JOURNAL #2102023.03.06更新日:2024.01.30
ロシアによるウクライナ侵攻の開始から一年が経過しました。
ピースウィンズのキーウ事務所で働く現地スタッフは言います。
「皆なんとかして元の生活に戻ろうとしている。でも突然ミサイルが飛んできたりするから、将来を考えることができない。日常に戻ろうとしているけど、何度も引き戻されてしまうんだ」
家や仕事、家族や友人、穏やかな日常──。
ウクライナの人々は、この一年でさまざまなものを失いました。
一見、普段通りの生活をしているように見えますが、「ここには傷ついていない人はひとりもいない」のです。
ロシアのウクライナ侵攻より2日後の2022年2月26日よりポーランド、3月8日よりモルドバに日本からスタッフを派遣、現在まで、現地提携団体と連携したウクライナ国内の支援とモルドバを拠点とする避難民支援を並行して展開しています。
ウクライナ国内では、病院への医薬品の支援、激戦地の東部地域からの退避支援、心理社会的支援、避難所支援、ペット連れ市民へのペットフード支援などを行ってきました。また、病院や幼稚園、学校の再開に向けた支援も行っています。
首都キシナウに事務所を開設、日本人スタッフが駐在し、キシナウ市内の避難所および周辺に滞在する避難民を対象に支援を実施しています。
・食糧・日用品、ペットフード等 物資支援
・教育支援
・医療・健康支援(2022年9月いっぱいで終了)
2022年4月から9月まで、キシナウ市営避難所に設置した仮設診療所では、日本から派遣された医師、看護師、薬剤師が診療にあたり、エコーや心電図による検査や、医師が必要と判断した場合は薬剤の無償提供を行いました。
ピースウィンズは、この仮設診療所で昨年4月から7月までに診療した1100人の避難民のカルテを分析しました。データ分析の結果、侵攻から1ヵ月後の4月に、血圧が140mmHgを超える「病的高血圧症」の方が多く見られました。
しかし、その後は5月から7月までは高血圧症の患者数に大きな差が見えず、侵攻当初のストレスが体に与えたインパクトがデータに反映された形となりました。
避難民の方の様子も、侵攻当初は、スマホで破壊された自宅の様子をみせてくれたり、診察室で泣き崩れてしまったりする方が多くおられました。しかし、だんだん、そういった訴えは落ち着き、金銭的な問題など、現在の生活の困難さを訴える方が増えていきました。
モルドバで診療をし、現在もウクライナ支援事業に携わるピースウィンズ・ 空飛ぶ捜索医療団”ARROWS” の長嶋医師は、 この一年のウクライナの人々の変化について、「避難民の方は今、悪い意味でこの環境に適応してしまっている。ウクライナでは毎日空襲警報が鳴るが、避難しない人もいる。24時間避難の可能性のある生活をしてきて、そのようなリスクを無視しなければ心のバランスを取れなくなってしまっているのではないか。不安を訴える人は減ったが、それは命の不安から目を逸らすことで心のバランスを取っているからではないかと思う」と心配を語りました。
ウクライナ侵攻はいまだ終わりが見えていません。避難した方々も、いつ故郷に帰れるのかわからない日々が続いています。
一年前、私たちの支援の呼びかけに対し、多くの日本の方々が「ウクライナに届けてほしい」とご寄付を託してくださり、物資や食料、医療や教育など、さまざまな支援を展開することができました。 皆さまのあたたかいご寄付に、あらためて感謝申し上げます。ありがとうございました。
しかし、今もまだ傷ついた人々の苦難は続いています。平和な日常を奪われた人々が元の暮らしに戻るには、何年もかかると言われています。
私たちは平和が戻るその日まで、ウクライナの人々の未来のための支援を続けたいと考えています。
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