JOURNAL #4002025.02.21更新日:2025.02.25
広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
ピースウィンズ・ジャパンが運営する空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”は、昨年5月にB型肝炎の被害が大きい西アフリカのブルキナファソを訪問し、検査体制を整備する医療支援を開始。その後、秋からは毎月、現地ブルキナファソとオンラインでつなぎ、2つの現地提携団体(NGO、患者団体)と定期的に会議を実施しながら、どうやって啓発活動を進めるか、議論を重ね準備を進めています。
西アフリカの最貧国ブルキナファソで患者の溢れる診療所を目の当たりにし、空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”の菊池看護師は、危機感を覚えていました。
「これだけ肝炎が蔓延しているのに、”肝炎とは何か” を教えるための言葉すら明確ではありません。その中で今は治療のことだけが患者に話されている印象です。肝炎がどういう病気で、放っておくとどうなるのか、家族にどう影響するのかというところまでは教えられていません。病気は正しく恐れないと、偏見や差別の引き金になるのに……『肝炎は希望のない病気』そんな風に思われてしまう指導を、この国でしてはいけない」
肝炎が悪化すると腹水が溜まり、お腹が大きく膨れ上がります。アフリカでは、その様子から“男性の妊娠” と揶揄され偏見の対象となることがあります。また、肝炎は自覚症状が少ないことから重症化してはじめてわかり、命を落としてしまう人が少なくありません。そのため“不治の病” として認識され、一緒にいるだけでうつるのではないかと、感染者を偏見差別の対象とする風潮があります。
ブルキナファソは、B型肝炎の有病率は9.1%(同国「肝炎戦略」2017年)と非常に高いにもかかわらず、これまで検査・予防・治療などの対策は十分におこなわれてきませんでした。一方で、地域や患者団体を巻き込み、対策を進めてきたHIV(エイズ)の対策では大きな成功を収め、今では有病率は1%以下にまで抑えられています。この成功モデルをB型肝炎にも応用し、さらに日本の先進的な啓発活動の取り組みを融合させることで、一人でも多くの命を守ろう、というのが空飛ぶ捜索医療団が目指す新しい医療支援です。
稲葉医師は現場に立ち、日本の医療の現状と比較していました。
「お医者さんが言えば患者はそれに従う。なんでやっているかはわからないけれど……という時代は確かに日本にもありました。なぜその治療をするかが説明されるようになったのは、”インフォームドコンセント” という考え方が浸透したからでしょう。
日本のやり方が、すべてブルキナファソに適しているとは思いませんが、やっぱり患者さん自身の意思がないと治療は成立しません。特に肝炎は自覚症状が少ないからこそ、いかに病気を”自分ごと”に捉えられるかが重要なんです。」
菊池看護師と稲葉医師が感じた現状を打破する鍵は「病気を理解し “患者の意思” で治療を続けること」です。
そこで考えられたのが、日本で厚生労働省が「肝炎基本指針」にそって全国で育成している「肝炎治療コーディネーター(肝炎コーディネーター)」を、ブルキナファソでも養成していくという支援です。
日本では、これまでに医療従事者や患者当事者など、約3万人の肝炎コーディネーターを養成。早期発見・早期治療によって肝がんなどへの重症化を防ぎ、肝炎で命を落とす人を減らすために、全国各地で肝炎に関する啓蒙活動を推進してきました。この活動の結果、日本国内では肝炎に対する正しい知識が広まり、かつて国民病ともいわれた肝炎による死亡率は大幅に減少しています。
この成功体験をブルキナファソでも展開するために、ピースウィンズは現地の提携団体と連携して大きく以下の3つの課題に取り組んでいます。
ひとつは、日本の先進的な取り組みをいかして医療従事者だけでなく、患者・当事者やコミュニティのリーダーなどにも正しい知識を教育し、周囲に広げていく役割を担う肝炎コーディネーターの養成。
ふたつめは、多言語であるブルキナファソにおいてテキストではなく、紙芝居などビジュアルでもわかりやすい啓発素材を開発し普及させていくこと。
そして3つめは、妊婦健診や新生児へのワクチン接種、安価な治療薬の提供など、すでにある肝炎対策と組み合わせて、より大きな成果を生み出す仕組みづくりです。
この3つの肝炎対策に取り組んでいくことで、稲葉医師のいう「病気を理解し “患者の意思” で治療を続ける」文化を根づかせていくことを目指しています。
ブルキナファソにおいても、日本においても、効果を発揮してきたアプローチが、ブルキナファソの未来を変える力になります。引き続き、関心をお寄せくださり、ご支援をいただければ幸いです。
【空飛ぶ捜索医療団アフリカに行く】
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#04|日本の「肝炎コーディネーター」がブルキナファソを救う
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