JOURNAL #3672024.09.28更新日:2024.10.08
震災から復興半ばの奥能登を襲った豪雨水害から1週間。珠洲市では市職員を中心として懸命な復旧作業が進められ、水害でダメージを受けたエリアも少しずつ落ち着きを取り戻しつつあります。空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”は、1月から続けてきた避難所支援やコミュニティ支援とともに、物資や給水の緊急支援を行ってきました。
1月から現地に駐在し、支援活動を続けてきた空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”の看護師、木下は、厳しい状況に変わりはないが、現地の人びとは懸命に前を向いて復旧に努めているといいます。
「日中は浸水被害に遭った家の泥かきをして、夕方つかれた顔で避難所に帰ってくる住民からは『また戻ったね……』という言葉も聞かれ、かける言葉がでませんでした。それでも、住民同士で『これまでがんばってきたんだから、これからもがんばろう』と声を掛け合っている姿も見られ、市を中心としてさまざまな団体が連携してものすごいスピードで復旧作業が進められています。現時点でアクセスできていない集落はありません」
水害の発生後、一部エリアではふたたび断水が発生し、各避難所や在宅避難者には生活用水も含めた飲料水を届けることが急務とされました。こうした水が不足する事態を想定し、空飛ぶ捜索医療団は水と非常用トイレを早急に手配し、各避難所や仮設住宅、在宅避難者に配布しました。
また、土砂災害で道路が寸断され、しばらく復旧の見通しが立たないと判断されたエリアにはヘリコプターで取り残された住民を救助。そのほかの孤立集落をなくすために道路啓開が急ピッチで進められ、道路が陥没などして車両が入れないエリアには、市の職員と空飛ぶ捜索医療団のスタッフが歩いて直接出向いていくなど、もれのないように支援物資は被災者のもとに届けられています。
市職員をはじめ、支援者のなかには、被災者も多くいます。そうした方々と共に、私たちは支援活動を行っています。
空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”の支援を指揮する橋本は、水害で被害を受けたエリアが急ピッチで復旧していく姿をみて、震災の経験と、珠洲市の“地域力”が大きく影響しているといいます。
1月の震災で橋本は、各団体が個々に動いてしまうと、取りこぼしが生じるなど迅速な支援ができないとして、情報共有の重要性を主張。避難所支援に奔走しながら、各部門、各団体がシームレスに連携できるように会議体を調整するなど、迅速な支援ができる環境づくりにも尽力しました。
その経験を生かし、今回は市を中心に消防や警察、自衛隊、各NGOなど支援に関わる団体すべてが一堂に会する会議を実施。情報共有と調整を図りながらそれぞれの役割と強みを生かし、可能な限りのスピード感を持って復旧作業と物資支援が展開されました。
こうした迅速な体制構築もあり、震災に追い打ちをかけるように起きた水害でしたが、珠洲市は力強く、立ち直ろうとしています。
「こんな試練が与えられながら、珠洲市の人びとは、家族だけでなく、地域で互いに支え合い、足を止めることなく誰もが懸命に復旧に努めています。この“地域力”は本当にすごい。珠洲市は、本当にすばらしい強さを持った地域だということをあらためて実感しています」
震災からの復興もまだまだ道半ばです。1月の震災から現在も避難所で暮らす方や、今回の水害であらたに被災された方も含めて、避難生活はさらに長引くことが予想されるといいます。度重なる災害に被災者の不安と落胆は、簡単にはぬぐい切ることはできません。それでも珠洲は、住民同士が助け合う地域力を持ってかならず復興すると、橋本は信じています。
木下は「これからも変わらず、できる支援を続けていくしかない」といいます。
これまで避難所や仮設住宅をはじめ、戸別訪問などしてフォローしてきた方々の状況を引き続き細かくフォローしていくとともに、水害で避難されている方々が今後どのような生活再建ができるか、一人ひとりと丁寧に対話していきながら、それに対してどのような伴走支援が必要なのか、今後も空飛ぶ捜索医療団はできる支援を考え続け、珠洲市の復旧・復興を支えていきます。
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