JOURNAL #3132024.02.10更新日:2024.02.26
広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
子どものいる家庭では、大人用の避難グッズのほかに、月齢や発育状況に合わせた子ども用の避難グッズを用意しておく必要があります。しかし、子どもの避難グッズの準備を始めたものの「あれもこれも」ととても持ちきれないほどの量になり、途方に暮れた経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか?先回りして心配になる気持ちはとてもよくわかります。しかし、避難の時はまず安全に素早く動けることが一番のポイント。このポイントをもとに必要なグッズと量を考えていきましょう。
本記事では、子ども用の避難グッズを乳児と幼児以降に分けてリストアップし、避難グッズを選ぶ時のポイントを解説します。また、避難のタイミングや避難時の服装についても紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
前提として、避難グッズはその時の状況に合わせ、0次~3次までの4段階の備えが必要といわれています。それぞれどんな時を想定して用意するものなのか、確認してみましょう。
0次の備えは、端的に言うと、外出時に携帯する防災グッズです。東日本大震災以降、日本では多数の地震や水害といった自然災害が起こりました。そのため、0次の備えとして防災グッズを普段使いのカバンに携帯する人が増えてきています。2022年、警視庁警備部災害対策室がSNSに投稿した防災ボトルも大きな反響がありました。
0次の備えは、具体的には以下のような場面で役立ちます。
0次の備えでは、必要最低限の防災グッズをポーチやウォーターボトルなどに入れて携帯します。ホイッスルやライト、袋、絆創膏など、カバンの中に入れていてもかさばらないものが対象です。ちょっとしたおやつや保存食を入れておく人もいます。0次の備えを家族の人数分用意しおき、子どもが1人で外出するときに持たせるのもよいでしょう。
災害発生直後に避難所や高台など安全な場所まで避難するときに持つ避難グッズです。いわゆる、非常用持ち出し袋に入れる避難グッズを指します。避難先で安全が確保できるまでの1泊2日程度を過ごすための荷物と考えて用意します。最低限の水(1人1.5L程度)や非常食、懐中電灯、絆創膏、携帯トイレなどを入れておきます。
災害発生から数日間、食料や水などの供給がなかった場合を乗り切るために用意しておくものです。被災後自宅に戻れず避難所などで過ごす場合は、周囲の状況が落ち着いて、安全が確保されたのちに必要な分を自宅に取りに戻る必要があります。
避難生活が長期化した場合に必要な備蓄として、自宅に平常時から用意しておくものです。食料や水、トイレットペーパーなどの日常品を家族の人数分備えておきましょう。
上記を踏まえた上で、この記事では、子どもと一緒に避難するときの1次の備えを紹介していきます。
被災直後、子どもと一緒に避難するときに持ち出す子ども用の避難グッズを、子どもの年齢別に記載しました。1次の備えとして、避難先で1泊2日程度を乗り切るための持ち物を想定しています。
それぞれのグッズが必要な背景などは、次章で説明しています。
年齢を問わず必要性の高い最低限のグッズ類です。食べ物と飲み物、防寒具、貴重品のほか、閉じ込めや停電があった場合に対応するための物品もあります。
次に、新生児を含む、乳児がいる場合の避難グッズです。
まだおむつが取れていない場合はおむつが消耗品として毎日必要になるため、日頃から多めに準備しておくと安心です。
また、普段母乳育児をされている方も、飲み水の不足や慣れない避難生活の中で母乳が減ったり出なくなったりすることがあるかもしれません。念のためミルクセットを入れておくと安心です。粉ミルクはかさばらずに持ち運べる、液体ミルクは必要な時すぐ赤ちゃんに与えられるというそれぞれのメリットがあります。念のため両方のタイプを用意しておくと安心です。
おむつが取れて、ある程度自分で動いたり遊んだりできるようになった子どもと避難する際に必要なものは以下です。
お気に入りのぬいぐるみやブランケットなど、普段から子どもが気に入っているものを入れておくと、非常事態でも精神的な支えとなります。少し大きい子どもにはトランプなど遊び道具やお絵かき用の文具、本など、気を紛らわすことのできるグッズを入れておけると安心です。
子ども連れでの避難グッズを用意するときに気を付けるポイントを紹介します。
それぞれ解説していきます。
災害発生直後や、災害が差し迫っている状況での避難は身の安全を確保するため一刻を争います。リュックを背負っていても、いざという時には走れるくらいの身軽さも必要です。成人女性が一度に運べる荷物の重さは10㎏といわれます。抱っこする必要のある年齢の子どもなら、体重を差し引いて荷物を選ばないといけません。必要なものを精査して選びましょう。
荷物の中身を「食料品はお父さん、救護用品はお母さん」というように分担していると、もし災害時の混乱ではぐれてしまった場合、お父さん以外の家族は手元に食料品がないという状況に陥ってしまいます。そのため、荷物の中身は、自分が避難生活を送るために必要なもの一式を各自で持つようにします。自分である程度しっかり歩ける子どもにはリュックを背負わせて、自分の荷物は自分で運ばせましょう。
避難用のグッズは買ってきたものをそのまま入れるのではなく、1度使ったり食べたりしてみてください。特に子どもは、緊急時と言ってもおいしくないものは食べてくれないことがあります。非常用の食料として定番の乾パンも、パサパサして苦手という子も多いです。それよりかは普段から食べているクッキーなどのおやつの方が、飲み込みやすく、よく食べてくれる可能性が高いです。避難グッズは非常用かどうかにこだわらず、使いやすさ、食べやすさ、食べ慣れている味といった家族との相性や好みも考えて選びましょう。
おむつが必要ない子でも、災害後にストレスからお腹の調子を崩したり、おむつに戻ってしまったりすることがあります。他にも、避難所のトイレが汚れている場合や和式トイレしかない場合など、子どもがトイレに行きたがらなかったり行けなかったりする状況でもおむつで用を足すことができます。
また、おむつは水を含ませてから凍らせると保冷材として使うこともできます。
子どもは何かと服を汚しやすいです。また、災害での避難中に雨や津波で服が濡れてしまった場合、そのまま着替えずにいると特に寒い時期では低体温症になって命に関わる恐れもあります。下着と衣類を一式持っていきましょう。衣類はビニール袋に入れるなど、濡らさないための工夫を必ずしてください。100円ショップの旅行コーナーに販売されている使い捨て下着を避難グッズとして使うのもよいでしょう。
おむつや衣類の収納には、100円ショップにも売られている衣類圧縮袋を利用すると、かさが減らせるだけでなく防水対策にもなります。避難グッズには、普段使いのものや100円ショップで売られている便利用品、アウトドアグッズを上手に利用しましょう。
避難グッズを活用するにあたって考えるべき事項について、ご紹介します。
避難用リュックは準備したらずっと置きっぱなしにするのではなく、定期的に中身を確認することが大切です。特に子どもの衣類は、サイズアウトしていないか、季節があっているかの確認も必要です。非常食の賞味期限、電池の残量は忘れやすいので時々をチェックしてみましょう。
令和3年5月の災害対策基本法の改正で、市町村から発令される避難情報が新しくなり避難が必要な人の区分、避難するタイミングが分かりやすくなりました。
オレンジの警戒レベル3では”高齢者等、避難に時間がかかる人”は避難が必要です。高齢者等という記載しかありませんが、子ども連れの家庭も避難に時間がかかることが想定されるため、このレベルでの避難が必要と考えるべきでしょう。紫の警戒レベル4までに必ず全員が危険な場所から避難することが必要です。
避難時、肌を出していると崩れたがれきやガラスの破片でケガをすることがあるかもしれません。夏でも避難中は長そで・長ズボンを着用するようにしましょう。アウトドア用の撥水加工がされた服は丈夫で避難にも適しています。
また、手をケガしないための軍手や手袋、がれきによる粉じんや、火事による煙を吸い込まないためのマスクも準備しておくと安心です。
頭には防災用のヘルメットを被ります。防災用のヘルメットは、飛んできたものや落ちてきたものから頭を守るように設計されています。一方、自転車用のヘルメットは衝撃を受けたときに割れることで衝撃を吸収するように設計されており、目的が異なっています。防災用のヘルメットを用意しておくことをおすすめします。
くぎやガラスの踏みぬきによるケガを防ぐため、底が厚いスニーカーを履きましょう。赤ちゃんの靴は歩き出してから購入する家庭も多いと思いますが、抱っこ紐の中にいるとしても肌を出しているとケガをする危険があるため、まだ歩けない赤ちゃんでも靴を履かせてあげると安心です。
水害による避難では、長袖長ズボンの上にレインコートを着用します。この時レインコートは、可能であれば上着とズボンに分かれたタイプのものを用意しましょう。ポンチョのように羽織るタイプのレインコートでは中に風が入り込み、強風の場合にあおられる恐れがあるためです。
足元は長靴ではなくスニーカーを履きましょう。長靴では中に水が入った場合に重さで動けなくなってしまったり、サンダルでは簡単に脱げて流されてしまい、流れてきたもので足を傷つけたりする恐れがあるためです。
傘をさしていると風にあおられ、強風で物が飛んできても見えない可能性があります。豪雨の場合は傘は差さず、レインコートとヘルメットで対処してください。浸水している場所を歩くときには、水の中に何か沈んでいたり、マンホールの蓋が抜けていたりすることもあるので、傘は杖のようにして足元のチェックに使うこともできます。
近年、”本来の使い方ではないが、代用品があれば使える”という防災グッズが多数紹介されています。例えば、
・レジ袋を開いておむつカバーにして、布を乗せておむつにする
・単3電池を単1電池に変換できるグッズ
・ツナ缶に糸を差し込んでランプにする
といったものです。
非常時にあるものを活用して生き抜く知恵は大事かもしれませんが、ありあわせのもので作ったものはやはり使い勝手が悪いものです。代用品の使い方をたくさん覚えるより、備蓄を充実させておくことをおすすめします。
また、「平常時・非常時を問わず利用できること」を意味するフェーズフリーという概念もあります。フェーズフリーについて解説している記事も参考にしてください。
子どものいる家庭の避難グッズ、避難の方法について解説しました。
普段使っているものを少し多めにストックしておくだけでも立派な防災になります。難しく考えすぎず、まずは命を守る、安全に逃げることを第一に避難グッズを用意してみましょう。
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