JOURNAL #3482024.06.17更新日:2024.06.25
広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
災害ボランティアは被災地支援の大切な一環です。多くの方々が関心を寄せていますが、意欲だけで現地に赴くと、逆に迷惑をかけてしまう場合もあります。
この記事では災害ボランティアの基本と注意点を解説しつつ、誰もが適切に被災地を支援できるようサポートします。また、災害ボランティアセンターの役割と現状も紹介し、実際のボランティア活動をイメージしやすくお伝えします。紹介する内容は、ボランティア活動をする上で知っておきたい情報ばかりです。ぜひ最後まで読んでいただき、被災地や被災した方々を真にサポートできる活動に役立ててください。
そもそもボランティアとは自発的な意志に基づいて他人や社会に貢献する行為を指します。災害ボランティアは、特に地震や風水害、土砂崩れなどで被災した方々を支援する行為であり、近年、ボランティア活動の範囲と参加者の層が拡大しています。
災害ボランティア活動は、災害発生直後から復興に至るまで、被災者のニーズに対応した直接的な復旧支援を行う活動です。その活動は、がれきの撤去や分別、泥だし、室内清掃、引越しの手伝い、物資の仕分け、炊き出し、心のケア、イベントやサロン活動支援など多岐にわたります。
一般の方々が個人として参加する個人ボランティアもあれば、企業やNPOなどとして参加する団体所属ボランティアもあります。
我々空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”のスタッフは、令和6年能登半島地震の被災地である石川県珠洲市を複数回訪問し、現地で活動するボランティアの方々の様子を見てきました。
活動内容としては、発災からしばらくの間は家屋の片づけや海岸沿いでの土砂の掃き出しなどが主で、半年ほど経過した後は、半壊した家屋などを解体し、がれきを細かく砕いて搬出する作業が進行していました。
災害ボランティアの活動内容は、災害の内容や規模によっても異なります。また、ボランティアに参加する方々の経験や希望に応じて、作業内容をある程度選定しているケースもあります。被災地のボランティア活動に参加する場合は、その都度、各自治体や災害ボランティアセンターのホームページに記載されている情報を確認することが重要です。
住民の約60%が高齢者である珠洲市の一部地域では、自力で家屋の片付けができない人が多数いたため、ボランティアが来てくれたことで「大変助かった」との声が寄せられていました。また、災害ボランティア活動は単なる支援活動にとどまらず、地域内外の結束を高めることで、被災地域や住民の力強い支えにもなります。災害ボランティアは責任のある立場でもありますが、確実に価値のある取り組みです。
被災地外からの支援が必要な場合には、災害ボランティアセンターが設置されるのが一般的です。センターは被災地のボランティア活動を円滑に進めるための母体として設置されるもので、ボランティアの募集、派遣、資機材の調達管理などの業務を担い、被災地のニーズに応じた柔軟な対応が求められています。
災害ボランティア活動が注目された阪神淡路大震災では約137.7万人のボランティアが被災地に駆けつけましたが、初めてのボランティア参加者も多く、さまざまな混乱が生じました。その反省から、災害発生時には、被災地でのボランティア活動を円滑に進めるために災害ボランティアセンターが設置されることとなりました。
一般的には、被災地域の社会福祉協議会や日頃からボランティア活動に携わっている方々、そして行政が協働して運営をおこないます。災害の大きな被害が発生した際には、ほとんどの被災地で災害ボランティアセンターが設置されています。
災害ボランティアに参加する場合は、ボランティアセンターの役割や仕組みを理解することが重要です。以下にその役割と活動内容について詳しく解説しますので、しっかり確認しましょう。
災害ボランティアセンターの役割や活動内容については以下になります。
災害ボランティアセンターは、地域の実情をよく知る地元関係者やチラシの各戸配布などを通じて被災者のニーズを収集します。また、機動性のあるバイク隊の派遣などをおこない、直接被災者のニーズを聞き取ることもあります。
被災地の状況を見て、ボランティア希望者の受け入れを調整します。ボランティアの応募者に対して受付業務をおこない、被災地の状況を適切かつ迅速に伝えます。また、特設サイトを通じて必要な準備物や注意事項についてボランティア参加者に提示することも重要な役割です。
実際のボランティア活動を効率的に進めることは被災地の復興にとって大切なポイントです。円滑な活動のために、被災地の地図や必要な資機材は災害ボランティアセンターが準備して貸し出す場合があります。
被災者の要請に基づいてボランティアを派遣します。活動現場への交通手段の手配を進め、場合によってはボランティアバス(ボラバス)を用意するなど、ボランティアがスムーズに活動できるようサポートします。
活動終了後はボランティアからの気づきや被災した方々の声などを集約し、その後の活動に活かします。改善すべき点があれば、センターの運営者やスタッフと話し合い、対応策を考えます。
災害ボランティアセンターは被災地のボランティア活動をスムーズに進めるために欠かせない存在です。ボランティア活動に関わる必要な情報を集約かつ整理し、被災者と支援者双方にとって効果的な活動をサポートする母体といえます。
より詳しく知りたい場合は、内閣府防災情報のページ特集「防災ボランティア」と「防災ボランティア活動をサポートする 災害ボランティアセンターとは?」に記載されている内容を参考にしてください。
令和6年能登半島地震によって大きな被害を受けた自治体の一つ、珠洲市でも災害ボランティアセンターを開設しています。ここでは珠洲市災害ボランティアセンターが特設サイトで提示している内容をもとに、災害ボランティアセンターの活動についてより具体的に解説します。特設サイトでは、ボランティアの依頼と申込に関して詳しい情報を提供しています。
被災地の復興状況に合わせて、その都度、必要なボランティアを依頼します。例えば2024年6月現在では、以下の内容を住民の方々に案内しています。
ボランティア活動を希望する個人の方は、石川県県民ボランティアセンター特設サイトにて事前登録をおこなう必要があります。10名以上の団体ボランティアの場合は、注意事項を確認して「団体ボランティア活動予約フォーム」に必要事項を入力して申し込みます。特設サイトでは、珠洲市のほか輪島市や能登町など各自治体の募集要項が提示されており、たとえば以下の内容が確認できます。
※ボラバスとはボランティアバスを指し、無償で現地との往復運航をおこなう
なお、珠洲市のようにボラバス導入地域では宿泊施設の案内は難しいため、バスが発着する金沢市内のホテル等に泊まってボランティア活動をおこなうこととなります。
ここまで、災害ボランティアの概要と災害ボランティアセンターの詳細について説明しました。以下より、実際にボランティア活動に参加するために必要な事項について順を追って解説します。
被災地の最新状況や必要な支援内容を確認することが最初のステップです。災害発生後、数日から1週間で災害ボランティアセンターが立ち上がります。ボランティアへの参加を希望する場合は、インターネットで「地名 社会福祉協議会 ボランティアセンター」等のワードで検索し、受け入れ状況を確認してください。また、全国社会福祉協議会の被災地支援・災害ボランティア情報のホームページも便利な情報源です。
情報収集では以下の内容を確認することが推奨されます。
災害が発生した際には迅速な対応や支援が求められますが、ボランティアの受け入れ態勢が整う前に個別に被災地に入ることは避けましょう。なお、情報を収集する際は、以下の点に注意しましょう。
適切な情報源を通じて正しい情報を収集することが重要です。
被災地には全国から多くのボランティアが集まりますが、準備不足で参加すると逆に迷惑をかけてしまいます。災害ボランティアとして、事前の心構えを確認することは何より大切です。たとえば、以下の内容を念頭におきましょう。
ボランティアに熱心なあまり、自分の経験による判断を押し付けないように注意しましょう。さらに、健康管理に注意を払い、すべて自分でまかなう姿勢を忘れないようにします。それは往復の交通費や宿泊先の確保、水や食料、薬、着替えの持参なども含まれます。活動中に調子が悪くなった場合は活動を止める勇気をもつことも重要です。
事前の心構えを確認しない場合、現地スタッフや被災者に迷惑をかけることになります。珠洲市に向かった空飛ぶ捜索医療団のスタッフの話によると、災害ボランティアセンターの募集や業務の割り振りを確認しなかった方々がおり、ボランティアセンターの方々が困ってしまうという事態もありました。
被災地の情報は市に集約され、その状況に合わせて「何月何日まで〇〇業務をしてくれる方」といった形で募集がかけられます。ボランティアに参加したい場合は、災害ボランティアセンターが提供する情報を正しく把握することが重要です。
また、勝手に現地へ訪問したり当日受付を求めたりするのはNGとなります。悲しいことですが、なかには心無い人たちがおり、ボランティアを装って泥棒に入ってしまったりする事件を防ぐためです。災害ボランティアに参加する場合は、こうした事情をよく理解し、自分だけの判断で行動に移さないようにしましょう。
事前登録は、被災地のニーズとボランティアの希望をマッチングし、スムーズに活動を進めるために必要な項目です。災害が起きた地域のボランティアセンター特設サイトや公式SNSなどで事前登録フォームを探し、必要事項を記入して送信します。災害状況や地域によって違いがあるため、その都度確認が必要ですが、一般的には以下のような手順でおこないます。
事前登録は被災地のニーズに応じた適切な人員配置に役立ちます。無駄な待ち時間を減らし、迅速かつ効率的な支援活動につなげるために必要です。登録は通常、Webサイト上でおこないます。
事前登録が完了したところで希望する活動日を予約します。災害ボランティアセンターの特設サイトで詳細内容と募集人員等を確認し、予約フォームに必要事項を記入して送信します。希望する日が既に予約で埋まっている場合、代わりの日程を調整します。
予約が確定するとセンターから確認の連絡が届きます。ただし、折り返しの連絡には2〜3日かかる場合がある点を考慮しましょう。予約が完了したところで、事前の準備を整えます。
ボランティアの申し込みと合わせて、持ち物を準備します。なお、被災地の状況やニーズによって異なる場合も考えられるため、災害ボランティアセンターの情報提供を隅々まで確認し、「少なすぎず、多すぎず」といった姿勢で準備を整えましょう。
まず、身支度については以下のとおりです。
一般的な持ち物としては、以下のようなアイテムが必要になります。
このほかに便利な持ち物として、ガムテープやカッター、レジャーシート、救急セットなどが挙げられます。作業に必要となるスコップやほうき、ちりとり、バケツなど必要な道具類は多くの場合、ボランティアセンターで貸し出し可能です。使い終わったらきれいに洗って返却しましょう。
準備の際には、保険加入を忘れないようにしましょう。加入方法は全社協ホームページで確認できます。加入方法には「最寄りの社会福祉協議会の窓口で直接申し込む方法」と「Webを通じて申し込む方法」の2つがあり、自己負担は350円(基本プランの場合)からで年度内有効です。
現地に向かったスタッフの話では、何も持たずに被災地へ向かったボランティアがいたようです。スーパーなどが営業をスタートしていても、流通が追いつかない地域では水や食料を購入することはできません。そのなかで、被災者の方々がボランティアに物資を提供している状況も見受けられました。災害ボランティアに参加する際は、自己完結型支援になるよう十分に準備を整える必要があります。
また、倒壊家屋に入るにはヘルメットや軍手、安全靴などの装備が必須となりますが、軽装で来てしまうボランティアの方もいらっしゃいました。災害ボランティアセンターが提供する情報をしっかり確認することがやはり重要です。
なお、心構えや準備物については以下の情報も参考になります。
参考:
・「十分な準備」全社協 被災地支援・災害ボランティア情報より
・【災害ボランティア】被災地へ向かう前に…どこまで自分で準備?心がけることは?【アベマで防 災】
・災害VCオリエン動画[事前の準備]
当日の災害ボランティア活動は、基本的には以下の流れでおこなわれます。
これらの情報を踏まえ、災害ボランティアセンターが提供する情報をしっかり確認し、自己完結型の支援を心がけることが大切です。
ここまで、災害ボランティアの基本や知っておきたい注意点などについて解説しましたが、最後にボランティア活動をよりスムーズに、効果的に推進するためのポイントを確認します。すでにお伝えした内容も含まれますが、どれも大切な内容です。ここでもう一度チェックしましょう。
支援者としての自覚をもつことは、被災者の立場に立ち、思いやりをもって行動することです。例えば被災者の方々を傷つけるような言葉遣いは避ける、作業前には土足の可否を確認するなどです。地域の習慣や文化に敬意を払いながら、柔軟に対応する姿勢も求められます。
また前述しているとおり、事前の準備を徹底し、現地に負担をかけないよう自己完結型の支援を心がけてください。自身の安全確保と健康管理も不可欠です。危険な地域での活動は避け、体調が悪くなったら無理をせずに中断する覚悟をもちましょう。
ボランティア活動では、常に災害ボランティアセンターの指示に従うよう心がけましょう。ボランティアセンターは災害時の支援法について理解しているだけでなく、地域の状況を具体的に把握している専門的な拠点です。ボランティアセンターの指示に従うことで、ボランティア活動を円滑に進め、効果的な支援につながります。反対に勝手な判断や行動は、他のボランティアや被災者に迷惑をかけるだけでなく、混乱を招く可能性があるため慎みましょう。
災害時には、支援者だけでなく受援者側の準備も大切です。受援者とは、支援を受ける側の被災者や地域住民を指します。被災地の方々に支援を受け入れる体制が整っていると、災害ボランティアの受け入れもスムーズに進み、スピーディな生活再建、災害関連死の減少などにもつながります。ボランティア活動を行う際には、過剰に気遣いをしたりせず、お互いさまの精神や双方の関係性を大切にする姿勢を持つことで、被災者の方々の受援力も高めると考えられます。
ボランティア活動の効果を高めたり改善したりするには、活動中の気づきや被災者からの声を共有する場を設けることも重要です。もちろんボランティアセンターや市の職員の方々は現地の状況に精通していますが、具体的な作業の中身までは手が回っていないケースもあるためです。たとえば作業の改善につながる意見として、がれき撤去の作業時はハンマーがあった方が効率が良かった、夕方になると手元が見づらくなったためライトがあると良い、などです。
ボランティアの気づきや現場の声を集約することで、今後の復興や防災、インフラ整備、ボランティア活動の円滑な推進に生かすことができると有益です。
災害ボランティアに参加できない場合でも、以下の方法で被災地を支援することが可能です。
このほかにも被災地の状況によりますが、地元経済を活性化させるために観光に訪れることも支援につながります。SNSを活用してメッセージを発信する場合は、デマや風評被害を防ぐことも念頭におきます。
災害ボランティアに参加できない場合でも、さまざまな形で被災地を支えることが可能です。できる範囲で支援をおこない、被災地の復興を応援しましょう。
珠洲市におけるボランティア活動について、2024年6月時点では、家の掃除が終わり解体のフェーズに移行しています。状況が少しずつ落ち着いてきていますが、今後も継続的な支援が必要です。災害ボランティアは被災地支援の中核を担いますが、意欲だけの参加では逆に迷惑になる場合もあります。情報収集と適切な準備をおこない、現地のニーズに応じた行動を心がけましょう。
また、ボランティア活動は被災者にとって大きな支えとなるだけでなく、参加者自身の気づきや成長につながります。経験を通じて地域の防災教育やコミュニティの強化に貢献することも可能です。この記事を参考にして、ご自身ができる活動を考え、継続的なサポートをおこなっていきましょう。
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