JOURNAL #3642024.09.11更新日:2024.09.11
広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
台風は毎年、私たちの生活に大きな影響を与えます。今夏8月に発生した台風10号は、非常にゆっくりとした進路をたどり、各地に大雨や強風、土砂崩れ、そして交通機関への影響など大きな被害をもたらしました。自然災害である台風に備えるためには、平時からの準備と冷静な対応が不可欠です。
この記事では、台風の定義や被害の特徴、そして台風の接近に備える具体的な対策について解説します。被害を最小限に抑えるために、台風への備えは「早めに」が基本です。記事の内容を確認し、いざというときの安全かつ迅速な避難につなげましょう。
ここでは、夏から秋にかけて日本列島に甚大な影響をもたらす台風について、気象庁が天気予報等で用いる予報用語をもとに詳しく解説します。台風への理解を深めるとともに、被害を最小限に抑えるための適切な備えについて明確にしていきましょう。
「台風」とは、熱帯の海上で発生する強力な低気圧で、風速が17m/s(34ノット)以上のものを指します。赤道より北の北西太平洋や南シナ海で発生し、一般に低緯度では西へ進み、北上する際には偏西風(西風)の影響で北東へ移動します。
台風の強さ | 最大風速 | |
強い | 33m/s以上~44m/s未満 | ・人は何かにつかまらないと立てない ・車を通常の速度で運転することが困難になる |
非常に強い | 44m/s以上~54m/s未満 | ・細い木の幹が折れ、倒れ始める・看板が落下・飛散する ・固定の不十分な金属屋根の葺材がめくれる |
猛烈な | 54m/s以上 | ・屋外での行動は極めて危険 ・走行中のトラックが横転する ・樹木、電柱、街灯が倒れる。 |
風速や強風域の半径で分類されるのが、台風の「強さ」と「大きさ」です。強さは風速に基づいており、最大風速が33 m/s以上で「強い(台風)」、44m/s以上で「非常に強い(台風)」、54m/s以上で「猛烈な(台風)」と表現されます。大きさは、風速15m/s以上の範囲で分けられ、大型になると半径が500~800 km、超大型は本州全域が入る大きさで800 km以上となります。
また、台風は主に夏から秋にかけて発生し、地域ごとの影響は異なるため、進路や強さの情報に注意することが重要です。
台風による災害は多様であり、主に以下のような被害が考えられます。ここでは、気象庁の情報を基に、それぞれの災害の特徴を解説します。
強風や暴風が主な原因です。特に台風の進行方向の右側では強風が吹きやすく、樹木や建物の倒壊、屋根の飛散などの被害が発生しやすい傾向があります。
台風による高潮、洪水、波浪の被害が含まれます。海や湾に面した地域では、低気圧による海面の上昇や暴風によって引き起こされる波の激化が、大波や高潮をもたらす場合があります。特に都市部では内水氾濫(排水不要による浸水被害)も発生する可能性があるため、どの地域でも注意が必要です。
豪雨によって山や崖が崩れやすくなり、山崩れや地滑りが発生します。これにより道路や鉄道、住宅が被害を受ける可能性があります。
高潮は、強風による「吹き寄せ効果」や、気圧の低下による「吸い上げ効果」によって発生します。
「吹き寄せ効果」とは、強風で海水が陸に押し寄せ海面が上昇する現象です。風速が2倍になると海面上昇が4倍になるとされています。
一方「吸い上げ効果」は、台風の低気圧によって海面が持ち上がる現象です。気圧が1hPa(ヘクトパスカル)低下するごとに、海面は約1cm上昇するといわれています。
これらの効果が重なることで海面は一層上昇し、沿岸地域への被害がさらに増大するリスクがあります。自然の力に対して人間の力は限られており、完全に被害を避けることは困難です。しかし、事前に適切な備えを行い、被害を最小限に抑えることは可能です。
次章では、具体的な対策や備えについて詳しく解説します。私たちがいかにして自然災害に対処すべきかを一緒に確認していきましょう。
台風への備えは、日頃からしっかりと準備を整え、台風やその他の災害に対する備えを万全にすることが重要です。以下に紹介する備えを参考にしてください。
避難情報を素早く得るために、防災アプリをダウンロードしておきましょう。一人暮らしの高齢者などが使い方に不安を感じる場合は、家族がサポートすることが大切です。「避難指示」や「避難勧告」の意味や適切な避難のタイミングを一緒に確かめておきます。
また、万が一に備えて東日本NTT災害用伝言ダイヤルあるいは西日本NTT災害用伝言ダイヤルの使い方を事前に確認しておくことも推奨されます。
【関連記事】避難情報とは?警戒レベルの概要と実際の避難につなげるポイントを解説
次に、ハザードマップを用いて避難ルートを確かめます。自宅や勤務先周辺のハザードマップを確認し、浸水や土砂災害のリスクがある場所を把握しておきましょう。避難経路や避難所の位置もチェックし、印刷しておくと安心です。さらに浸水被害が予想される場所では、土のうや水のうなどの備えも推奨されます。
なお、ハザードマップをチェックしたい場合は、こちらの「ハザードマップポータルサイト」が便利です。住所や郵便番号、地域検索で簡単に確認できます。
防災グッズや備蓄品の備えも欠かせません。必要な防災グッズや備蓄品をリスト化し、家族全員で共有します。特に高齢者、妊婦、乳幼児、障がい者がいるご家庭では、それぞれの状況に応じた物品を準備することが重要です。
非常食については、長期保存可能なものを選び、定期的に消費しながら補充する「ローリングストック」方式を取り入れると、常に新しい備蓄を保てます。
【関連記事】防災グッズを見直そう|負担感のない安心安全な備え方とは?
また、家の周りの点検や補修を行うことも大切です。家の周りを点検し、飛ばされやすい物や水はけの悪い箇所を改善します。以下のポイントを定期的にチェックしましょう。
事前にこれらを確認しておくことで、災害時の被害を最小限に抑えます。また、シャッターや雨戸の設置、屋根やカーポートの補修など、防災対策リフォームを検討することも推奨されます。
日頃から近隣の人々とのつながりを大切にしましょう。近隣住民とのコミュニケーションを深め、助け合いの体制を整えておくことが重要です。特に高齢者や体の不自由な方がいるご家庭では、地域でのサポートが大いに役立ちます。
これらのポイントをしっかりと確認し、備えを万全にすることで、台風や災害が発生した際にも冷静な対応につながります。
台風の接近が実際に予想される場合、以下の準備を早めに行って万全に備えましょう。
台風情報を頻繁にチェックし、最新の気象情報や警報を把握します。特に気象庁の会見や特別警報の発表を注視し、必要な対策を早めに取るようにしましょう。
自宅周辺のリスクを把握するためにハザードマップや避難経路、危険エリアを再チェックします。また、非常時に必要な物品をチェックし、不足しているものがないか確かめます。特に水や簡易トイレなどは売り切れになる可能性があるため、やはり日頃からの備えが重要です。
ベランダの物干し竿や植木鉢など、強風で飛ばされる恐れがある物を家の中に入れます。雨どいや側溝に落ち葉やごみが詰まっていないか確認し、水はけをよくしておきましょう。また、浸水被害に備えて土のうを積むなどの準備も行います。
断水や停電に備えることも大切。湯船に水を満タンにし、飲料水も確保しましょう。懐中電灯や予備の電池、スマートフォンの充電器、ろうそくなどを準備しておくことが重要です。また、クーラーボックスや冷凍庫の保冷剤を活用し、停電時の食材保存や熱中症対策に役立てましょう。
「避難指示」の発令を想定して、自宅や勤務先の近くにある避難所を確認し、避難ルートを把握しておきます。非常用持ち出しバッグの中身を再チェックして、必要な物品を補充しましょう。
非常時に備えて、同居家族だけでなく一人暮らしの家族との連絡確認も重要です。緊急時の行動について家族と話し合い、避難場所や連絡方法を決めておきます。NTT災害用伝言ダイヤルの使い方も確認しておくと役立ちます。
車のガソリンを可能な限り満タンにしておきましょう。また、仕事の予定や外出の必要性を見直し、調整することも検討してください。
これらの備えを2〜3日前に行うことで台風接近時に慌てずに対処できます。
台風が接近している前日にも、最新情報を常にチェックしておくことが重要です。以下の点を確認し、特に避難のタイミングを逃さないよう注意しましょう。避難の必要がない場合でも適切な行動が求められます。
気象庁や自治体が発表する「大雨警報」「土砂災害警戒情報」「避難指示」などの情報にアンテナを張り、防災アプリやテレビ、ラジオ等を活用して情報収集を行いましょう。特に「避難指示」が発令された場合、すぐに避難を開始することが大切です。また、避難に時間がかかる高齢者や障がい者、子どもがいる家庭では、「高齢者等避難」のタイミングで早めの避難を心がけてください。
【関連記事】避難情報とは?警戒レベルの概要と実際の避難につなげるポイントを解説
シャッターや雨戸は下ろし、雨戸やシャッターがない場合は、窓に飛散防止テープやフィルムを貼ることで、ガラスが割れるリスクを軽減できます。飛散防止テープやフィルムなどが間に合わない場合は、カーテンの端を止めたり、シートやビニール、段ボールをガムテープで固定したりします。カーテンも閉めておくとガラスが割れた際の飛散を防ぎます。
特に浸水のリスクが高い地域では、夜間の大雨によって、寝ている間に家が浸水する恐れがあります。「たぶん大丈夫」といった過信を避け、台風の夜には家族全員が2階以上で就寝することを心がけてください。
台風が最接近している場合は、無理な外出や避難は命を落とすリスクを高めます。以下の内容を確認して身を守ることを最優先してください。
暴風雨の中で外出することは非常に危険です。無理に外出や帰宅、出勤をしないようにし、安全な場所で待機しましょう。
台風接近時に車で移動すると、冠水や土砂崩れに巻き込まれるリスクが高まります。過去の台風では、屋外で被災した人の約40%が車内にいたというデータもあります。浅い水深でも車は流されやすいため、運転は控えましょう。
【参照】日本放送協会|台風がくる!大切な命を守るために
洪水や浸水のリスクがある地域にお住まいの方は、避難所へ行く時間がない場合、垂直避難を選択しましょう。2階以上の高さで、斜面や崖から離れた部屋に移動することが推奨されます。近くに頑丈な建物があり、避難のタイミングが間に合うのであれば、そちらの上の階に避難するのも有効です。
【関連記事】垂直避難とは?もしもの時の避難方法と事前準備について解説します
窓やドアはしっかり施錠し、ガラスが割れる恐れがあるため、窓から離れて安全な場所に避難しましょう。
通勤や帰宅途中で被災した人も多く、無理な出勤や帰宅の指示は避けることが重要です。会社側でも安全を優先し、従業員に不要な外出を指示しないようにしましょう。
以上、平時から台風最接近までの各段階に応じた対策について解説しました。台風が接近し、外出が困難な状況では、備えが間に合わないこともあります。日頃からしっかりと準備を整えておき、台風が近づいた際には冷静に適切な対応をとることが大切です。
台風通過後にも、さまざまな危険が潜んでいます。台風直後は片づけ中の事故やケガが多く、屋根からの落下物やがれき処理中のケガ、停電による自家発電機の使用での一酸化炭素中毒、冷房のない状況での熱中症等も深刻な問題です。これらのリスクに対処するためには、冷静な行動と、周囲の人や専門家、ボランティアの支援を受けることが重要です。
また、台風後には土砂災害や洪水の二次被害の危険もあります。土石流発生の恐れのある「土砂災害警戒区域」や「土砂災害特別警戒区域」に住んでいる場合は、地盤が緩んでいる可能性があるため、自宅に戻る際は慎重に行動しましょう。
家屋の被害確認では、ガス漏れや電線の損傷に注意し、通電火災(電力復旧時に発生する火災)のリスクを防ぐために家電のプラグを抜いておくことが推奨されます。
保険に関しては、事前に火災保険や地震保険の補償内容を確認し、風水害や土砂災害に対応しているかを把握しておきましょう。保険加入者は、被害状況の写真を撮り、罹災証明書や保険申請に備えておくことが必要です。片づけ中のケガや熱中症には十分注意し、安全第一で行動してください。
最近では、山間部だけでなく都市部でも土砂災害が頻発しています。こちらの記事では、土砂災害の原因や被害状況、身を守る対策について詳しく解説しています。
【関連記事】土砂災害はなぜ起きるのか?過去の被害から学ぶ課題と教訓
自然災害は予測が難しく、特に台風のような急激な気象変化には迅速な判断が求められます。そのため、日頃からの備えが不可欠であり、家族と避難ルートを確認し、防災グッズを整えておくことが大切です。また、家の周りの点検も忘れずに行い、台風の接近時には最新の気象情報をこまめにチェックしましょう。
「たぶん大丈夫だろう」といった思い込みを避け、最悪の事態を想定した行動が重要です。「もしかしたら」の意識を持ち、早めに備えることで被害を最小限に抑えられます。あなたとあなたの家族の安全を確保するために、この記事を参考にして適切な対策を講じましょう。
【参照】
気象庁|台風について
気象庁|台風の統計資料
気象庁|台風や集中豪雨から身を守るために
日本気象協会|台風のしくみ
日本放送協会|台風がくる
日本放送協会|過ぎたあとのほうがずっと怖い?台風”後”にひそむ思わぬ危険
WRITER
広報:
空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
空飛ぶ捜索医療団"ARROWS"ジャーナル編集部です。災害に関する最新情報と、災害支援・防災に関わるお役立ち情報をお伝えしています。
SUPPORT
ご支援のお願い
私たちの活動は、全国のみなさまのご支援・ご寄付によって支えられています。
一秒でも早く、一人でも多くの被災者を助けるために、
空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”へのご寄付をお願いいたします。