JOURNAL #3762024.11.22更新日:2024.11.22
近年、地震や台風などの自然災害が頻発し、非常食の重要性が再認識されています。しかし、内閣府の調査(令和4年9月)によると、災害に備えて食料や飲料水、日用品を備蓄している人は約4割にとどまっています。実際、2024年1月の能登半島地震では、予想以上の避難者により備蓄が初日に底をつく事態が生じました。
このような危機的状況に備えるため、日常生活で無理なく非常食を取り入れられる「ローリングストック法」が注目されています。この記事では、非常食の選び方と備蓄方法を紹介し、実生活での備えについて詳しく解説します。
非常食とは、地震や豪雨などの自然災害に備えて保存しておく食品や飲料を指します。特徴として以下の点が挙げられます。
非常食の種類には、アルファ米や保存パン、缶詰、レトルト食品、備蓄野菜などがあり、好みやライフスタイルに応じて選べます。災害に備えるためにはまず、自分や家族に最適な非常食の準備を整えることが大切です。
非常食を選ぶ際には、量や栄養バランス、保存期間など、さまざまな視点から検討する必要があります。今回は特に重要な5つのポイントを取り上げ、それぞれ詳しく解説します。
非常食の量は最低でも3日分、可能であれば1週間分を目安に準備することが推奨されています。災害後、救援物資が届くまでに時間がかかる場合が多いため、この備えが非常に重要です。
農林水産省では、3日分の必須備蓄食料品(大人1人分の必要なもの)を以下のように推奨しています。
【参照】農林水産省|最低3日分の備蓄食料品を
また、政府広報オンラインの防災・災害対策のページでは、大人2人の場合(1週間分)の非常食についてより詳しく提示しています。ただし、各分量はあくまでも目安量なので、ご自身や家族の好みに応じて適量を準備しましょう。
非常食を選ぶ際、栄養面にも配慮することで、体力の消耗やストレスを軽減できます。このなかでもビタミンやミネラルは、災害時には不足する傾向にあります。
たとえば、災害時には便秘が起こりやすいため、予防策が必要となります。野菜ジュースやドライフルーツは便秘対策に効果的です。また、ご飯に乾燥わかめや海苔を加えることで食物繊維やミネラルを手軽に補えます。
非常食を準備する際に栄養バランスを考慮するのは難しいかもしれませんが、栄養補助食品を準備するなど、無理のない工夫を心がけましょう。
非常食は、長期保存が可能なものを優先して選びましょう。長期保存可能な食品は、フリーズドライ食品やレトルト食品、ロングライフ食品などです。保存期間が5年から25年に及ぶ非常食も増えており、備蓄の管理が簡単になっています。
また、賞味期限が近づいた非常食を普段の食事に取り入れ、新しいものを追加する「ローリングストック法」(後述)を活用すると、無駄なく備蓄を続けられます。
要配慮者とは、特別な配慮や支援を必要とする人々のことを指します。具体的には、乳幼児や妊産婦、高齢者、障がいを持つ方、アレルギー体質の方々が含まれます。家族に要配慮者がいる場合、それぞれに適した非常食を備えておくことが重要です。
乳幼児向けには離乳食や粉ミルク、ベビーフード、高齢者向けには食べやすい食品や柔らかい食材、アレルギー対応としてはアレルゲン除去食品を用意しましょう。
近年、要配慮者に適した非常食を準備する自治体が増えていますが、災害時に十分な支援が得られない可能性もあります。事前に専門家や医療機関のアドバイスを受け、各家庭で適切な非常食を備えることをおすすめします。
非常食は、普段食べ慣れたものを選ぶことで、災害時のストレスを軽減できます。被災直後は特にストレスが大きいため、馴染みのある食べ物が安心感につながります。
パン類、味付きご飯、お菓子、果物缶などが適していますが、非常食は事前に試食し、食べ慣れておくことも重要です。また、冷蔵庫内の食品や冷凍保存しているご飯やおかずなども、災害直後の非常食として活用できます。
非常食の選び方をお伝えしたところで、続いて調理不要または簡単に作れる非常食と、調理に欠かせない備品をご紹介します。
災害時のライフライン停止に備え、水と熱源の確保は最優先におこないましょう。
まず、飲料用と調理用で1人1日約3Lを目安に準備します。2Lのペットボトルなら1週間で1人当たり10本程度が必要です。水道水を清潔な容器に保存するのもよいでしょう。
水だけでなく、カセットコンロとボンベなどの準備も大切です。カセットコンロを使えば、湯を沸かして即席麺やレトルト食品を温めることができます。ガスボンベは、1人当たり6本を目安に備蓄しましょう。
非常時の混乱の中で手軽にすぐ食べられる食品は、大きな安心感をもたらします。調理の手間がかからず、栄養バランスも考慮された非常食を準備しておけば、非常時でも心身の負担を軽減できるでしょう。
また、塩やこしょうなどの各種調味料なども用意しておくと、シンプルな非常食に味の変化をつけられます。
以下に災害時に頼れる非常食をいくつか紹介します。
商品 | 特徴 | 備考 |
尾西食品のアルファ米 | ・お湯や水を注ぐだけで食べられる ・白飯、五目ごはん、ドライカレー、チキンライスなど12種類 | ・5年保存 ・スプーン付き ・ハサミ不要で開封可能 |
アストの新食缶ベーカリー(保存パン) | ・しっとり食感で美味しい ・オレンジ、メロン、黒糖、プレーンなど計8種類 | ・最大5年保存 ・缶詰の中で発酵 ・焼成されているため衛生的 |
ビスコ 保存缶※コンパクトな保存用ビスコあり | ・1缶5枚×6パック(30枚) ・5枚あたり1億個の乳酸菌入り | ・賞味期限5年 ・子供から高齢者まで幅広い層に親しまれる味 |
サンヨー堂 缶詰フルーツ | パイナップル、フルーツミックス、みつ豆など | ・3年保存 ・リフレッシュや糖分の補給に |
永谷園のエー・ラベル あたためなくてもおいしいカレー 甘口 | ・香料、着色料不使用 ・アレルギー特定原材料7品目不使用 | ・5年保存 ・中辛もあり |
ホリカフーズのレスキューフーズ一食ボックス牛丼 | ・発熱剤付きで火や水が不要 ・牛丼のほかにカレーライス、和風ハンバーグライス、中華丼など | ・3.5年保存 ・甘めの味付けが好評 |
いずれの非常食も長期保存可能であり、美味しさにも配慮されているものです。スーパーやドラッグストアで手軽に購入できる缶詰や飲料なども活用しながら、家族のし好に合わせて選びましょう。
非常時の備えとして、温めて食べるレトルト食品や簡単に調理できる食品も用意しましょう。加熱することで食材本来の風味が引き立ち、特に災害時には温かい食事が心身を支える重要な役割を果たします。
ここでは、カップラーメン以外で比較的取り入れやすい非常食を紹介します。
商品 | 特徴 | 備考 |
こんぴらやの揚げ入りさぬきうどん | ・ゆでうどんと油揚げ入りめんつゆがセット ・コーンスターチやこんにゃく粉を使用 | ・5年保存 ・調理が簡単で、手軽に食べられる |
アマノフーズの雑炊 4種いろいろセット(4食入) | ・国産米と魚介だしを使用した本格的な雑炊セット ・かに、さけ、たらこ、貝柱の4種の味 | ・賞味期限180日以上 ・非常時でもバリエーション豊かな食事が可能 |
日清カレーメシ | ・お湯をかけて5分で食べられる ・コリアンダーやカルダモンの香りが食欲をそそる | ・賞味期限6ヵ月 ・非常時の簡単で満足感のある食事に最適 |
カゴメ 野菜保存食セット | ・化学調味料無添加/野菜スープ4種と野菜ジュース1種セット(計12点) | ・5.5年保存 ・アルファ米に野菜ジュースを入れてリゾット風にするのも可能 |
CoCo壱番屋監修 尾西のカレーライスセット | ・特定原材料等28品目不使用 ・野菜カレー180g、アルファ米80g、スプーン1本 | ・賞味期限5年6ヵ月~5年7ヵ月 ・水またはお湯で調理できる |
ロングライフフーズのぜんざい | ・特定原材料等28品目不使用 ・ほどよい甘さ/原材料は小豆、佐藤、食塩のみ | ・6年保存 ・疲労回復に |
上記の非常食を取り入れる場合、災害時に初めて食べるのではなく、事前に試食しておくこともおすすめします。また、非常食では乾物や乾燥野菜を活用して、栄養バランスを整える工夫も重要です。
たとえば、災害時に備えてキャンプやピクニックで非常食の効果的な活用法を試し、食べ方にも慣れておきましょう。特に子どもや高齢者には、味付けや食べやすさを考慮した準備を心がけることも大切です。
非常食を準備する際に、持ち出し用リュックに何を入れるか悩む場合もあるでしょう。災害後すぐに口にできるもの、避難した際に周囲をあまり気にせずに食べられるものが推奨されます。
以下の商品例を参考にして、ご自身や家族に合う携帯食を準備しましょう。
商品 | 特徴 | 備考 |
三立製菓 カンパン | ・水分を吸収することで腹持ちが良くなる ・100g1缶は約1食分に相当/唾液分泌を促す氷砂糖入り | ・消費期限5年 ・そのまま食べるかお湯でふやかして離乳食や嚥下が難しい方にも対応可能 |
カロリーメイト ロングライフ | ・そのまま食べられる ・5大栄養素配合 | ・賞味期限3年 ・軽量で持ち運びしやすい ・災害時でも抵抗感少ない |
イザメシ OKASHI チョコバー | ・溶けにくく硬めのチョコバーで一年中持ち運べる ・5つの穀物入り | ・賞味期限3年 ・チョコ好きな方やエネルギー補給に最適 |
湖池屋プライドポテト(非常食版) | ・神のり塩、芋まるごと、じゃがいも心地の3種類 ・市販の味そのまま | ・賞味期限5年 ・特に子どもの軽食として楽しめる |
災害食用亀田製菓ハイハイン | ・柔らかく食べやすいお菓子 ・お米由来の植物性乳酸菌K2と、カルシウム配合 | ・賞味期限2000日 ・歯が生えていないお子様や、高齢者向け備蓄食品 |
東京ファインフーズのひとくちやわらかラスク | ・ホワイトチョコやメープル、メロンの3種 ・軽い食感で甘くて柔らかい | ・賞味期限5年 ・そのまま手軽に楽しめるスイーツ |
森永のInゼリー エネルギーロングライフ | ・トロピカルフルーツ味 ・アレルギー物質28品目不使用 ・腹持ちが良い | ・通常のinゼリーよりも保存期間が長く3年 ・栄養と水分を同時補給したいときに |
災害時には、軽量で高栄養価、持ち運びやすく、衛生的な非常食が最適です。食べたり飲んだりする場所を選ばない利便性も重要なポイントです。
非常用持出し袋に入れて備蓄する際は、定期的に消費期限を確認しましょう。また、普段使いのバッグに栄養バーやゼリーを携帯しておくことで、いざというときの備えになります。
非常食をスムーズに、より美味しく食べるためには、食品に合わせて備品も忘れずに用意しましょう。たとえば、以下のものを準備することで災害時に役立てられます。
・カセットコンロとボンベ
1人あたり1週間で約6本のカセットボンベが必要
・鍋ややかん
レトルトご飯や缶詰などを温めたり、お湯を沸かしたりする際に役立つ
・使い捨て食器類
紙皿や紙コップ、割りばし、スプーンなど
・アルミホイル
食材の包み焼きや保存に活躍
・ラップ
お皿に敷いて使えば、洗い物を減らせる
・キッチンペーパー
調理時や後片付け、手拭きなどに使える
・キッチンバサミ
食材のカットや袋の開封に便利
これらの備品は、普段からキャンプやアウトドアで実際に使って慣れておくと、非常時でも効率的に準備や片づけができるようになります。
こちらの記事では、避難時に持ち運ぶリュックの中身や家庭におく備蓄品、普段持ち運ぶべきものなど、防災グッズの全般について詳しく解説しています。
【関連記事】防災グッズを見直そう|負担感のない安心安全な備え方とは?
災害に備える非常食の備え方として「ローリングストック」が注目されています。ここでは、ローリングストックの基本的な考え方や実践方法を紹介します。
ローリングストックは、普段から使う食品や日用品を少し多めに購入し、消費した分を補充して備蓄する方法です。ローリングストックには、以下のようなメリットがあります。
ローリングストックは、単に非常食を「蓄える」だけでなく「使って補充する」といった考え方を取り入れた方法であり、多くのメリットがあります。日々の生活でローリングストックを意識し、災害時の対応をスムーズにしていきましょう。
ローリングストックをスムーズに取り入れ、日々の生活に活用するコツを以下にまとめました。
ローリングストックを始める際は、普段の買い物でよく購入する食品を少し多めに買うところから始めてみましょう。たとえば、缶詰やパックご飯、インスタントスープ、乾麺など、調理が簡単で保存がきくものから揃えると無理がありません。また、トイレットペーパーやカセットボンベ、使い捨てカイロなども災害時にも役立つ消耗品として有効です。
ローリングストックについては、こちらの記事でも、その定義や効果、対象物、方法などさらに詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
【関連記事】災害備蓄の「ローリングストック」とは?基本から実践まで解説!
ローリングストックの一環として定期的に非常食を活用する習慣を持つことは、災害時の調理を効率的かつ効果的に行う助けとなります。ここでは、ポリ袋を使った簡単調理法や非常食を活用したレシピをご紹介します。月一の「ローリングストックデー」などで試してみましょう。
パッククッキングとは、ポリ袋を使ったシンプルな調理法を指します。この方法を使えば、災害時に水道やガスが使えない場合でも、カセットコンロや鍋を使って温かい食事を作れます。以下の手順を参考にし、ご家庭でも試してみてください。
【ご飯の炊き方】
米1合の場合は、水150ccとなります。鍋の中でレトルトカレーの袋と一緒に温めることで簡単にカレーライスを作れます。
非常食として常備しやすい乾物や缶詰の食材を使って、簡単に調理できるレシピをご紹介します。たとえば、ツナ缶はそのままでも食べられますが、他の食材と和えると風味豊かな一品が完成します。
材料(1人分)
作り方
【参照】カゴメ監修VEGEDAY|備蓄食材で作るおすすめ非常食!切り干し大根とツナ缶のあえ物
味がなじむまで20分ほど置くと、さらに美味しくなります。普段からこのようなレシピを活用し、災害時に備えておくとよいでしょう。
最後にアルファ米を使った炒飯の作り方をご紹介します。以下のレシピは、Cookpadの「非常食アルファ米わかめご飯で簡単炒飯」の作り方ですが、普段家庭で作る方法で構いません。
材料(2人分)
作り方
このように、各種Webサイトでは、非常食をおいしく、効率的に消費する方法が紹介されています。月1回の「ローリングストックデー」を活用し、非常食レシピを日常に取り入れることで、無理なく備蓄体制を整えていきましょう。
非常食の備蓄は災害時の心強い備えですが、始める際には手軽に取り組める小さなステップから始めることが大切です。ローリングストックを日常生活に取り入れることで、無理なく備えを習慣化し、安心感を得られます。
災害がいつ起こるかわからないからこそ、計画的な準備がご自身や家族の安全を守る鍵となります。この記事でご紹介したポイントを活用し、非常食の備蓄をできることから始めて継続的に見直していきましょう。
【参照】
政府広報オンライン|今日からできる食品備蓄。ローリングストックの始め方
農林水産省|災害時に備えた食品ストックガイド
農林水産省|要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド
農林水産省|特集1 非常食(1)
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