JOURNAL #982024.03.14更新日:2024.03.21

災害備蓄の「ローリングストック」とは?基本から実践まで解説!

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

防災用語の「ローリングストック」という言葉を聞いたことがありますか?
“食料品の災害備蓄”というと、ひと昔前なら乾パンや缶詰など「長期保存を前提とした非常食」を連想するところでした。しかし、ローリングストックを取り入れた近年の災害備蓄では、そうした常識が変わりつつあります。

この記事では、日常的な災害の備えとして役に立つローリングストックの考え方について説明します。初めてチャレンジする人にも理解してもらえるよう、基本の知識から実践でのポイントまでご紹介します。また、後半ではローリングストックの活用法にも触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。

ローリングストックとは

まず、ローリングストックの基本についてご説明します。
ローリングストックとは、災害時にも必要となる消耗品を日常的に多めに購入し、消費した分だけ新しいものを買い足していくという備蓄方法です。災害大国である日本で生まれた考え方で、「ローリングストック法」や、日本語で「循環備蓄」と表記されることもあります。
災害時に備えた食品ストックガイド」として農林水産省がその効果や実践方法について詳しく解説されているように、国も推奨している方法の一つです。

ローリングストックについて説明している画像

ローリングストックの一番のポイントは、”日用品を消費しては買い足す”という繰り返し(ローリング)を行うことです。家庭で日頃から利用している品物の一部を利用することで、災害時にも日常の延長として対応することができます。

ローリングストックの重要性|災害関連死の防止

ローリングストックは、災害発生時に快適に過ごせるというだけでなく、災害関連死の防止のためにも重要となる考え方です。災害関連死とは、地震発生時に起きた家屋の倒壊や津波などの直接的な被害で死亡したのではなく、長引く避難生活における負担が原因で死亡に至ってしまうケースです。

規模の大きな災害では、救援物資が到着して行き渡るまで数日から数週間、ライフラインの復旧に1か月以上かかることもあります。その間を乾パンや缶詰などの非常食だけで賄うには、備蓄量も足りず、栄養バランスの観点でも十分とは言えません。
また、食料だけでなく日用品の備蓄に関しても同様です。トイレットペーパーが足りなくなってしまった場合にトイレを我慢しようとすることで脱水症状を引き起こしたり、その結果、血行不良や脳梗塞を引き起こすリスクもあります。

避難生活中も、家族全員が可能な限りストレスなく健康的に暮らすために、ローリングストックという方法が肝要です。

ローリングストックのメリット

ローリングストックを取り入れることは、単に「緊急時の備えになる」という本来のメリット以外にもいろいろなメリットがあります。

平常時の負担が少ない

ローリングストックを実施することで、非常食や非常用グッズの準備が不要になります。したがって、災害時にしか利用できないものに収納のスペースを取られたり、非常食の賞味期限切れを気にしたりといった煩わしさを解消することができます。

非常時にも栄養バランスの整った食事を摂ることができる

ローリングストックによっていつもと変わらない食事をとれることで、一般的な非常食と比べて、非常時にも栄養バランスの整った食事を摂ることができます。例えば非常食では乾パンやお米、水で戻せるパンなど炭水化物が多めですが、ローリングストックであれば、トマト缶やスパム、ツナ缶などで野菜や肉・魚を取り入れることができます。
また、大人であってもビタミン類などが欠乏すると体調を崩しやすくなり、ウイルス等の感染にも弱くなります。ローリングストックで栄養素のバランスが保たれることは、避難生活が長引くほど重要な意味を持ちます。

精神的な安定にもつながる

ローリングストックによって日常と変わらない食事ができることで、災害発生時の精神的な安心感にも繋がります。災害時に避難生活が長引くと必ず問題となるのが「被災者の心身の健康問題」です。災害発生時には、緊張や不安、周囲の人々との暮らしによるストレスなどによって、持病のない人でも体調を崩したり、精神状態が不安定になったりします。ローリングストックを通して身体的な健康を食事で担保したり、家族で温かい食事をとることで安らぐ瞬間を作ったりすることが可能になります。

ローリングストックの対象品

ローリングストックの対象は食品だけに限りません。以下では、代表的なローリングストックの対象物についてご紹介します。

食料品

ローリングストックでは、レトルト食品やインスタント食品、フリーズドライ食品、乾物、さらにはお菓子まで、幅広い食料が貯蔵の対象になります。家族の食事の好みに合っていて普段から消費できるものなら、基本的にどんな食品でもローリングストックに用いることができます。
例えば、以下の要素に当てはまる食料品は、特にローリングストックに適していると考えられます。

  • 常温で保存ができる
  • 調理(加熱)しなくてもそのまま食べられる
  • 賞味期限が半年以上ある
  • 水で戻せるなど、収納する際にスペースを取らずに済む

以下は、ローリングストックに適した食料品を栄養バランスごとにまとめた表です。具体的な食材の例として参考にしてください。

種類用途・役割品目の例
主食生命維持のエネルギー源となる米、餅、パックご飯、レトルト粥、乾麺、パスタ、缶詰パン、即席麺、カップ麺、シリアル、小麦粉など
主菜主食のおかずとなり、たんぱく質、ビタミン類、脂質などをバランスよく補う缶詰、レトルト食品、フリーズドライ食品、充填型食品など
副菜主菜で不足しがちな、ビタミン・ミネラル・食物繊維などを補う乾物類、保存のきく根菜類、インスタントスープなど
菓子・果物・飲料間食としてエネルギー補給になる水分補給と同時に、各種の栄養補給となる好みに合うお菓子、フルーツの缶詰、ドライフルーツ、野菜ジュース、フルーツジュース、充填型牛乳など
その他味付けや調理に使用味噌、醤油、油類、常温保存できる調味料など
ローリングストックに適した主な食品の例

食品以外の備蓄にも応用可能

ローリングストックは、食料品以外の日用品の備蓄にも応用できます。例えばウエットティッシュやカセットボンベ、乾電池、使い捨てカイロなどの消耗品は、災害時にも役立つ用途が多くあり、ローリングストック向きの品目です。中でも、調理時の熱源として使えるカセットコンロや固形燃料は、災害備蓄として必須アイテムと言えます。以下が、消耗品以外でのローリングストックのおすすめ品です。

種類用途・役割品目例
熱源調理・湯沸かしの熱源カセットコンロ(ボンベ)、固形燃料など
衛生用品衛生維持・手などの消毒ティッシュ、トイレットペーパー、ウエットティッシュ、生理用品、カイロなど
キッチン用品調理作業を補助するラップ、アルミホイル、ポリ袋など
食器・容器皿、コップとして紙皿、紙コップ、割りばしなど
食料品以外でローリングストックに適した日用品

ローリングストック実践のコツ

ローリングストックを実際に取り入れた生活について、効果的に実践するためのコツやポイントを紹介します。

特別な決まりはない

前提として、ローリングストックには「消費してこまめに買い足す」という大原則以外には、厳密なルールや規則はありません。対象とする品物や量などは各家庭の自由ですので、ここまでの記事の内容をもとに、必要なものを考えてみてください。

よく購入するものを確認するところから始める

ローリングストックを始める際には、まず、ご自身が頻繁に購入されるものの中で、食料品についての章で記載した条件に合うものを考えてみてください。それらをいつもの倍程度購入しておくところから始めるのがおすすめです。普段通り生活する中で備蓄量が減ってきたら、消費するペースを確認して、また必要な分だけ買い足していきます。
筆者の自宅ではトマト缶とツナ缶、ティッシュペーパーを大量に買い込み、現在でも1年以上前に購入した備蓄の残りを使い続けて生活をしています。また、ガスボンベも多めに備蓄しており、鍋や焼き肉を食べる際に少しずつ消費しています。

家族全員分の備蓄を考える

赤ちゃんや子ども、お年寄り、アレルギーや慢性疾患・身体障害などのある家族がいる場合は、備蓄すべきものが異なります。家族全員の暮らしに関わるものを見直し、必要なものを備蓄しておくようにしましょう。農林水産省の「要配慮者のための災害時に備えた食品ストックガイド」も参考にしてみてください。

ペットがいる場合はペット用品も備蓄する

犬や猫などペットを飼っている場合は、ペットの暮らしに必要な消耗品もローリングストックに加えることを忘れないようにしましょう。例えばペットフードやトイレシート、猫砂、おやつなどです。持病がある場合は、可能であれば日頃から少し多めに薬をもらっておけると安心です。ペットの備蓄に関してまとめた記事もありますので、合わせて参考にしてください。

まとめ

最後までご覧いただきありがとうございます。災害備蓄で役立つ考え方「ローリングストック」の基本から実践まで、順を追って紹介しました。日本国内では、自治体や企業による災害備蓄が少しずつ進んでいますが、各家庭における災害への備えは欠かせないものです。いつ災害が発生しても良いように、ローリングストックを通して日常的に備えられるよう意識してみてください。

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