JOURNAL #3422024.05.16更新日:2024.05.17
広報・カメラマン:越智 十希夫
大規模災害が起きると、被災地では道路の損傷や土砂崩れなどによって陸路が寸断されることがあります。その結果、必要な物資や医療支援を迅速に届けることが難しくなり、未治療死などの災害関連死が増えてしまう可能性が高まります。
この問題を解決するために、ピースウィンズ・ジャパンでは陸路やヘリコプターによる空路に加えて、海路からも被災地にアプローチできるように、日本初の「民間災害医療支援船 “Power of Change(PoC)”」 を導入し準備を進めています。
海路も活用することでより幅広い支援の展開が可能になる一方、船での仕事は多くの危険が伴います。船で被災地のためになにができるのか。なぜ命をかけて、人を救う仕事をしているのか。大規模災害に備え、訓練中のPoC船長の杉本陸に聞いてみました。
もともと国連職員になりたくて、県内の進学校を目指していましたが、受験に失敗したことをきっかけに人道支援の道を一度あきらめ、手に職をつけるため船乗りの学校に入学しました。
ちょうどその頃、東日本大震災とシリア内戦が起こり、多くの命が失われていくのを目の当たりにしました。船乗りの学校にいる間にも問題は解決されず、自分に何かできないのか、考える日々が続いていました。
東日本大震災のあと、学生だった私は練習船で三陸沖に出る機会がありました。その日の海はとても静かだったことをよく覚えています。でも、いつも夜は陸岸の灯りが海から見えるのですが、三陸沖では広い範囲が暗闇に飲み込まれていました。津波がもたらした被害に改めてショックを受けましたが、それと同時に「どの海も繋がっているんだ」と思ったんです。
その後、船員学校を卒業して、世界中を回ったことで、やっぱり海は繋がっていて、自分が今までいた場所とも繋がっていることを実感しました。その想いから船員としてNGOに関わる仕事ができないかと考えていたところ、ピースウィンズのこの災害医療船のプロジェクトの話があり、船員として関わることになりました。
船乗りには“シーマンシップ”という世界共通の暗黙のルールみたいなものがあります。例えば、海で溺れている人を見つけたら必ず助けることもそのルールのひとつです。大きな災害や紛争が起きたとして、たとえそれが世界の裏側であっても、海は繋がっていて、船と燃料と仲間さえいれば、どこにでも行くことができます。
自分たちがたどり着ける、そこでできることがあるということは、やらなきゃいけないんだ。そんな想いに突き動かされながら、この活動を続けています。
大きな災害がくると、社会みんなが被災してしまいます。しかし、被災地に対してそのみんな一人ひとりは、何かしら被災地のためにできることを持っています。町の電気屋さんであれば、その技術を避難所で発揮することができるかもしれません。私は船乗りで、船を動かすことができる。
能登半島の震災では、陸路が寸断され物資の輸送に課題を抱えていたなかで、海路からルートを確保し大量の物資を被災地に届けました。そのほかにも断水が続く被災地でスタッフにシャワーや食事を提供するなど後方支援としても船を活用し、災害地における船の有用性、可能性を示すことができたと思っています。
一人ひとりになにかしらできることが必ずあります。そうしたみんなが力を合わせて困難に立ち向かう世界を目指して、これからも活動を続けていきたいと思っています。
ピースウィンズ・ジャパンは、マレーシアで長い間使われていなかった大型調査船を修繕し、災害医療支援船 “Power of Change(PoC)”として再始動させました。
PoCはヘリコプターとも連携し、災害時には物資の運搬をはじめ、災害医療や宿泊場所の提供などの支援を行います。キャパシティが大きく、トラックなどよりもはるかに大量の物資を運べるほか、中長期にわたる支援が可能です。
ピースウィンズでは、世界に平和を届ける災害医療支援船”Power of Change”を一緒に動かし、活動する船員を募集しています。私たちとともに世界中を駆け回り、洋上から困っている人を助けませんか?
WRITER
広報・カメラマン:
越智 十希夫
高校時代は映像作家。大学時代はプロのラッパーとして活動。2024年に慶應義塾大学を卒業後、ピースウィンズ・ジャパンに入職。音楽活動を続けながら、広報、カメラマン、イベント立案などに携わっている。
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