JOURNAL #3502024.06.28更新日:2024.07.06

【水害に備えて】2018年7月西日本豪雨被害を振り返る

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

【水害の時期】川に流されたらどうするのか?命を守るために必要な行動と知識とは

近年、「数十年に一度」とされる「大雨特別警報」が頻発。ゲリラ豪雨や土砂災害が毎年のように列島を襲い、水害とは無縁とされていた地域でも被害が出るなど、激甚化しています。
水害が多く発生するこれからのシーズンを迎えるにあたり、空飛ぶ捜索医療団の定例訓練でも6月の今回は流水での訓練を行いました。

水の中で行う支援活動には多くの危険があります。たとえば、水域での要救助者の身体に損傷などがみられたとき、安全に助け出すためには特殊な知識やスキルが必要不可欠です。
そのような場面ではどのようなことに注意しながら行動するべきかなど、実際の川の中で流水救助安全講習(浅瀬横断、ディフェンシブスイム、スローバックレスキュー、ボート操船、ボートからの落水者レスキュー)を行いました。

チームの一人ひとりが流水の構造なども理解しておくことで、水害によって洪水や浸水が起こった街の中での活動でも安全に支援活動に取り組むことができます。

未治療死を防ぐには過去の教訓から学ぶ(2018年西日本豪雨)

2018年7月に237名の死者を出した西日本豪雨災害から来月で6年を迎えます。48時間雨量は、広島県広島市や岐阜県高山市など100地点以上で観測史上最多を更新するなど、広範囲かつ同時多発的に河川の氾濫や土砂災害などが発生し、甚大な被害をもたらしました。

緊急支援チームは、浸水によって停電・断水し機能しなくなってしまった病院からのSOSを受け、私たちはヘリコプター2機と水陸両用車、ボートなどを駆使してその場に駆けつけました。院内では電源がなくなり、生命維持装置や酸素吸入器が停止。さらに飲み水もなく蒸し暑いなか、不安を抱えて体力を奪われた患者さんと職員が一晩を過ごしていました。

病院の屋上にヘリを降ろし、酸素吸入が必要な心不全患者の方など8人を水没していない他の総合病院にヘリコプターでピストン輸送し、歩行が可能な11人の患者さんをボートに乗せ、日没までに助け出すことができました。

そのとき支援した、まび記念病院院長の村松友義さんからは、「どのようにして患者さんを避難させるかは全く白紙で、稲葉医師とチームが来てくれなかったら自力では脱出できず、患者の容態からするとギリギリの状態でした。極限で命を守ってもらい、本当に感謝しています」と、後日、話してくださいました。

こうした発災直後の緊急支援活動以降は、避難所内にお借りした一室やトレーラーハウスで臨時診療所を開設し、診療を行いました。
診察に訪れた方のなかには乾燥した汚泥を吸い込んだため結膜炎になっていたり、熱中症の症状を訴えるほか、大きな病院に搬送して手術が必要な方もでるなど、命を守るためにできる限りの医療を提供しました。

見えた課題から体制強化を図り続ける

この災害から、私たちは毎年発生しうる豪雨災害への対応へ空・陸からのアプローチなど、準備を進めてきました。
今年もいつどこで起こるかわかりません。そのとき、必要な支援を届けられるよう、どうぞ皆さまの応援をお願いいたします。

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