JOURNAL #3782024.12.06更新日:2024.12.06

防災公園とは?特徴と活用例を紹介|遊んで学んで防災力を高めよう

「防災公園」は、災害時に避難場所や救援活動の拠点として機能する公園です。普段は市民の憩いの場として利用されますが、いざという時には物資供給や医療活動を支える重要な役割を果たします。しかし「防災公園とは具体的にどんな公園?」「普通の公園とどう違うのか?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、防災公園の定義や役割、設備について、さらに防災公園の活用方法まで詳しく解説します。防災力を高め、災害に備えるためのポイントを一緒に確認していきましょう。

防災公園とは?

としまみどりの防災公園
としまみどりの防災公園(愛称:IKE・SUNPARK)

防災公園は、公園名に「防災」という言葉が含まれていない場合も多いため、意外と気づきにくいかもしれません。ここでは、防災公園の定義や役割、特徴について解説します。普段利用している公園が防災公園としての機能を備えているかどうか、確認する際の参考にしてください。

防災公園の定義と役割  

防災公園は、災害時に避難場所や救援活動の拠点として機能するように設計された施設です。普段は一般的な公園と同様に、遊び場や休憩所として活用されていますが、災害時には避難場所や物資を集める拠点、医療活動や救助活動を支える場所として使われます。

防災公園の役割をまとめると以下のようになります。

  • 避難場所としての役割:災害時に多くの人が安全に過ごせる場所を提供する
  • 物資を配る場所:救援物資や食べ物、飲み水などを保管して配るための拠点となる
  • 地域の救援拠点:自衛隊や消防、警察などが救援支援を行うための場所となる
  • 延焼被害を抑える:特に都市部において火災を広げないための防火帯として活用する

防災公園は、住民の防災や減災に関する意識を高め、地域防災に参加する際の重要な拠点です。自宅近くの公園が避難場所として指定されている場合があるため、実際に特徴や設備を確認してみましょう(各設備については後述します)。

防災公園の種類

防災公園には「どのような災害、その規模に備えているか」によっていくつかの種類に分かれます。それぞれの種類を理解することで、防災公園にどのような工夫がされているかが明確になります。国土交通省のWebサイトページ(公園とみどり「防災公園の整備」)などを参考に、以下のように整理しました。

種類面積要件等機能備考
広域公園 等概ね面積50ha以上広域防災拠点自治体の管轄区域を超えた大規模災害時に、支援物資集積や救援、復旧支援活動を行う拠点
都市基幹公園 等概ね面積10ha以上地域防災拠点自治体レベルで、災害時における情報収集、避難、救援活動を行う拠点
都市基幹公園 広域公園 等基本的に面積10ha以上広域避難地大きな災害や火災が発生した際に、たくさんの人が一時的に避難するための広い場所
近隣公園 地区公園 等基本的に面積2ha以上一次避難地徒歩で行ける身近な公園が多く、家族や近所の人が集まりやすい場所(広域避難地など安全に避難するための中継地)
緑道幅員10m以上避難路広域避難地などへ安全に避難するための道路
街区公園 等面積500㎡以上を合計5か所以上帰宅支援場所地震などでインフラ復旧のめどが立たずに帰宅が困難になった方への情報提供や支援を行う場所

防災公園は災害時に重要な役割を果たすため、特別な機能が備えられています。たとえば避難場所として機能する公園には、広いスペースや物資の輸送経路が確保されており、迅速な対応が可能です。

しかし、災害時においてはほかの施設や場所との連携が不可欠です。単一の公園だけではすべてのニーズに応えることはできません。実際には、地域内の複数の公園や関係機関が連携し、住民の命と安全を守るために協力することが肝要です。この点を理解し、地域全体で防災体制を強化していくことが求められます。

防災公園と普通の公園の違いとは

東京臨海広域防災公園
東京臨海広域防災公園

防災公園と普通の公園の違いを考える際、まずはその規模が大きなポイントとなります。特に都市部の防災公園は、災害時に多くの人が避難し、支援物資の集積や配給を行うため、広いスペースが必要です。また、消防や警察、自衛隊などの活動拠点として利用されることもあるため、駐車場や園内道路などの整備が求められます。さらに、施設面でも違いがあります。

一方、普通の公園は、遊具や休息の場が主な役割で、防災設備が設置されていない場合も多くありますが、防災公園には、一般的に災害用トイレや炊き出し設備、給水ポイント、簡易テントスペースなどが備えられています。

防災公園と普通の公園を一概に区別することは難しいのですが、「防災」という視点で公園の役割を考えることが重要です。身近な公園が災害時にどのように利用されるのかを事前に確認し、いざというときの備えに役立てましょう。

防災公園には何があるの?

防災公園には、災害時に避難や生活を支えるための設備が整っています。平常時は公園として利用される一方、非常時には命を守る拠点となります。事前に設備やその場所を家族で確認しておきましょう。

防災備蓄倉庫

防災倉庫

備蓄倉庫は、災害時に必要な物資を保管している施設です。倉庫の中には食料品や水、毛布、衛生用品、救助用具などが揃えられています。普段は施錠されていますが、災害時に関係者が開けて供給します。地域の防災訓練の際に活用されることが多く、どのような備蓄がされているのかチェックしておくと役立ちます。

耐震性貯水槽

耐震性貯水槽

耐震性貯水槽は地震時に飲み水や生活用水を確保するための設備です。普段は水道管の一部として使われ、地震が発生すると緊急遮断弁が作動して内部の水が守られる仕組みになっています。災害で断水した場合でもこの貯水槽の水が生活を支えます。

揚水ポンプ

用水ポンプ

揚水ポンプとは、災害時に近くの池や川などから水を汲み上げる手動式のポンプを指します。この水は飲料用ではなく、トイレの洗浄や清掃といった生活用水として使われることが一般的です。電気が止まっても手動で操作できるため、特にライフラインが断たれた際に役立ちます。

災害用トイレ

災害用トイレ

マンホールを活用した災害用トイレは、断水時や通常のトイレが使えないときに活躍します。下水道管路にあるマンホールのふたを外し、簡易便座を設置して使用します。災害時にはテントが設営されてプライバシーも確保されるなど、衛生環境を守りながら安心して利用できるように配慮されています。

かまどベンチ

かまどベンチ

かまどベンチは普段、公園のベンチとして使われますが、災害時には炊き出し用の「かまど」に転用します。座面を外して調理スペースを確保し、燃料を使って火を起こす仕組みです。暖を取る目的でも使えるため、寒い季節の避難生活でも役立ちます。

防災パーゴラ

防災パーゴラ

防災パーゴラは、災害時にテントを張って救護室や物資の保管場所として利用されます。普段は植物を絡ませた棚や休憩用のスペースとして使用されますが、その構造を活かして非常時に救護や保管スペースを提供します。

防災あずまや

防災あずまや

あずまやとは屋根付きの憩いの場として利用できる簡易的な休憩スペースを指します。災害時には柱にシートを張ることで仮設の避難もしくは救護施設として活用できます。防災用のあずまやにはベンチにシートが保管されており、緊急時にすぐに利用可能です。

太陽光発電の照明

停電時でも活躍するのが太陽光発電の照明です。昼間に蓄えた電力で夜間の公園内を照らし、避難者の安全を守ります。また、現在、都市公園や街区公園などにソーラーガレージを設置する動きもあり、非常時の熱源対策として期待されています。

デジタルサイネージ

デジタルサイネージは、災害時に防災情報を提供する電子掲示板です。停電時でも非常用電源で動き続け、最新の地震情報や避難指示をリアルタイムで発信します。普段は公園の案内や地域情報を表示しており、両方の役割を兼ねています。

防火水槽

防火水槽

防火水槽は、消火活動に必要な水を貯めている施設です。消防車が使う水が不足する場合や、近くに消火用の水源がないときに活躍します。延焼による被害を防ぎ、公園内の安全を守るために重要な設備のひとつです。

ヘリコプター臨時離着陸場

弥右衛門公園のヘリポート

広場やグラウンドがヘリコプターの離着陸場として整備されている防災公園もあります。災害時に負傷者の搬送や物資の輸送を行うため、迅速な救援活動を支える重要な場所です。普段は多目的スペースやグラウンドとして利用されています。

以上のように、防災公園は多様な設備を備えているので、設備の場所や用途を事前に把握しておくとよいでしょう。家族で公園の設備を調べ、使い方を理解しておくことで、いざというときに迅速かつ安全に対応できる備えとなります。

続いて、各地域に設置されている防災公園とその機能についてみていきましょう。

全国の主な防災公園

日本各地には防災公園として指定された公園があり、それぞれが地域の防災計画に基づき独自の設備や機能をもっています。これらの公園は平時には憩いの場として利用され、災害時には避難所や対策拠点として重要な役割を果たします。以下に、全国の主な防災公園をまとめてみました。

公園(所在地/面積)平時の利用災害時の機能備考
東京臨海広域防災公園(東京都江東区有明/総面積6.7ha※都立公園と合わせると約13.2ha)・緑地での休憩、ピクニック、バーベキューができる
・防災体験学習施設「そなエリア東京」で72時間のサバイバル術を学べる
・首都圏広域の現地対策本部
・自衛隊や消防、警察などのベースキャンプ、後方医療や物流拠点
・2.6haの大型ヘリポート
首相官邸や自治体との災害対策本部設置に対応
木場公園(東京都江東区/24.2ヘクタール)・緑豊かな憩いの場
・防災訓練や啓発イベント、親子で楽しめる防災フェスタの開催
・防災トイレ、かまどベンチ、太陽光照明灯などを備え、避難所や救出拠点として機能
・マンホール型トイレ38基を利用可能
地域の防災訓練やイベントで防災意識向上の場として活用
防災広場根岸の里(東京都台東区/0.227ha)・地域住民の憩いの場
・噴水での水遊びなど
・東京都根岸エリアの防災拠点
・かまどベンチ、耐震型防火水槽(100t)、ソーラー照明、手押しポンプ、マンホールトイレを備える
広場メインの公園(狭い道の多いエリアに対応できるよう消防車が迅速にアクセス可能な設計)
なまずの里公園(埼玉県吉川市/0.794ha)・遊具や広場での遊び
・池で夏場の水遊び
・バスケットや一輪車練習なども楽しめる
・耐震性貯水槽、かまどベンチ、マンホールトイレ、防災パーゴラ(既に設置されたタイプと通常タイプ)を備えた防災拠点遊具(ロング滑り台やスプリングの遊具など)が充実しており、親子連れに人気の場所
ぼうさいの丘公園(神奈川県厚木市/9.4ha)・大型ローラー滑り台や水遊び池、小動物園、スケートボード場、多目的広場での活動・約2万人の避難収容可能
・現地対策本部設置
・300tの飲料水を蓄えた耐震性貯水槽
・展望広場はヘリポート
広域避難場所として大規模な避難収容に対応可能
広尾防災公園(千葉県市川市/3.7ha)・バーベキュー場や遊具施設、釣りの利用が可能
・市民がリラックスできる空間が複数ある
・一次避難地
・緊急医療や物資輸送の中継拠点として機能
・ドクターヘリの離着陸場有
バラ園や水に親しむ広場など多彩な施設が特徴
神栖中央公園(茨城県神栖市/19ha)・広場や大型遊具での活動
・親子連れが楽しめる場所
・1500人の避難を想定した地域防災拠点
・耐震性貯水槽、かまどベンチ、備蓄倉庫、防災トイレ(56基)を備える
防災パーゴラや休憩所を災害時に活用
古曽部防災公園(大阪府高槻市/4.5ha)芝滑りや4種類の滑り台を含む大型遊具/トレーニング室や観覧席付きアリーナスポーツ施設も併設・広域避難地として機能
・全国からの救援物資の受入れ
・複合遊具の上にテントを張って救護室として活用
大阪府北部の総合防災拠点として活用される設計
兵庫県立三木総合防災公園(兵庫県三木市/202.5ha複数の陸上競技場や球技場、野球場が整備され国際大会にも対応/自然体験ゾーンも併設・集配、復旧・救援要員の活動拠点
・陸上競技場や野球場を臨時ヘリポートとして活用
兵庫県全域をカバーする広域の防災拠点として活用
まびふれあい公園(岡山県倉敷市/4.5ha)芝生広場や遊具広場、多目的室の利用/芝滑りやロッククライミング/水遊びができる池・多目的室や備蓄倉庫
・マンホールトイレ、ヘリポート
・300人分の食料や資材を確保
・80人収容の避難スペース
ソーラー発電を利用したWi-Fi(SOLAWI)機能も設置

防災公園は、大規模災害を想定して設計され、地域の安全を守る重要な役割を担っています。実際に、2004年の新潟中越地震では、越後丘陵公園が物資集積場や消防活動の拠点としても活用され、被災地の復旧に寄与しました。また、2019年の台風19号では、新横浜公園が洪水時の貯水機能を発揮し、下流域への洪水被害を防ぎました。

このように、防災公園は地域住民の避難場所としてだけでなく、復旧活動や減災の拠点としても不可欠なインフラです。今後、各地域で整備された防災公園が、災害時における迅速な対応と地域の安全・安心をさらに高めるために、ますます重要な役割を果たしていくと考えられます。

防災公園を有効活用する際のポイント

防災公園は、災害時における避難所や支援拠点として非常に重要な役割を果たします。その一方で、設置状況や設備の限界、地域ごとの防災訓練の不十分さなどの課題も存在します。これらの課題に対処するためには、地域住民が防災公園を有効に活用する意識を持ち、日常的に準備を進めることが大切です。

地域での防災活動をより効果的にするためには、いくつかのポイントを意識して実践することが鍵となります。以下では、防災公園を有効に活用するための具体的なポイントをご紹介します。

防災公園の場所を把握する

まず、自宅の近くにどの防災公園があるかを確認してみましょう。地域によって防災公園の設置状況や設備に差があるため、どこに避難するかを事前に把握しておくことが大切です。最寄の避難場所や避難ルートを確かめ、いざというときのスムーズな移動につなげましょう。

設備を確認する

防災公園には、多くの災害対策設備が整備されていますが、これらの設備の場所も事前に把握しておくことが重要です。たとえば、防災トイレやかまどベンチ、耐震性貯水槽など、必要な設備がどこにあるかを知っておくことで、災害時に迅速かつ効率的な利用につながります。

防災訓練に参加する

防災公園の有効活用には、住民同士の連携が欠かせません。地域の防災訓練やイベントに積極的に参加し、防災知識を深めることが大切です。自治会内で情報交換を行い、地域の防災力を高めるための体制づくりに参加しましょう。

子どもと一緒に防災公園で遊ぶ

防災公園は、子どもたちが防災意識を高めるための重要な学びの場でもあります。親子で公園を訪れ、設置された防災設備を確認しながら遊ぶのは、地域全体の防災力向上につながります。公園内で行われる防災イベントにも参加して、楽しみながら防災の大切さを学ぶことも検討してみてください。

フェーズフリーについて説明しているイメージ画像です。

防災公園には「フェーズフリー」の考え方が取り入れられており、日常生活と災害時の境目をなくし、普段から防災意識を育む環境が整っています。公園を利用する際には、「もし災害が起きたら?」と考え、家族でシミュレーションしておくことも有効です。このような取り組みが、災害時に冷静に行動する準備となります。

【関連記事】フェーズフリーとは?非常時もいつも通り生活するために

防災力カルテでチェックする

防災公園を有効活用するためには、地域全体での協力と個々の備えが重要です。たとえば、都市緑化機構が提案している「防災力カルテ」を活用すれば、防災公園の機能を項目ごとに評価し、公園の災害対応力を確認できます。

具体的には、以下のような内容を確認します。

  • 災害時に公園が一時的な避難所として機能するための用具や設備が整備されているか
  • 初期段階の消防活動が可能な設備やスペースがあるか
  • 復旧や復興の拠点としての役割を果たせるか
  • 車両の進入が可能で、緊急車両のアクセスが確保されているか

このカルテを活用することで、地域住民と行政が連携し、現状の課題を共有しながら具体的な対策を講じることが可能になります。たとえば、地域イベントで公園の防災力チェックを取り入れてみると、住民が公園の機能を再確認でき、防災や減災の意識向上に役立ちます。

防災力の向上は、地域全体の安全・安心につながります。公園の防災機能を見直し、住民と行政が協力しながら、日常的な備えを進めていきましょう。

防災公園をもっと身近に!いざというときに備えよう

私たちの安全を守るためには、日々の準備が欠かせません。なかでも防災公園は、いざというときに迅速に避難できる場所として命を守る重要な役割を果たします。地域の防災公園を知り、実際に訪れて設備や避難経路を確認することは、防災力を高める上で非常に重要です。

さらに、地域の防災訓練や啓発イベントに参加して、防災公園をより身近に感じることが、災害時の備えになります。この記事を参考に、ぜひ防災公園への関心を深め、その活用法を見直してみましょう。

【参照】
国土交通省|
防災公園の整備
第II部 国土交通行政の動向(2)オープンスペースの確保と緑化の推進
都市再生安全確保計画制度 (概要)
国土技術政策総合研究所|
第Ⅰ章 総説 Ⅰ.1 緑とオープンスペースがもつ防災の役割
第Ⅱ章 防災公園等の配置
第Ⅱ章 防災公園の計画・設計
東京都公園協会|防災公園とは
あそび防災プロジェクト|全国の防災公園まとめ|概要や特徴について
株式会社JVCケンウッド・公共産業システム|身近な都市公園が防災拠点に~災害時に活躍する「防災公園」とは~
都市緑化機構|公園の防災力アップカルテ
斉藤 庸平(兵庫県立大学 名誉教授)|防災公園の歩みと今後の展望
不動産情報サイト アットホーム|防災公園とは?どんな施設がある?近所にあると便利な公園をご紹介
国土技術計画総合研究所|防災公園の整備・活用に関する事例集

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