JOURNAL #3552024.07.13更新日:2025.02.21

【空飛ぶ捜索医療団アフリカに行く#02】忘れられた “死にも至る病” と戦う武器は日本文化にヒントがある?

「私は “ビエンバナ” (Bien Bana/肝臓の病) なんだと医者に言われました。でも、それがどんな病気なのか私はわかりません」
ウイルス性肝炎の感染が発覚したある母親がインタビューの中で証言してくれた言葉です。

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西アフリカの最貧国ブルキナファソには約60の民族が暮らしています。それぞれの民族に異なる言語がありますが、ブルキナ西部の都市ボボデュラスに住む人々が話すジュラ語には “ウイルス性肝炎” を適切に表す言葉がそもそも存在しませんでした。
追い討ちをかけるのが識字率の低さ。国民の約半分ほどしか読み書きのできないこの国では、肝炎の正しい恐れ方を伝えること自体が大きな壁にぶつかっていました。

ブルキナファソにおけるウイルス性肝炎の有病率はおよそ9%。同国におけるHIVの有病率が1%未満であることを鑑みれば、肝炎対策がこの国でいかに顧みられていないかがわかります。それだけ広く蔓延している病でありながら対策が十分に進んでいないのは、国民に十分に病気を伝えられていない現実に加え、”先進国の都合” があるのではとピースウィンズの稲葉医師は語ります。

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「ウイルス性肝炎は自覚症状の少ない病気。症状が出てから病院に行っても、既に肝硬変や肝がんを併発していて、この国の医療設備では手遅れの場合も多い。日本では当たり前の “早期発見・早期治療” という考え方も根付いていない。この病気と戦うためには、”検査を受ける意識” と “治療の必要性の理解” が不可欠だけど、まだその部分に十分な予算と労力がかけられていないのが現実です」

一方そんなブルキナファソでも、研究施設を訪ねれば数百万円する高価な研究機器がズラリと並んでいます。そのほとんどはヨーロッパから寄贈されたもの。HIV/AIDS対策や先進国の興味のある研究分野には国際支援が集まる一方、既に先進国では治療法が確立している肝炎については、先進国の関心の薄さからなのか、支援規模に明らかな格差が見られます。国際的な感染症対策の枠組み「グローバルファンド」でも、資金が投じられるのは主にエイズ・結核・マラリアの通称 “三大感染症”。ウイルス性肝炎はその三大感染症に匹敵する死者を出しているにもかかわらず、その対策は不自然なほどに遅れてきました。

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日本では肝炎克服の取り組みとして “肝炎コーディネーター” という人材育成が進み、様々な冊子やマテリアルと共に、啓発活動や患者のフォローアップが行われてきました。同資格を持つ菊池看護師も現場に同行しましたが「この仕組みがそのままブルキナファソで生かせるとは思っていません」と本人は語ります。

「ブルキナファソで文化人類学を研究する先生に話を聞きましたが、どうやら肝炎に関する誤った知識が未だ信じられているというのは事実のようです。いわゆる “呪い” のような類と考えるのだとか。だから呪術や伝統医療に頼る人は今も多く、それでも治らないからと、医療機関で受診する頃には既に手遅れというのがよくあるパターン。この問題の解決に肝炎コーディネーターは適切だけど、ブルキナ特有の民族文化の違いや、識字率の低さ、日本とはまるで違う生活スタイルを前に、持ってきたマテリアルはそのままでは通用しないでしょうね」

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しかし、文化人類学のイシアカ先生らと協議を進める中で、解決の糸口となりそうなヒントがあったのは意外にも「日本文化」の中でした。それがマンガやアニメ

識字率の低さや意識関心の低さをカバーするため、マンガを活用した紙芝居のような啓発グッズや、アニメやドラマなど映像媒体を活用することで、より人々にインパクトを与えることができそうです。このアイデアにはイシアカ先生もノリノリ。実写ドラマ化してショート映画も作ってみてはとも提案します。実はブルキナファソは、アフリカ最大の国際映画祭(FESPACO)が開催される国。映像制作は現地にも足がかりがあるかもしれません。

「他の感染症と違って肝炎は直ぐには症状がでない。症状が出ていない疾患を説明するのはとても難しいんです。ブルキナの国民性や伝える方法について、今回とても熱い意見交換ができたからこれを具体的に落とし込んでいきたい」現地の思いを汲んだ支援の実現に向けてチームは知恵を出し合っています。

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