
JOURNAL #5192026.02.16更新日:2026.02.16

2026年の冬は各地で記録的な大雪となり、人的被害やインフラ被害などが発生しました。大量の雪は、春になると一斉に解けて水へと変わります。積雪が多い年は融雪量の増加が予想され、今後の気象状況によっては河川水位が大幅に上昇する可能性があります。
近年は暖冬の影響で降雪量が少なくなってきた影響もあり、融雪洪水も少なくなってきましたが、今年は注意が必要な状況といえるでしょう。この記事では、融雪洪水のメカニズム、過去の事例、そして家庭でできる対策について説明します。
「融雪」とは、積もった雪が気温の上昇で溶ける現象を指します。雪解け水が大量に川へ流れ込み、水位が大きく上がって起こる洪水が「融雪洪水」です。春先の気温上昇や暖かい風、雨などが重なると洪水発生の危険性が高まります。ここでは、その基本的な仕組みと特徴を見ていきましょう。

融雪洪水は、春先から初夏にかけて発生しやすい災害です。気温が0度を超える日が増える3月頃から注意が必要となり、その傾向は5月頃まで続きます。
発生しやすい地域として挙げられるのは、北海道や北信越など積雪の多い地域です。これらの地域では春の気温上昇に伴い雪解けが進み、河川の水量が増加します。とくに流域に積雪地域を多く抱える河川では、上流で解けた雪解け水が下流へ集まり、水位が上昇しやすくなります。
例えば、日本の代表的な河川である信濃川と利根川を比べてみましょう。

信濃川は4月から5月に水量が多く、利根川は9月に増水する傾向があります。この違いの背景には、冬場の積雪量と春の雪解けの影響があると考えられています。
融雪洪水は、いくつかの気象条件が重なることで発生します。主な要因は次のとおりです。
【発生要因】
・急激な気温上昇
気温が短期間で大きく上昇し、0℃を大きく超える日が続くと、雪解けが一気に進む
・多量の積雪
その年の積雪量が多いほど、融け出す水の量も増え、河川へ流れ込む水量が大きくなる
・融雪期の降雨
雪解けの時期に雨が重なると、雨水と雪解け水が合わさり、川へ流れ込む水の量が急激に増加
また、河川が凍結している地域では、融けた氷が流下して詰まることで水位が上がる「アイスジャム洪水」が発生する場合もあります。これらの条件が同時期に重なると河川の水量は急激に増えやすくなるため注意が必要です。

融雪洪水は、雪解け水の急な増加により次のような被害を引き起こします。
【主な被害】
・河川の増水や氾濫による家や農地への浸水
・下水道の処理能力を超えた内水氾濫
・地すべりや融雪泥流が発生
・道路の冠水や再凍結による交通への影響
特に山間部では、雪解け水が地中に染み込み地盤を弱めるため、土砂災害が起こりやすくなります。市街地でも排水が間に合わず、生活に必要な設備に広く影響が出ます。
このように融雪洪水は、水害だけでなく土砂災害やインフラへの障害が複合的に発生しやすい点が特徴です。
春先に気温が上がり、低気圧による大雨が重なると雪解け水が一気に流れ出し、各地で洪水や浸水が起きています。ここでは、主な事例から、その原因と被害の特徴をまとめます。
新潟県の信濃川流域では昔から春になると融雪洪水が起きており、1762年4月には雪解けで川の水位が上昇し、堤防が壊れるなどの被害が出ました。
十日町での観測データを見ると、雪を水に換算した年間の最大値は平均で約720mmです。これは、梅雨の時期(6〜7月)の平均的な降水量である約351mmのほぼ2倍にあたります。融雪が最も盛んな時期には、1日に50mmの雨と同じくらいの水が流れ出すこともあるそうです。そこに雨が降ると、さらに水位が急激に上がります。こうした事象が重なり、新潟県では地すべりも3月から5月にかけて多く発生しており、大量の雪解け水が災害の大きな原因となっています。
参照:
J-STAGE|新潟県の災害環境 の変遷 (V)――信濃川流域の水害環境を中心として――
新潟県気象地方台|Ⅳ.新潟県の雪災害
2018年3月8日から9日にかけて、北海道の釧路・根室地方では低気圧の影響で記録的な大雨となり、同時に気温も上昇しました。標茶町(しべちゃちょう)では最高気温10.2℃(平年より6.8℃高い)を観測しています。降雨に雪解け水が加わったことで釧路川流域では内水氾濫が発生し、摩周駅周辺では冠水のため住民がボートで救出される事態となりました。
このほか道内各地で床上・床下浸水が相次ぎ、道路の通行止めやJRの運休など交通機関にも影響が広がりました。豪雪の後に気温上昇と大雨が重なり、水位が急激に上昇した典型的な融雪洪水の事例といえます。
参照:
釧路地方気象台|洪水危険度分布及び融雪事例について
北海道|3月8日から9日にかけての大雨と融雪等による被害状況等(第2報)

融雪洪水は自然現象のため、発生そのものを防ぐのは困難です。ただし、事前に備えや情報確認を行うことで、リスクを軽減できる可能性があります。
気温が急に上がるという予報や、低気圧が近づいてきている、大雨が降りそうだという情報には特に気をつけましょう。気象庁の注意報や警報、「洪水キキクル」、国土交通省の「川の防災情報」など川の水位や危ないかどうかを確認できます。警戒レベルの意味(3=高齢者等避難、4=避難指示、5=緊急安全確保)を理解しておくことが重要です。
こちらの記事では、2026年梅雨時期より運用開始予定の新たな防災気象情報や警戒レベルについて詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
【関連記事】【解説】防災気象情報と気象業務法の改正で何が変わる?ポイントと避難判断の新基準
ハザードマップポータルサイトで、自分の家や会社が浸水するかもしれない場所に入っているかどうかチェックしましょう。どのくらいの深さまで水につかる可能性があるか、避難場所はどこか、避難経路はどうなっているかなどもあらかじめ知っておき、家庭や職場で共有しておくことが大切です。平らな場所に雪がなくなっても、山にはまだ雪が残っている場合があるため、しばらくは注意が必要です。
非常用持ち出し袋を用意し、水や食料、よく使う薬などを入れておきましょう。断水や停電になったときの対策も検討しておくことが望まれます。また、家の周りの溝や排水口を掃除しておくと融雪期に水があふれるのを減らせます。
融雪洪水も含め災害への備えは、日頃からの確認や小さな対策の積み重ねが欠かせません。急に気温が上がったり大雨が降ったりするときは川に近づかず、自分の安全を一番に考えて行動しましょう。

融雪洪水のリスクが高まった、あるいは発生したという知らせがあった場合、以下の注意点を念頭に行動してください。
避難するときは、長靴より滑りにくいスニーカーを選び、できるだけ誰かと一緒に行動しましょう。指定された避難場所のほか、近くの丈夫な建物の上など、その時にもっと安全な場所を選ぶことも大切です。旅行や出張で来ている方も、滞在先の川の情報や土地の特徴を確認し、自治体の指示に従って行動しましょう。
融雪洪水は、積雪量の多さに加え、急な気温上昇や降雨が重なることで起こりやすくなる春特有の災害です。大雪となった年は雪に含まれる水の量も多いため、融雪期には河川水位の上昇に一層の注意が必要です。全ての地域で被害が出るとは限りませんが、最新の天気や川の情報を確かめ、普段からできる範囲で備えておきましょう。
【参照】
気象庁|洪水、大雨浸水に関する用語
国土交通省 北陸地方整備局|融雪洪水
北海道幌延町|春の気象災害 融雪洪水となだれ
防災ニッポン|雪解けの時期は災害に注意! 災害の種類や防災について解説
農林水産省|融雪出水期に備えるための予防減災情報
総務省消防庁|融雪出水期における防災態勢の強化について
SUPPORT
ご支援のお願い
支援が必要な人々のために
できること
私たちの活動は、全国のみなさまのご支援・ご寄付によって支えられています。
一秒でも早く、一人でも多くの被災者を助けるために、空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”へのご寄付をお願いいたします。