JOURNAL #3772024.11.30更新日:2025.02.14
広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”は、11月29日(金)から12月1日(日)までの3日間にわたり、広島県内にて災害医療支援船“PoC(Power of Change)”を活用した「多機関連携災害時医療救助訓練」を実施しました。
空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”が主催する「多機関連携災害時医療救助訓練」は、大規模災害時に救命救急活動に携わる諸団体と連携し、フィールドホスピタル(野外病院)の実展開や災害医療支援船の実装を通し、患者の捜索、救護、搬送までの一連の運用訓練を通して課題を明確にしていくことを目的としています。
1月1日に発災した令和6年能登半島地震における災害支援では、たしかな成果を挙げられた一方で、支援を届けられたエリアは限られたことが課題として挙げられました。今年で6回目を迎える多機関連携訓練は、「一秒でも早く、一人でも多く」の人を救うために空飛ぶ捜索医療団がハブとなり、多機関で協働してよりダイナミックな災害支援にあたる体制強化を目指したものになります。
毎年、具体的な災害を想定し訓練をおこないますが、今年はPoCの洋上訓練中に、安芸灘~伊予灘~豊後水道を震源とする最大震度6強の地震が起き、広島市、呉市、江田島に甚大な被害が発生した大規模震災を想定。空飛ぶ捜索医療団は急遽、PoCにて被災地に向かい、船を活用した医療支援をどこまで実践できるか、検証することを訓練のミッションに設定しました。
■第6回「多機関連携災害時医療救助訓練」の主な訓練内容
訓練では、“コントローラー”と呼ばれるスタッフが準備してきた、災害時に起こり得るさまざまな想定をその場で現場スタッフに伝え、実際に医療支援、対応をおこなっていくカタチで進められます。
メンバーは、空飛ぶ捜索医療団のスタッフとともに支援活動にあたるロスター(登録隊員)をはじめ、DMAT、HUMA(災害人道医療支援会)、さらに海外から台湾災害医療隊発展協会とフィリピン医師会(Philippine Medical Association)のメンバーも参加。傷病者を演じるメンバーやオブザーバーなども含めると、総勢100名を越える大規模な訓練になります。
訓練初日と2日目は、岸壁は損傷が激しく、入港できないため、洋上で停泊しながらの活動を想定。本部のある広島県神石高原町で待機していたヘリコプターと連携して被害の大きい江田島の調査・支援にあたります。
訓練では、江田島から患者8人をPoCで受け入れ、船内のメディカルルームにて治療。平行して江田島に派遣したモバイルチームが、島内の避難所の設営をサポートし、避難者の健康状態なども確認。船内に設置された指揮所では、「避難所40名、20名は外出中、コロナ陽性2名発生、下痢1名」などリアルな報告を受けながら、神石高原町の本部と連携して水や食料をはじめ必要な医療物資を準備する調整をおこなうなど、避難所支援の訓練もおこなわれました。
患者を船内に受け入れ治療をおこなう訓練では、PoCを活用した医療支援の可能性を見出せた一方で、船内の狭い通路や階段を使った患者の移動や、資機材、薬剤も限られたなかでの工夫が求められるなど、想定以上の難しさも確認されました。
訓練最終日は、広島港に着岸したシチュエーションを想定。PoC内に簡易避難所を設け、船内外での受け入れ体制の訓練なども行いました。実際の災害時に船内は簡易避難所として機能できるのか、あらゆる可能性を試すことも訓練の重要なミッションです。
こうした訓練で浮き彫りになった課題を今後どのように解決し、実際に起きた大規模災害時に生かしていくか、議論とさらなる訓練を重ねていくことになります。
今回の訓練では、船内でどこまで医療支援ができるかを訓練する一方で、船を指揮本部として外部団体との連携・調整等の確認も重要なポイントにおかれました。
孤立した江田島への支援想定では、数名の患者の緊急搬送の要請を受信。団体が違えばそれぞれの文化や考え方、アプローチの方法は異なり、さらにヘリによる患者搬送には、着陸するポイントの確保や搬送先など関係各所と密な連携が必要になります。そこで今回は、実際に広島県のDMAT活動拠点本部と連絡を取り合い、互いのヘリの要請に必要な情報がしっかりと伝達・共有できたか、ドクターヘリと空飛ぶ捜索医療団のヘリを有機的に連携させていくためのコミュニケーションの確認を行いました。
官民の連携は、大規模災害ほど重要になってきます。能登半島地震の支援では、官民が連携し迅速に患者搬送をなし得た経験を次の支援につなげるためにも、今回のような想定訓練の積み重ねは、官民の連携をさらに強化するものになります。
PoCを拠点とする初の試みとなった今回の訓練について、プロジェクトリーダーの稲葉医師は次のように振り返ります。
「3年前は船でこんな訓練はできなかった。協力者やロスターも増えて、空飛ぶ捜索医療団のパワーが上がってきたことを実感できた訓練となった」
そして訓練は、ピースウィンズ・ジャパン代表の大西健丞の次の言葉によってしめられました。
「大規模災害では、行政だけではカバーできない。民間の力、そして企業社会の力で、必要な支援を必要な人にしっかりと届ける。ここにいるみなさんのその意志の象徴として、この船がある」
一秒でも早く、一人でも多くの人の命を救うためにできること。そのひとつが、陸・海・空を使った支援体制の強化です。大規模災害に備え、空飛ぶ捜索医療団では、今後もPoCも含めた災害支援チームとしてより最大限に力を発揮できるように訓練を重ねていきます。
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空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
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