JOURNAL #4132025.03.15更新日:2025.03.16

「メイストーム」とは?レジャーを安全に楽しむために注意すべき“春の嵐”の原因と対策

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

春はアウトドアに最適な季節ですが、この季節特有の「メイストーム」には注意が必要です。急激に強まった低気圧による暴風や大雨、気温の急変が予想外の危険を招くこともあります。この記事では、メイストームの特徴や過去の事例を紹介し、春のレジャーを安全に楽しむための対策を解説します。急な天候の変化に備え、春のアウトドアを安心して楽しむために、ぜひ参考にしてください。

メイストームとは?

メイストームについて初めて聞いた方もいるかもしれません。ここでは、メイストームがどのような現象なのか、その発生の背景や、台風との違いについて解説していきます。

メイストームの概要と発生原因

メイストームは「春の嵐」とも呼ばれ、主に3月から5月にかけて日本列島を襲う、台風並みに発達する低気圧や暴風雨のことです。特に北日本を中心に発生し、急激な天候の悪化を引き起こします。

この時期、日本付近では南から暖かい空気が流れ込み、冬の名残で残る冷たい空気とぶつかり合います。温度差が大きいほど空気の流れが激しくなり、低気圧は急速に発達。その結果、強い風と雨を伴う暴風雨が発生し、天気が突然荒れることがあります。これが「春の嵐」と呼ばれる理由です。

メイストームと台風の違い

メイストームと台風にはいくつかの大きな違いがあります。以下の表で整理しました。

メイストーム台風
発生時期3月~5月6月~10月(主に夏から秋)
発生要因温帯低気圧の急発達熱帯の海で発生する熱帯低気圧
風の強さ台風並みの暴風を伴うことも最大風速が非常に強い
雨の強さ短時間で激しい雨が降る豪雨を伴うことが多い
影響範囲広範囲にわたる暴風雨中心付近で特に強い暴風雨

メイストームは「爆弾低気圧」とも呼ばれ、中心気圧が24時間で24hPa(ヘクトパスカル)以上低下する低気圧を指します。日本付近では24時間で20hPa以上低下すると「爆弾低気圧」となります。

一方、台風は熱帯低気圧が成長したもので、発生場所やエネルギー源が異なり、メイストームとは別の現象です。なお、「爆弾低気圧」は気象庁の正式名称ではなく、急速に発達する低気圧を指す一般的な呼称とされます。

参照:気象庁|気圧配置 気圧・高気圧・低気圧に関する用語

メイストームの特徴と被害

メイストームの主な特徴として、以下の点が挙げられます。

  • 急激な天候の変化:短時間で風雨が強まり、嵐へと発展することが多い
  • 強風を伴う:最大瞬間風速が30m/s(メートル毎秒)を超える場合もあり、人や建物に大きな影響を与える
  • 広範囲で影響が出る:日本全国に影響を及ぼす可能性がある

メイストームは強風や高波を伴い、広範囲に影響を与えます。低気圧が接近すると南風で気温が上昇し、通過後は北風で急激に気温が低下します。この温度差は特に注意が必要です。

さらに、気象庁の「風の強さと吹き方」によると、風速20m/s以上で立つのが困難になり、30m/s以上では屋外活動が危険に。トラックの横転や樹木の倒壊なども起こりやすく、都市部、海上、山岳地帯を問わず早めの警戒と対策が求められます。

メイストームによる被害

過去のメイストームでは深刻な被害が発生しました。以下に代表的な事例を紹介します。

■1954年(昭和29年)5月10日
1954年5月8日、黄海で発生した低気圧が急速に発達しながら日本海を北東へ進み、9日夜から10日朝にかけて北海道を横断。このときの中心気圧は970hPa、最大瞬間風速30m/sを超える暴風が観測されました。

特に北海道近海では漁期の最盛期だったため、多くの漁船が遭難し、沈没63隻、消息不明32隻、死者140人、行方不明257人という大惨事となりました。

■1965年(昭和40年)のゴールデンウィーク
1965年のゴールデンウィーク、悪天候により中部山岳を中心に登山者の遭難事故が相次ぎました。6日間で136名が遭難し、62名が死亡。死亡者の多くは、北アルプス、南アルプス、八ヶ岳、奥秩父山系、日光山系など広範囲にわたっており、疲労凍死、滑落、雪崩などが原因でした。

■2020年3月19日~21日
比較的最近では、2020年に日本列島を襲った低気圧もメイストームに類するものでした。この際、各地で暴風が吹き荒れ、倒木や交通機関の混乱が発生しました。

メイストームは単なる春の嵐ではありません。広範囲に甚大な影響を与える可能性があると認識しておきましょう。

メイストームがもたらすレジャーの危険性

メイストームの影響はアウトドア活動にも大きなリスクをもたらします。特に、以下の活動では危険性が増すため、十分な注意が必要です。

登山・ハイキング

春山には雪が残っているケースが多く、メイストームが発生すると暖かい空気が流れ込んで雪崩が発生する危険性が高まります。暴風雪や猛吹雪により、視界が悪化し、歩行が困難になるかもしれません。

また、嵐が通過した後には急激な気温の低下があり、低体温症や凍死のリスクが高まります。そのため、メイストームが過ぎ去った後でも油断せず慎重に行動することが重要です。

野外キャンプ

春の野外キャンプでは、メイストームによる強風や大雨に注意が必要です。強風時はテントやタープが飛ばされる危険があるため、ペグやロープをしっかり固定しましょう。

さらに、大雨により浸水が発生し、河川の増水によって急な鉄砲水が発生する危険性もあります。特に川沿いや湿地帯は避け、降雨時の避難場所を事前に確認する慎重さが求められます。

釣りや海のレジャー

メイストームによる強風や高波は、海上でのレジャー活動に深刻な危険をもたらします。強風が吹くと、船の転覆やボートの流出といったリスクが高まります。防波堤や海岸での釣りも、波の高さや風の強さによって非常に危険です。特に春の天候は不安定で、穏やかだった天気が突然荒れる場合があるため、油断は禁物です。

メイストームは、アウトドア活動において多くの危険を引き起こす気象現象です。自己判断に頼らず、天候の急変や強風、雪崩、浸水などのリスクを考慮した行動が求められます。

メイストームから身を守るための対策

特に春のレジャー時には、メイストームのリスクを十分に考慮し、安全な計画を立てることが重要です。ここでは、メイストームに備えるための具体的な対策と注意点を紹介します。

事前に天気予報をチェックする

メイストームによる被害を防ぐためには、天気予報をこまめに確認し、早めに判断することが求められます。気象庁の「強風注意報」や「暴風警報」、低気圧の発達状況に注目し、悪天候が予測される場合は計画の見直しを検討しましょう。

特に、「爆弾低気圧」や「前線の通過」といった気象用語の意味を理解し、風の強さを事前に把握しておくことが大切です。強風が予告された場合は無理に外出せず、レジャーや活動を控え、早めに中止する判断を下しましょう。

なお、気象用語や事象については、気象庁の資料を参考にしてください。

気象庁|気圧配置 気圧・高気圧・低気圧に関する用語
気象庁|風の強さと吹き方

レジャーの計画を立てる際は安全第一に

メイストームが予測される場合、特にキャンプや登山、海、川などのアウトドア活動は中止するのが最も安全です。急激な天候の変化により避難が遅れ、危険な状況に陥る可能性があります。数日間や長期にわたる野外活動の場合、晴天でもその後の天候の変化に注意が必要です。

活動中であっても、無理に計画を実行することは非常に危険です。風や波などが強くなる前に天候の悪化を予測し、早めに柔軟に計画を見直しましょう。

持ち物をしっかり準備する

メイストームに備えるため、事前に適切な装備を整え、万が一の事態に備えましょう。レインウェアや防寒着など、強風や雨に対応できる防風防水対策は基本的な装備です。また、非常食や水、モバイルバッテリー、救急セットも携帯しましょう。これらのアイテムは万全な対策となりますが、最も重要なのは計画段階での慎重な判断です。

特に水辺では強風や高波のリスクが高いため、ライフジャケットの着用が推奨されます。連絡先や連絡方法の事前確認も必要です。さらに海での活動時には、万が一の際に迅速に118番(海上における事件・事故の緊急通報用電話番号)に連絡できるよう準備しておきましょう。

安全な行動を心がける

メイストームが発生した場合、安全な場所に避難することが最も重要です。屋外で活動している場合、強風や飛来物によるケガのリスクが高くなるため、早めに屋内へ避難することが重要です。

もしもキャンプ中に強風が吹いてきた場合、無理にテントを片付けようとすると逆に危険を招く可能性があります。強風下でペグを抜いたり、テントを急いで撤収しようとしても、テントが飛ばされ、他の人や物に危険を及ぼすかもしれません。強風時には、まずはテントを低く落とし、テントが飛ばされないようにペグを抜かずに固定しておくことが大切です。

また、事前に近隣の避難できる場所をチェックしておくと万が一の際にスムーズに避難でき、安心感が得られます。避難場所への行き方を確認しておき、風が強くなる前に避難する準備を整えておきましょう。

メイストームをはじめとする急激な天候の変化には、事前の準備と冷静な判断が不可欠です。どれだけ準備を整えていても、自然の力には勝てません。危険を感じた場合は、ためらわず活動の中止や延期を決断することが最も重要です。

まとめ

メイストームは春に発生する強烈な暴風雨で、アウトドア活動に多くのリスクをもたらします。登山では雪崩や視界不良、キャンプではテントの飛散や浸水、釣りでは高波や転落事故など、自然の猛威に対する備えが不可欠です。

安全にレジャーを楽しむためには、天気予報のチェックと無理のない計画が重要です。気象変化に注意し、事前準備と適切な判断で春のアウトドアを安全に楽しみましょう。

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