JOURNAL #4412025.05.30更新日:2025.05.28
広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部
豪雨や台風に直面したとき、どのように行動するかは、命を守るために非常に重要なポイントです。災害時に適切な判断と迅速な行動を取るためには、事前に自分や家族の避難行動を整理しておくことが欠かせません。そこでいま注目されているのが「マイ・タイムライン」です。
この記事では、マイ・タイムラインの意味や必要性、作り方までをわかりやすく解説します。大切な命を守るために、今日からできる防災準備を始めましょう。
マイ・タイムラインとは、台風や大雨などの災害に備え、自分や家族が「いつ・どんな行動をとるか」を事前に整理しておく防災行動計画です。
もともと「タイムライン」は防災機関同士が災害発生を想定し、行動を時系列で共有・実施するための計画を指しますが、これに「マイ」がつくことで、その考え方を個人レベルに落とし込んだものになります。
住んでいる地域のリスクや家族構成、健康状態など、各々の状況に合わせて作る「自分専用の避難計画」とも言えるでしょう。これにより、災害時にも迷わず行動でき、命を守る判断がしやすくなります。
マイ・タイムラインは災害時の避難の遅れや孤立を防ぐため、事前の行動計画の重要性が注目される中で生まれました。きっかけの一つは、2012年にアメリカ東海岸を襲ったハリケーン・サンディです。ニュージャージー州では「タイムライン」と呼ばれる事前行動計画を活用し、早期避難や交通規制などを実施。人命被害を最小限に抑える成果をあげました。
この実践に注目した日本政府がアメリカに調査団を派遣。帰国後の提言を受けて、2016年に「タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)」が策定されました。関東・東北豪雨など国内の被災経験でも改めてタイムラインの重要性が認識され、現在では多くの自治体で、個人単位の「マイ・タイムライン」作成が積極的に進められています。
マイ・タイムラインとは、災害時に自分や家族が「いつ・何をするか」を事前に整理し、安全に避難するための行動計画です。以下に、マイ・タイムラインを作る目的と期待できる効果についてまとめました。
【マイ・タイムラインを作成する目的】
【マイ・タイムラインの作成による効果】
マイ・タイムラインは、他者の意見を参考にしながら自分自身の状況に置き換えて考えられるため、ワークショップ形式での作成が推奨されています。特に、地区単位での住民参加型ワークショップでは、「自分たちの地域のリスクを理解する」ことや、「どのタイミングでどう行動するか」を考えることで、行動力や防災力の向上が期待されます。
災害はいつ起こるかわかりませんが、事前の準備が自分や家族の命を守る力になるのが「マイ・タイムライン」です。まず、作成にあたって必要な準備物を確認しておきましょう。
【準備するもの】
なお、タイムラインを作成する際、自治体等が推奨するWebやアプリ版の作成シート(後述で紹介)を活用することも可能です。以下に、マイ・タイムラインを作るための基本的な流れを3つのステップに分けて紹介します。
最初に、自分の住んでいる場所にどんな災害リスクがあるのかを知ることが大切です。ハザードマップを使って家や学校、よく行く場所が洪水や土砂災害にあう危険がないか確認します。あわせて、近くの避難所や、避難する際に通る道の危険なポイント(川沿いや崖、狭い道など)も確かめておきましょう。
【チェックポイント】
ハザードマップは各家庭に配布されるのが一般的ですが、紛失した場合でも「ハザードマップポータルサイト」で簡単に居住地のハザードマップを確認できます。洪水・土砂災害・高潮・津波などのリスクを地図上で重ねて表示でき、住所や現在地からの検索も可能です。市町村作成の「わがまちハザードマップ」にもリンクしており、必要な情報にすぐアクセスできる便利なサイトです。
時系列の行動計画を作成する重要性は、災害が深刻化するまでの経緯を知るとより実感できます。特に水害は時間をかけて事態が悪化することが多いです。大雨の予報がある時は災害情報をこまめにチェックする、災害の警戒レベルが高まったら避難の準備をするなど、必要なタイミングで迅速に避難するために必要なことを逆算して考えましょう。
【チェックポイント】
平時に気象情報や避難情報の確認方法をチェックしておくと、いざという時に慌てません。避難情報の把握は迅速で安全な避難のために欠かせないポイントです。以下のコラムでは、警戒レベルの概要や情報の入手方法について詳しく解説していますので、ぜひご確認ください。
【関連記事】避難情報とは?警戒レベルの概要と実際の避難につなげるポイントを解説
ステップ1、2で確認した情報を踏まえて、自分や家族が災害時に「いつ・何をするか」を具体的に計画しましょう。家族全員が自宅にいるとは限らないため、家族同士の「連絡の取り方」や「集合場所」もあらかじめ考える必要があります。
実際自宅から避難することになった場合、どこにどうやって向かうかといったことも決めておきます。夜間の避難は危険なため、時間帯によっては暗くなる前に早めに避難を始めることも考慮しましょう。特別な支援が必要な人がいる場合は、誰がどのように支援するかも重要です。家族の役割分担を決めてシミュレーションしておき、「自分の命は自分で守る」準備を進めましょう。
【チェックポイント】
マイ・タイムラインは、災害時に「自分や家族はどう動くか」をあらかじめ整理しておく大切な計画です。いま、多くの自治体が、個人や家庭に合わせたタイムライン作成をサポートしています。ここでは、広島県と東京都の取り組みをご紹介します。小学生・中学生向けのサポートや、一人暮らしの方にも配慮した内容が用意されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
広島県は、風水害時の個人や家族の避難行動計画「マイ・タイムライン」を、わかりやすく作成できるガイドとツールを提供しています。作り方は、デジタル版(Webフォームで作成)と、手書き版(PDFガイドをダウンロード)の2通りから選べます。
特徴的なのは、高層マンションに住んでいる場合やペットと暮らしている場合など、世帯構成に合わせた作成例が用意されていることです。また、非常持出品のリストや、小学生向け・先生向けの動画教材もあります。家族で話し合いながら、また一人でも安心して作成に取り組めます。
「台風が近づいているとき」「大雨が長引くとき」「短時間の急な豪雨が発生するとき」など、シチュエーションごとのタイムライン作りができるため、無理なくスタートできます。
東京都が提供する「東京マイ・タイムライン」は、東京特有の風水害リスクに対応した避難行動計画をサポートするツールです。デジタル版(Webフォーム)や手書き版(冊子・PDF)、アプリ版と、多様な方法で作成できます。
特徴は、初めての方でも理解できる工夫がたくさんあることです。台風・長雨・急な豪雨というシチュエーション別に作られた3種類のマイ・タイムラインシートや、作成をサポートするナビ動画、行動をわかりやすく示すシールセットなどが提供されています。
アプリ版では、リアルタイムで水害リスクを把握できる機能や、避難のタイミングを教えてくれるチャットボットも搭載。一人暮らしの方も、アプリを活用しながら適切な行動を準備できるようになっています。
小中学生向けの防災教材として推奨されるのが、国土交通省が提供する「逃げキッド」です。台風発生から川の氾濫までの流れや備えを学び、チェックシートや資料を活用して自分だけのマイ・タイムラインを作成できます。
マイ・タイムラインは一人でも作成可能ですが、家族や友達、地域の人と話し合いながら進めるとより安心につながります。声をかけあい、あなたのペースで一歩ずつ備えを進めましょう。
出典:国土交通省|マイ・タイムライン 小中学生向けマイ・タイムライン検討ツール ~逃げキッド~
「マイ・タイムライン」を一度作成すれば、必ずしも完璧な避難行動が保証されるわけではありません。タイムラインを作成すること自体に大きな意義がありますが、災害は予測できない部分も多いため、柔軟に対応できる心構えも大切です。ここでは、タイムラインを作成する際に役立つポイントと、注意しておきたい留意点を紹介します。
紙やデジタルでタイムラインを管理し、誰でもすぐに確認できるようにしておきます。家の目立つ場所に貼っておくのもおすすめです。
地域の防災訓練や季節ごとのタイミングで、タイムラインを見直すことが重要です。家族構成の変化があれば、内容も更新しましょう。
住んでいる地域のハザードマップを見て、どんな災害リスクがあるか知っておきます。あわせて、近所の方と普段からさりげなく声をかけ合っておくと、いざというときも安心です。
特に一人暮らしの高齢者がいる場合などは、ご本人の気持ちも大切にしながら、支援する側の人とも少しずつ話し合い、自然な形で助け合える関係を育んでいきましょう。
個別避難計画とは、支援が必要な方が災害時にきちんと避難できるように、誰がどこに避難させるかなど具体的な計画を決めておくものです。高齢者や障がい者がいる家庭では、個別避難計画とマイ・タイムラインを連携させましょう。個別避難計画は支援者と避難経路をまとめた計画、マイ・タイムラインは防災行動を時系列で整理する計画です。両方を作成し、補完し合うことが大切です。
マイ・タイムラインはあくまで「目安」です。自然災害の進行は予測どおりには進まないこともあります。常に最新の気象情報や避難情報をチェックし、状況に応じて柔軟に対応することが求められます。
「マイ・タイムライン」は、災害時に自分や家族が迷わず行動するための大切な防災計画です。地域のリスクや家族構成を踏まえて準備しておくことで、被害を最小限に抑える力になります。いざという時に後悔しないために、今こそ一人ひとりが具体的な行動計画を立て、日頃から防災意識を高めていきましょう。
【参照】
国土交通省|マイ・タイムライン
国土交通省|マイ・タイムラインの取組について
国土交通省|タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)
広島県「みんなで減災」はじめの一歩|ひろしまマイ・タイムライン
東京都防災ホームページ|東京マイ・タイムライン
マイ・タイムラインをつくろう|ネットあいち
tsulunos 〜群馬県公式〜|マイ・タイムライン作成動画~命を守るための、”知る””気づく””考える”~|河川課|群馬県
アルソック|防災のためのマイ・タイムラインとは?作り方・情報収集のポイント
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