JOURNAL #4792025.10.03更新日:2025.10.03
広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
誰ひとりこぼれ落ちることなく、必要な支援を本当に必要としている人に届けるためにはどうすればよいのか。その答えのひとつが、“被災地で避難者を支える地元の人びと”です。今回のレポートでは、この1週間で空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”のスタッフが出会った、誰かに頼まれたわけではなく、自主的に支援活動を行う地元の人びとの存在を紹介します。
光復郷の郷長でもある蔡(サイ)智輝さんは、住民が自主的に開設した教会避難所の運営者でもあります。自身も被災していますが、教会でボランティアを含め500人ほど受け入れ、被災者を見守ってきました。
「避難者はみな教会のイスや床に雑魚寝で寝泊まりしているため、ほぼ眠れていない状態が続いていました。寝不足によるストレスや被災時の精神的ダメージが見られ、物資などの支援だけでなく、心のケアがこれからは必要になってくるでしょう」
また、サイさんは、ボランティアが多く集まり町の復旧を支えてくれたことに感謝しつつ、一方で小さな村などには支援が足りていない現状も訴えます。県政府が主導する大きな支援はどうしても中心部などに集中し、小さな集落などは後回しになってしまう課題は、台湾でも起きているようです。
もうひとつ、サイさんが気にかけていたことがあります。高齢者の食事の問題です。
「県政府が今後もお弁当を支給していきますが、これまでお年寄り向けの柔らかい食事が提供できていません。老人向けの弁当を届ける企業が市内にあったのですが被災してしまい……高齢者が多い地域なので、このことも心配事のひとつになっています。こうした些細な問題も含めて、県政府と村の連携は今後の大きな課題ですね」
李雪燕(リー・シャオイエ)さんも、教会の避難所を支えるひとりです。ご自身の家は被災は免れましたが、教会の幹部でもあり、ボランティアとして運営をサポートしています。彼女が気になったのは、衛生環境の問題でした。
「避難所内の衛生環境の悪化が気になって、ボランティアとして毎日、清掃していました。それと台湾では、手洗い等で石鹸を使う習慣はあまり一般的ではありません。コロナ禍を機に私も含め一部の人たちは手洗いやマスクの重要性を意識するようになりましたが、こうした感染予防に対する認識は特にこの周辺の原住民には馴染みがなく、なかなか理解を得ることが難しいこともあります。それでも、避難者の健康を守るためには、地道に伝えていかなければなりませんね」
空飛ぶ捜索医療団では、蔡さんや李さんのようなキーパーソンともコミュニケーションをとりながら必要とされた衛生用品などの物資を支援するとともに、スタッフ自身も気づいたときに避難所周辺を掃除するなど衛生環境の改善に努めました。こうした行動を見て真似たり、一緒に清掃してくれる人も、少しずつ増えていったといいます。
現地調査を進めていくなかで、自主的に避難者の受け入れを始めたという旅館に出会いました。被災地、光復から車で約20分ほどの離れた地区にある『虎爺(フーイエ)温泉館』です。およそ280名ほどの被災者が避難してきたといいます。
営業を一部停止し避難者を受け入れ、ホテルの居室やホールを開放し、食事は3食を提供。1日20万元ほどかかる受け入れ費用は全額自己負担で行い、生活用品などは県政府ではなく、個人からの支援が多く集まり、助けられたといいます。
被災地には、自身も被災しながらも被災者や避難者を支え、周辺地域には「自分たちができること」を考え、被災者に手を差し伸べる人がいます。こうした人びとの存在が、こぼれ落ちそうな脆弱な人たちの力になっているのです。
空飛ぶ捜索医療団は、復旧作業を支援するとともに、大きな支援の裏側でこぼれ落ちてしまうような被災者の声にもできるだけ寄り添い、被災地と被災者を支えていく活動を続けていきます。
皆様の温かいご支援をよろしくお願いいたします。
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WRITER
広報:
空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
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