生時、あなたは愛犬と一緒に避難できますか?」の記事でもご紹介しましたが、クレートに普段から慣れておくことで避難時のペットの負担が軽減できます。「クレートの中=安全」と覚えてもらうことで、飼い主の留守中にもクレートに入って落ち着いて過ごせる時間が増えるでしょう。
ブロック塀や窓ガラスの近くにペットの居住スペースを作らないようにしましょう。居住スペースとは、小屋の位置だけでなく、リードが届いてペットが動ける範囲と考えてください。災害時には、リードが切れる、もしくは自分で噛み切って脱走する例も多くあります。リードは簡単に噛みちぎれないようなものを選び、係留する場所をしっかり固定しましょう。
地震の強い揺れで窓が開いてしまいペットが逃げ出してしまうことがあります。外出時には窓の鍵をかけるのを忘れないようにしてください。暑さ対策など窓を開けて外出する場合には、面格子などを取り付けて外に出られないようにしましょう。
マンションなど高層階でも油断は禁物です。掃き出し窓からベランダに出てしまったペットが、マンションのべランダを横断して他の住宅で保護された事例もあります。最悪の場合は落下する危険もあるため気をつけましょう。
うさぎのケージは、地震の揺れで落下しないように床に設置するのがベストです。スペースの問題で無理な場合には、ゲージを置いた棚と固定して落下を防ぐ着ましょう。ケージ内の食器やトイレなども固定式を使用すると安心です。
数日戻れなかった時のために、給水ボトルは大きめのものを用意しておきましょう。残った水は毎日入れ替えるのを忘れないようにしてください。
地震対策という観点からみると、軽量で割れた時にも破片が飛散しないため、ガラスよりもアクリル製の水槽の方がおすすめです。
水槽は地震時の落下防止のために水槽台と固定しましょう。さらに水槽台を壁に固定すれば落下の危険がかなり軽減します。
電源は地震の揺れで水槽から水が溢れた時にかからない位置に設置してください。コンセントや延長コードを床に置いておくと、万が一水が溢れてしまった時に漏電してショートする可能性が極めて高くなります。最悪の場合、火災が発生してしまうため、水がかからない場所へ電源コンセントを配置し、壁のコンセントには防水カバーをつけておきましょう。
災害時には電気の供給がストップすることもあります。帰宅後すぐに電源を入れられない場合に備えて、電池式のエアポンプやヒーター、モバイルバッテリーなども用意しておきましょう。爬虫類の寒い季節の温度管理にはポケットカイロも有効です。
無事に自宅へ戻った後はペットを連れての避難が必要なケースもあります。事前に自分の住んでいる自治体の「ペットの受け入れをしている避難所」を調べておくことが大切です。
また、避難所に同行できるペットは、犬・猫・その他小動物(小鳥や小型げっ歯類など)としている自治体が多く、それ以外は同行できないことがほとんどです。該当しないペットを飼育している場合は、預かってもらえる先を探しておきましょう。
ペットを連れての避難は早めの行動が大切です。災害時には内閣府(防災担当)による「避難情報に関するガイドライン」にしたがって、自治体が5段階の警戒レベルを明記して防災情報を提供することになっています。
また、ペットを連れての避難は想定外のことも多く時間がかかります。「危険な場所から全員避難」となっている【警戒レベル4】ではなく、高齢者などの「避難に時間を要する人は避難」と設定されている【警戒レベル3】で避難を開始するようにしてください。
環境庁のHPでは、ペットと暮らす飼い主のためのパンフレット「ペットも守ろう!防災対策」がダウンロードできます。事前の準備や災害時の対処方法、備蓄するべきものなどペットの防災についての正しい情報を得て万が一に備えましょう。
▶ダウンロード:「ペットも守ろう!防災対策」
ペットの防災に関する記事
・「災害発生時、あなたは愛犬と一緒に避難できますか?」
・「避難時、ペットはどうする?環境省ガイドライン推奨の「同行避難」について解説」
・「ペットと一緒の車内避難での持ち物・過ごし方・注意点を解説」
▶参照:気象庁ホームページ「気象庁防災気象情報と警戒レベルとの対応について」
WRITER
ライター:
村田 幸音
動物関連の記事を中心に活動するフリーライター。東日本大震災の後、被災犬の里親になった友人の話をきっかけに、愛犬を守りたいと愛玩動物救命士とペット災害危機管理士の資格を取得。すべてのペットと飼育者が、災害で受ける悲しみが最小限で済むようになってほしいと願っている。
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