JOURNAL #1082024.05.18更新日:2024.05.18

ソフト防災で災害への意識を高めよう!具体的な方法とポイントを解説します

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

地震や津波、台風や豪雨、火山の噴火など、日本は様々な災害と隣り合わせの日々を送っています。災害発生時に身の安全を確保するには日ごろからの防災意識が欠かせません。そんななか、防災にも『ソフト防災』という分野があり、近年注目を集めています。 今回の記事では、ソフト防災の概要やメリット・デメリット、『ハード防災』との違い、個人でできるソフト防災について解説します。

ソフト防災とは?

まずソフト防災とは、地震や津波、豪雨、火山の噴火などの災害に対し、情報や訓練などの「無形」の方法で備えることです。具体的には、避難訓練やハザードマップの作成、土地利用の規制、防災マニュアルの作成、日ごろからの情報の活用などが該当します。

ソフト防災は、いわゆる堤防の整備や建物の耐震化のように物理的な対策を伴わないため「ソフト」と呼ばれていますが、このような防災には深い意味があります。
例えば、普段から避難訓練やハザードマップなどを通じて災害への意識を高めておくと、実際に災害が起きた時に素早く行動に移すことができます。また、地震が起こりやすい地域や建物を知っておくことで、安全性の高い物件選びの判断基準ができ、災害からご自分やご家族を守ることにつながるケースも多いです。

ハード防災

ソフト防災と対になる防災方法に、『ハード防災』があります。
2つの違いは、ソフト防災が無形の方法で災害に備えるのに対し、ハード防災は有形、つまり物理的な方法で対応するという点です。例を挙げると、堤防の整備や津波防波堤、なだれ予防柵、砂防坊鄭、建物の耐震化などがあります。
ハード防災もソフト防災と同様に、防災のためには非常に重要な対策です。堤防や津波防波堤が設置されていると、津波や水害による被害を抑えられます。また建物の耐震が進んでいると、地震が起きても人的被害を軽減することができます。

ソフト防災とハード防災の違いをまとめた画像

ソフト防災のメリット・デメリット

ソフト防災にはメリットがある一方でデメリットもあり、適切な防災につなげるには両者を理解した上での行動が欠かせません。ソフト防災のメリットには、以下のようなメリットがあります。

コストが低い

堤防の整備や建物の耐震化のようなハード対策には膨大な費用がかかりますが、ソフト防災では防災知識やハザードマップの作成が主な行動となるため、ほとんど費用がかかりません。多くのケースでハザードマップが無料で配られており、また防災イベントも無料または参加できるケースが多いことから、気軽に防災への意識を高められます。

災害への知識を深め、適切な行動を学べる

さらに日ごろから防災への意識があると、いざという時に素早く適切な行動ができ、被害を軽減させることもできます。そう言った意味では、ソフト防災は常に視野に入れておくといいでしょう。

反対に、ソフト防災には、以下のようなデメリットもあります。

  • 直接的に命を救うことはできない
  • 想定外の災害には対応できない

災害に対する知識や意識は欠かせないものですが、直接的に人命を守るにはやはりハード対策が必要です。また日ごろから防災への意識を維持できていても、実際に災害が発生してから事態が予想と異なり、パニック状態に陥ることもあります。

ただし、このようなデメリットはソフト防災の特徴であり、決して悪いものではありません。「ソフト防災ではハード防災のように、物理的に震災に備えることは難しい」と思われることも多いですが、「着工と完成までに時間と予算がかかる」「想定外の震災に対応できず、堤防や防波堤が損壊することもある」など、ハード防災にもデメリットがあります。
そう考えると、ソフト防災にもハード防災にもメリットとデメリットがあり、また両方とも必要なものです。2つの特徴を知ったうえで活用することで、理想的な防災につながります。

ソフト防災の具体的な行動

ここからは、避難訓練やハザードマップの作成をはじめとするソフト防災の具体的な行動について解説します。

避難訓練

避難訓練は、地震や津波などの災害時に対する訓練です。災害が発生した時、心理的なパニック状態を抑えたうえで適切な避難につなげ、また人命を守ることを目的としています。避難訓練は主に学校で生徒や教師が一体となって行うイメージが強いですが、社会人でも参加できる訓練もあります。防災の日や自治体が設定する日に開催されていますので、積極的に参加すると良いでしょう。

静岡地域での防災訓練の様子

ハザードマップの作成

ハザードマップとは、災害による被害を軽減するため、被害が想定される区域や避難場所・経路などの防災関係施設を表示する地図のことです。具体的には、以下のような種類があります。

  • 地震防災マップ
  • 土砂、洪水ハザードマップ
  • 内水ハザードマップ
  • ため池ハザードマップ
  • 液状化ハザードマップ
  • 津波・高潮ハザードマップ
  • Webハザードマップ

まず地震防災マップは、地震による震度や被害の大きさなどを想定して作られます。内閣府が公表する『地震防災マップ作成技術資料』に基づき、地盤状況や震度、危険度などがとりあげられるケースが多いです。
土砂・洪水ハザードマップでは、土砂災害警戒区域、特別警戒区域、洪水浸水想定区域のハザードマップがあります。台風や突発的な土地の動きによって土砂崩れや洪水が起きやすい区域には、欠かせない地図と言えるでしょう。ほかにも、豪雨の多い地域には『内水ハザードマップ』、堤体の決壊リスクが高い地域には『ため池ハザードマップ』、地域ごとの液状化発生傾向や危険度を分析した『液状化ハザードマップ』、海岸沿いの区域には『津波・高潮ハザードマップ』など、それぞれのリスクに合わせたハザードマップが作られます。

ハザードマップは紙面での地図で見られると考えられがちですが、インターネット上で見ることも可能です。国土交通省による『ハザードマップポータルサイト』では、パソコンやスマートフォンから地域ごとの危険性や避難経路などを確認することができます。いざという時のためにも、Webハザードマップでご自身が住む地域に起こりやすいリスクを知っておくことをおすすめします。

防災マニュアルの作成

家庭や学校、企業などで、災害時の被害状況や危険度に合わせた行動指針をマニュアルとして作成することも重要なステップです。避難訓練やハザードマップでも災害に備えることができますが、さらに細かな行動を想定・指定するにはマニュアルが欠かせません。マニュアルの作成と同時に定期的に読み、必要な情報を仕入れておくことで、緊急時にも冷静に行動できるようになります。

情報の活用

避難情報や防災情報、気象情報などの確認をすることも、ソフト防災として非常に役立ちます。地域や学校、企業などでは、該当地区の避難情報などを公開しているため、必ず確認しましょう。また防災情報は、所属する地域で起こりやすい災害や備えるための行動を知るのに適した手段です。さらに気象情報は、大雨や台風などの自然災害に十分に備えるために必要です。天気が荒れることを数日前に知っておくことで、避難先の確保や備蓄ができ、パニックにならずに行動できるようになります。

土地利用規制

土地利用規制とは、災害などのリスクが高い地域に対し、住居や事業所、または通行などの使用を制限する仕組みのことで、特に土砂崩れ・津波への対策として全国的に取り入れられています。都道府県知事が、土砂崩れの危険性のある地域での土地開発を禁止したり、津波の恐れのある地域には病院や福祉施設を建設しないよう指定したりしています。
一般の方々にとってはあまり馴染みのない規制かもしれませんが、防災レベルを知るために、例えば家を建てたい土地・今の居住地が特別警戒区域に該当しているかどうかを調べてみると良いです。

熊本地震での道路被害の様子

個人でできるソフト防災

ソフト防災の具体例を見ていくと、家庭や企業、自治体などの組織で行われるイメージが強いですが、個人で取り組むことも可能です。以下、個人でできるソフト防災について解説します。

避難訓練・防災訓練への参加

市や自治体が定期的に開催している避難訓練や防災訓練は、個人での参加も受け付けています。中には当日参加を受け入れているところもありますので、積極的に参加すると良いでしょう。
地域が開催する避難訓練や防災訓練に参加するメリットは、災害への備えができることはもちろんですが、周囲との協力関係を構築できる点です。特に地域で開催される避難訓練や防災訓練には、近所に住む人が参加しているケースも多いです。そこで一緒に避難訓練や防災訓練をすることで、いざという時の関係性ができ、お互いの家族を救うことにもつながるでしょう。

備蓄品の用意

実際に災害が起きてからの生活を考えることも、ソフト防災の一環です。多くのケースで、災害が起きると数日間は食事やトイレ、入浴などのライフラインが遮断されることを考えると、数日間分の備蓄が必要です。具体的には、以下のようなものがあります。

  • 数日分の食料品(ビスケット、缶詰、レトルト食品など)と飲料水
  • 衣類、履物
  • 簡易ライター、カセットコンロ、電池式の充電器
  • 救急用品、衛生用品、生理用品
  • 現金(2万円ほど)、預金通帳、印鑑、貴重品
  • 寝袋、毛布、雨具

女性の観点での防災について紹介している記事や、ペットを飼われている方に向けた備蓄に関する記事もありますので、参考に見てみてください。

ハザードマップの確認

地震や津波、土砂崩れや大雨など、日本は常に災害と隣り合わせの状態にあります。だからこそ、住んでいる地域の安全確認をするためにも、ハザードマップを確認しておきましょう。起こりやすい災害や特に危険とされる地域、災害発生時の避難経路など、詳しく記載されています。最近ではパソコンやスマートフォンでも確認できることから、普段から見ておくことが理想です。

防災アプリ

『防災アプリ』とは、パソコンやスマートフォンのアプリで災害の情報や避難情報、必要な行動などを教えてくれるツールです。ダウンロード後、ユーザーの居住地や近隣を基準とした情報を提供してくれます。また、災害発生時のアラート・家族や友人の安否確認・避難を判断するための情報なども伝えてくれるため、個人だけでなく家族や友人にも呼び掛けて活用してみましょう。

東京都防災アプリの例
東京都防災アプリ

現在では防災アプリの普及が進み、企業や地域などが参入した結果、30以上までに増えています。そのなかで良いものを選ぶのは容易ではありませんが、信ぴょう性が高いものを判断基準としましょう。特に大企業や県、市などが展開する防災アプリなら、信憑性、機能性と共に優れています。

避難情報、気象情報のチェック

個人でできるソフト防災で最後に大切なポイントは、避難情報や気象情報のチェックです。
避難訓練や防災訓練、ハザードマップなどで防災意識を高めるのはとても大事なことですが、一時的な活動で終わらせず、可能な限り災害情報を常に確認することで、いざという時にも適切な避難行動ができます。ハザードマップや防災アプリを定期的に確認する、気象情報で大雨や台風に備えるなど、事前にできることには取り組んでおきましょう。

また、家族で防災への意識を高めることも重要なポイントです。家族での会話や家族会議に避難や防災の話題を取り入れる、備蓄品を一緒に用意するなどで、災害時のための足並みをそろえると良いでしょう。
さらには、近年ではインターネットから防災に役立つ記事が多く掲載されています。防災の専門家による情報や被災者の体験談による避難のポイントなど、リアルな視点から情報を得られますので、この機会に触れてみましょう。

まとめ

ソフト防災とは、地震や津波、台風などの災害に対し、避難訓練・防災訓練やハザードマップの作成、備蓄品の用意、防災アプリの活用など、「無形」で備える対策を意味します。堤防や防波堤の整備、建物の耐震化のような『ハード防災』とは異なりますが、災害発生時に適切な避難行動をするため、そして個人レベルで災害に対応するためには必要不可欠です。ハード防災のメリット・デメリットと合わせ、震災への意識や危機感を維持することで、自分や家族を危険から守れるようになります。

またソフト防災は、団体レベルでも個人レベルでも行うことができます。団体レベルなら、避難訓練や防災訓練への参加、家族間でのコミュニケーション、個人レベルならハザードマップの確認や防災アプリの活用など、できることは非常に豊富で、金額的な負担もかかりません。個人で意識を高めることはもちろん、家族や親戚、友人などに情報を共有し、救える命を少しでも増やしましょう。
今回の記事がソフト防災への知識を深め、いざという時に少しでもお役に立てることを願っております。

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