JOURNAL #4152025.03.21更新日:2025.03.24

マンション防災・震災編|もしもマンションで地震が起きたら?リスクと備え、避難行動を詳しく解説

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

就職や進学、転勤など生活環境の変化により、新しい住居での生活が始まる方は多いのではないでしょうか。新生活への期待が高まるのはもちろんですが、災害への備えを準備することも大切です。事前に避難経路や避難所までのルートを確認し、もしも自宅で待機する場合の備蓄などがしっかりできていれば、いざ地震が起こったときも冷静に行動できるようになります。そこで今回の記事では、マンションでの防災意識や危険度の確認、日ごろから意識したいポイントなどについて解説します。

マンションと震災のリスク

「マンションは戸建てよりも耐震構造がしっかりとしていそうだから、震災のダメージは少ないのでは?」と思われるかもしれませんが、マンションに住んでいるからと言って震災のダメージを防げるわけではありません。マンションの耐震や土地の地盤、階数によって、危険度が大きく左右されることがあります。

はじめにマンションと震災のリスクについてみていきましょう。

建築年により、倒壊するリスクが高くなる

マンションは戸建てよりも倒壊するリスクが低いように思われますが、建築基準法が時期によって異なるため、安全とは言い切れません。

建築年月日(認可申請日)と建築基準法で定められた耐震基準では、以下のように定められています。

  • 1981年5月以前のマンションは、旧耐震基準のもと、震度5程度の揺れで倒壊しない
  • 1981年6月以降のマンションは、新耐震基準のもと、震度6〜7程度の揺れで倒壊しない

つまり、1981年5月までに建築されたマンションは、同年6月以降に建築されたマンションより倒壊するリスクが高いと考えらています。リスクが心配に感じる方は、マンションの建築年と時期を確認してみるとよいでしょう。

マンションの構造の違いにより揺れ方が異なる

一般的に、マンションは一定の耐震性を備えた構造になっていますが、耐震・免震・制震構造の大きく3種類に分けられ、それぞれによって揺れ方が変わります。

耐震構造とは、柱や梁、壁を強化してマンションを強化する方法です。耐震にかけるコストを抑えられる反面、一般的に他の構造よりも揺れが大きくなるといわれています。

免震構造では、地面とマンションの間に地震の揺れを吸収する装置を設置します。比較的コストが高い方法であるものの、地震の揺れを抑えるには効果的で、室内の落下物や家具へのダメージを防ぐことも可能です。

制震構造とは、地震の揺れを軽減する装置を用いた方法です。大規模な震災でも揺れが抑えられ、柱や壁の傷も防げるようになり、二次災害を防ぐのに役立ちます。

地盤の強さと被害の関係性を知る

マンションの耐震は、構造や形だけでなく地盤も大きく関係します。一般的には、地盤が硬ければ揺れ方は比較的おだやかで、軟らかければ揺れ方は大きくなります。揺れ方が激しいほど、震災によるダメージは大きくなります。

マンションの地盤を調べる場合には、売主や不動産会社、国土交通省の国土地盤情報検索サイト『KuniJiban』から確認できるので参考にしてみてください。

高層マンションは大きく揺れるリスクがある

高層マンションは、大きな揺れが長引く『長周期震災動』のリスクがあります。例えば2004年の新潟県那中越震災では、遠く離れた東京の六本木ヒルズのエレベーターが停止、2011年の東日本大震災では同じ東京の西新宿の高層ビルで10分以上の揺れが報告されました。

長周期震災動は高層階で発生する可能性が高く、地上で感じる揺れの2~3倍に及ぶとも言われています。マンションの倒壊を避けられても、家具の損壊やケガなどを負うリスクも避けられません。

高層マンションでなくとも、マンションは上の階のほうが大きく揺れやすく、下の階ほど揺れを抑えられると同時に、階段での移動もしやすいとされています。高層階に住まれる場合、こうしたリスクも知っておくとよいでしょう。

生活面のリスクが生じることもある

マンションで地震が起こったときのリスクは、移動や生活にも及びます。よく指摘されるのが、エレベーターの故障と断水によるトイレの問題です。

停電によりエレベーターが故障すると、高層階への移動は階段に限られます。低層階ならそれほど問題はありませんが、例えば10階以上まで階段を上り下りすることは、体力的な疲れにも及び、高齢者や歩行が困難な方には厳しい状況となります。

また水道まわりも止まってしまう場合もあり、過去に地震発生後に高層階でトイレを流すと低層階から汚水があふれ出てしまうといった報告もあります。こうした事態に対策を講じているマンションもありますが、一般的にマンションで大規模な地震が起こり断水が生じた場合、管理会社からの許可が出るまでトイレは使えません。

それ以外にも、オートロックや照明、駐車場なども使えなくなる場合もあります。こうした防災の観点から見たマンションの特徴を知っておくことで、いざという時に冷静に行動することにもつながるでしょう。

マンション防災に必要な備え

ここからは、マンション防災で必要な準備についてみていきましょう。

災害時に備えての備蓄

高層階で避難する場合、また避難所生活をする場合、数日間の備蓄が必要です。またマンションに閉じ込められた場合も想定して、以下の備蓄を用意しておくとよいでしょう。

①食事

  • 食料品:アルファ米、カップ麺、レトルト食品、缶詰、お菓子など
  • 飲料水:3リットル×家族の人数×7〜14日分

②生活用品

  • 非常用トイレ:1日7回×家族の人数×7〜14日分
  • トイレットペーパー:家族の人数分のロール数
  • ウェットティッシュ
  • カセットコンロ
  • 乾電池、ソーラーパネル
  • ラジオ
  • ゴミ袋:45L×50枚以上
  • ヘルメット
  • ライター・チャッカマン
  • ナイフ・缶切り

③育児、介護、ペット、女性用

  • 赤ちゃん用:おむつ・離乳食のレトルトパック・着替えなど
  • 介護用:おむつ:介護食のレトルトパック・着替えなど
  • ペット用品:ペットシーツ・ペットフードなど
  • 生理用:ナプキンやタンポンなど

④医薬品

  • 医薬品
  • サプリメント
  • 救急箱

こうした備蓄方法として、災害時にも必要となる消耗品を日常的に多めに購入し、消費した分だけ新しいものを買い足していくという「ローリングストック」が有効です。

ローリングストックについて説明している記事のサムネイル画像です。

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家具の固定

家具の倒壊や損傷は、ケガや命の危険などの二次被害を招くリスクがあります。特に高層階は大きな揺れが続くため、家具の固定をしておくと安心です。ホームセンターやインターネットで固定具を揃え、家具の転倒・落下防止対策を行いましょう。

避難経路の確認

マンションで被災した際、命を守るために必要なのが避難経路の確保です。

マンションに住む場合には、まず指定された避難経路を確認しておきましょう。また震災や火災によって通路がふさがれることを考えると、一つだけでなく複数の避難ルートを想定しておくことも必要です。

たとえば、通路や階段が使えない場合、多くのマンションにはベランダに『避難はしご』が設置されていますので、場所を確認し使い方を覚えておきましょう。

マンションで震災が起こったときの避難行動

ここまでは、震災発生までの準備についてお話ししましたが、いざ震災が起こったときどうしたらよいか、避難行動で押さえておきたいポイントをみていきましょう。

①身の安全を確保する
②火元を確認する
③逃げ道を確保する
④身の安全を周囲に知らせる
⑤マンション外に避難する

震災が発生すると、地域が指定する避難場所や避難所に向かうイメージが強いですが、マンションが倒壊していなければ、安全を確認した上で在宅待機が適している場合もあります。

たとえば、避難生活が長引く場合、在宅避難ならプライバシーに関するストレスを軽減でき、自分たちのペースに合わせた生活が守られます。特に高齢者や病人にとっては負担も少なく、ペットにとってもストレスがかかりにくいなども在宅避難のメリットといえるでしょう。

また、大規模震災で避難生活が長くなると、家を留守にしてしまうことから空き巣に入られるおそれもあります。もし在宅避難が可能な場合は、こうした空き巣被害を防ぐことにもつながります。

それでも、震災発生時の冷静な判断は必要不可欠です。震災発生時の避難行動について、順を追って確認していきましょう。

①身の安全を確保する

震災発生時で最も重要なポイントは、自身の安全確保です。テーブルの下に隠れ、クッションや枕などで頭を守り、揺れが落ち着くまで待ちます。安全な場所が見当たらない場合には、例えば玄関など落下物が少ない場所が比較的安全です。食器棚や戸棚のそば、窓ガラスのそばからは離れましょう。

家具や大型家電等の転倒を防ごうと、必死に支えようとするケースをよく聞きますが、非常に危険です。倒れた家具でケガをしたり、下敷きになったりしてしまうリスクが高いため、身の安全を第一に考えましょう。

エレベータ内にいるときに地震が起きたら…

もしもエレベーターの中で震災が起きた際には、すべての階のボタンを押し、停止した階で降りることで閉じ込められなくなります。万が一閉じ込められた場合には、非常ボタンで外部に連絡しましょう。壁などを叩いて音をたて、エレベーターにいることを知らせることも大切です。

②火元を確認する

揺れの落ち着きを確認したら、火元を確認します。現在では地震が起こるとガスの供給も自動的に遮断されますが、火を使用していると火事になるリスクもあるためです。速やかに火を消し、元栓を閉め、出火しているときは初期消火を行いましょう。

③逃げ道を確保する

火元の安全まで確保できたら、自宅から外に避難できるかを確かめましょう。大きな揺れが生じると、玄関やドアの枠が歪み、ドアを開けることができず外に出られなくなってしまうケースがあります。もしも余震が続くような場合は、最初の揺れが収まったときに素早くドアを開けておくなど逃げ道を確保しておくことも大切です。

なお、大きな第2波が来るおそれがある場合は、一旦、揺れがおさまったあと、外に避難するようにしましょう。

④身の安全を周囲に伝える

状況が落ち着いてきたら、家族や周囲に連絡をしましょう。マンション内で安全を伝える場合には、ドアノブに札をかけて知らせることができます。赤ちゃんや高齢者、病院など支援が必要な場合、同じようにドアノブの札で意思表示をしておくと、支援が得られやすくなります。

⑤マンション外に避難する

マンションの損壊が著しく、在宅避難が困難と感じられる場合には、避難所に行きましょう。ラジオや防災の無線、自治体が運営する防災アプリなどから、近隣の避難所が確認できます。インターネットやスマートフォンが使用できなくなることも見据え、事前に避難所を確認しておくとよいでしょう。

実際に避難所に行く際には、自宅を離れる前にガスの元栓を閉め、電気のブレーカーも落としましょう。また、余震で閉じ込められてしまうリスクを避けるため、移動する際にはできるだけエレベーターの使用も避けましょう。

避難所と避難場所の違いについて解説している記事のイメージ画像です。

共助の重要性

マンションは複数の住人が入居していることから、いざというときに助け合えるというメリットがあります。

自主防災組織の結成、配慮が必要な住居者の連絡、防災マニュアルの共有、管理組合での備蓄、隣近所との付き合いなど、個人レベルや集団で可能な対策があります。マンションで防災訓練を行っている場合は積極的に参加することで、お互いの情報や必要な支援を共有できます。

マンションに在宅避難する場合にも、お互いが助け合うことが重要です。日ごろから差し支えない範囲であいさつや交流を心がけ、助け合いの精神を身につけましょう。

またマンションには共同で使用できるスペースがあり、災害対応用としても活用できます。救援物資の仕分けやエレベーター停止時の滞留場所など、状況に応じて有効活用しましょう。

まとめ

今回は新生活を機にマンションでの生活を始める方、またすでにマンションに住まわれている方に向けて、マンションの震災時の防災について解説しました。

防災の観点からマンションは戸建てよりも倒壊リスクが低く、地震が起きても在宅での避難が可能となるなどのメリットがある一方で、エレベーターの停止や築年数による安全性の有無、高層階と低層階での危険性の違いなど、マンション特有のデメリットも存在します。

重要なポイントは、

  • これから住むマンション、現在住んでいるマンションが安全であるか
  • いざという時の備蓄や家具の固定ができているか
  • 避難経路を把握できているか
  • マンションの住民同士で助け合える状態にあるか

の4点です。戸建てと同じように、事前の備えと震災発生時の冷静なポイント、お互いの協力体制があってこそ、どのような状況でも身の安全を守れるようになります。マンションでの生活をしている方は、ぜひ今回の記事を震災に備える参考にしていただければ幸いです。

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