JOURNAL #3852024.12.30更新日:2025.01.04
地震はいつ、どこで起こるかわかりません。特に日本は地震活動が活発な地域が多く、日常的に備えをしておくことが不可欠です。行政の支援だけに頼るのではなく、私たち自身がしっかりと準備を進めることが求められます。しかし、具体的に何をどう備えるべきか迷っている方もいるでしょう。
そこでこの記事では、地震発生前の準備から発生時の行動、帰省先や旅行先での対応まで、必要な知識と実践的な対策を詳しく解説します。安心して暮らせる環境をつくるために今から準備を始めましょう。
日本は地震大国と呼ばれるほど、地震活動が活発な地域です。特に、南海トラフ巨大地震のリスクが迫るなか、私たちは「いつか起きるかもしれない」ではなく、「必ず起きる」と考えて備える必要があります。ここでは、地震の予測が難しい現状を踏まえ、被害を最小限に抑えるために必要な準備の視点について解説します。
気象庁の地震発生データによれば、ここ10年において全国で震度1以上の地震は増加傾向にあり、2024年に起きた震度5弱以上の地震は2016年に次いで多い数値となっています。しかし、地震は発生源が地中深く再現実験も難しいため、その発生場所やタイミングを正確に予測することは現代の科学でも不可能です。
予測できないからこそ、知識と準備が生死を分けることもあり、「知らなかった」では行動が遅れ、大きな被害を招く可能性が高まります。一方で、知識があれば冷静に対応できる場面が増えるでしょう。備えがあれば、リスクを最小限に抑えることができるのです。
地震はいつ発生するかわからないからこそ、準備を「今すぐ」始める必要があります。自宅では家具の固定や非常食の備蓄をおこない、さらに勤務先や通勤・通学ルート、旅行先、帰省先など、さまざまな場所での対応策を考えましょう。
特に南海トラフ巨大地震のような大規模災害では、避難情報を正確に理解し、「まず身を守る」「避難場所に向かう」など命を守る行動が不可欠です。事前の準備と情報共有が冷静な判断力と安心感につながり、被害を最小限に抑える鍵となります。
次の章では、地震発生時に冷静に行動するための準備内容を具体的にご紹介します。
【関連記事】「南海トラフ地震臨時情報」を正しく理解して適切な避難行動につなげる
地震の際、家の中や外での安全を確保し、自分や家族の命を守るためには日頃の備えが重要です。以下では、家の中、外での対策や、事前に知っておきたい情報について解説します。
地震が発生した際に命を守るため、家具や建物に対する適切な対策を講じましょう。
家具の転倒によるケガや事故を防ぐために、以下の方法で家具をしっかり固定し、安全を確保しましょう。
賃貸住宅や壁材の問題で金具が取り付けられない場合は、家具の下に転倒防止シート等を敷いて滑らないようにしましょう。また、天井と家具をつっぱり棒で固定する、間に箱を詰めて転倒を防ぐといった方法もあります。
地震発生時、ガラスや照明器具の破損でケガをするケースは少なくありません。窓ガラスや食器棚には飛散防止フィルムを貼り、割れたガラスの飛散を防ぎましょう。
吊り下げ式照明器具は落下リスクがあるため、チェーンで固定するか、天井直付けタイプに変更するのが安全です。また、蛍光灯にはカバー装着や耐熱テープで破片散乱や落下を防ぐ対策をおこなうとよいでしょう。
感震ブレーカーは、地震の揺れを感知し、自動的に電源を遮断する装置です。これにより、地震発生時の電気火災を防ぐことができます。
2014年、感震ブレーカーの普及が国の計画で決まり、2016年には設置に関する基準が設けられました。2019年には火災や延焼リスクの高い地域に設置が勧告され、他の地域でも設置が推奨されています。
また、感震ブレーカーと合わせて、住宅用火災警報器や消火器などの消火設備の点検もおこない、緊急時に備えた万全の対策を整えておきましょう。
大地震では「キラーパルス」と呼ばれる周期1〜2秒の強い揺れが生じることがあり、この揺れは木造住宅などに倒壊や破損を引き起こす危険があります。こうした揺れに耐えられるように、建物の耐震補強は命を守るために不可欠です。
特に1981(昭和56)年以前に建てられた建物は旧耐震基準で設計されており、耐震性が不十分な場合があります。専門家による耐震診断を受け、必要であれば耐震補強をおこないましょう。
また、自治体では耐震改修に対する支援制度も提供しています。早めに対策を講じ、地域の支援を活用して安全な住まいを確保することが重要です。
こちらの記事では、キラーパルスの概要と耐震化対策について詳しく解説していますのでご一読ください。
【関連記事】キラーパルスとは?その脅威と住宅耐震化の必要性を解説
防災グッズには0次、1次、2次といった考え方があり、それぞれの備えが重要です。
●0次の防災グッズ
普段から持ち歩く防災グッズ(水筒や軽食、モバイルバッテリー、薬、現金など)
●1次の防災グッズ
避難時に必要なものをまとめた持ち出し袋(水や非常食、防寒具、ラジオ、応急セット、簡易トイレ、懐中電灯など)
●2次の防災グッズ
自宅に備蓄しておくもの(1週間分の水や食料、日用品など)
これらのグッズを適切に準備することで、いざという時に安心して対応できます。
なお、防災グッズや非常食の選び方については、以下の記事で詳細をまとめています。ご自身や家族の命を守るために必要な情報ですので、ぜひご確認ください。
【関連記事】防災グッズを見直そう|負担感のない安心安全な備え方とは?
【関連記事】非常食の選び方と無理のない備蓄法|日常生活にローリングストックを取り入れよう)
家の外での備えとして、ガレージや倉庫、庭木、鉢植えの管理が重要です。ガレージや倉庫が倒壊すると大きな被害を引き起こす可能性があるため、定期的に点検し、強風や地震で倒れないよう庭木や鉢植えを剪定してリスクを減らしましょう。
また、老朽化したブロック塀や樹木にも注意が必要です。ブロック塀は地震で倒壊し、倒木は日常の場面でも突然倒れるなど死亡事故が発生しています。これらのリスクを避けるため、適切な撤去や修繕をおこなうことが肝要です。
さらに、自家用車に簡易防災グッズを常備することで災害時に迅速に対応できます。飲料水、毛布、携帯充電器、懐中電灯などを車に保管し、避難時にすぐに利用できるよう準備しておきましょう。
災害発生時に迅速に対応するため、家族間での情報共有が欠かせません。以下のポイントを考慮して事前に準備を整え、災害時の冷静な行動につなげましょう。
避難経路と避難場所の確認
家族全員で避難経路や避難場所を確かめ、スムーズに避難できるようにする
緊急連絡先と集合場所の決定
災害時にすぐに連絡が取れるよう、緊急連絡先や集合場所を決めておく
自治体の防災計画の確認
自治体の防災計画や避難所の場所を把握し、避難所の開設状況や防災情報アプリの活用方法を確かめる
特に、遠方に住む家族や高齢者との連絡方法や避難手段の確認は非常に重要です。災害発生時には、被災地と離れた場所の方が電話がつながりやすくなるため、「三角連絡法」の活用が有効です。
三角連絡法とは、事前に遠方の親戚や友人(例:Aさん)を緊急連絡先として決め、災害時にはAさんを通じてお互いの安否を確認する方法です。この方法を使えば、電話がつながりにくい状況でも迅速に連絡を取り合えます。
また、電話がつながらない場合、災害用伝言ダイヤル171(いない)を利用できます。こちらは30秒以内で伝言を録音・再生でき、運用期間終了まで保存されるダイヤルです。
高齢者にこうした情報確認やアプリの使い方を教える際は、万が一の事態に備えて普段から一緒に確かめ、使い方に慣れてもらうことが大切です。
【関連記事】「南海トラフ地震臨時情報」を正しく理解して適切な避難行動につなげる
備えは、日頃からいつでもどこでも初期対応ができるよう、心の中でイメージしておくことが重要です。いざという時、冷静に行動できるよう、以下の最低限のポイントを押さえておきましょう。
地震が発生した際には、まず自身の安全を最優先に確保しなければなりません。以下はそのための基本的な対応方法です。
揺れを感じたら焦らず冷静に行動し、自分と周囲の安全を確保しましょう。
地震が発生した場合の初期対応や避難方法などについて以下の表にまとめました。事前に想定しておくと、地震発生時の迅速な対応につながります。
発生時の場所 | 対応方法 |
---|---|
家にいる | ・キッチン:余裕がある場合は火を消し、物が落ちない場所に身をかがめる・浴室:ドアを開けて避難路を確保し、頭を守り、低い体勢で待機・トイレ:ドアを開けて頭を守りながら低い姿勢で揺れが収まるのを待つ |
車で移動中 | ・道路の端に車を停車し、ラジオやカーナビで情報を収集・車を離れて避難する際は、緊急車両の妨げにならないように配慮する |
職場や学校 | ・建物内では頭を守り、低い体勢で揺れが収まるのを待つ ・指示に従い、避難経路を確認して避難する |
海や川の近く | ・身を守りつつ、津波の危険があるためすぐに高台、あるいは近くの高い建物に避難する・警報が出た場合は、速やかに指示に従う |
歩道を歩いている | ・倒れそうな看板や窓ガラス、街路樹などから離れ、バッグなどで頭部を守る・建物から離れられない場合は、安全なビルの中に避難する |
スーパーの中 | ・カゴなどで頭や首を保護しつつ棚から離れる・状況が落ち着いたら迅速に避難する |
電車バスに乗車中 | ・手すりにつかまり低姿勢をとり、揺れや急停車に備える・係員の指示に従う(慌てて非常用手動扉を操作して外に飛び出さないように)・火災が発生した場合、車両に設置された消火器で消火する |
地下街 | ・パニックにならず冷静に行動する・停電が発生した場合でも、壁に沿って歩き、非常口や出口に向かう |
エレベーター内 | ・全ての階のボタンを押して、最寄りの階で降りる・閉じ込められた場合は、インターホンを使って通報して救助を待つ |
これらの場所はあくまで一例であり、実際の状況では場所や環境によって適切な対応方法は異なることが予想されます。普段から通勤や通学路を歩き慣れている人でも、地震が発生した場合にどのように行動すべきかを考えるのは難しいかもしれません。
しかし、事前に「もし今地震が起きたら、自分はどうするか?」というシチュエーションを想定して行動を考える姿勢を持つことは大切です。この意識は、実際に地震が起きた場合の迅速かつ適切な行動につながります。
2024年元日、能登半島地震が発生し、多くの帰省客が被災しました。この地震の影響で、帰省先や旅行先での避難に関して不安や戸惑いを感じた人々が多く、事前準備の重要性が明らかになりました。特に、普段と異なる環境での避難は判断に迷う場合があるため、帰省前に必要な準備を整えておきましょう。
能登半島地震では、旅行・宿泊客の避難行動に関して多くの課題が浮き彫りになりました。人々の行動を調査した『地震に遭遇した住民の対応行動』(東北大学災害科学国際研究所ほか)によると、旅行・帰省客の約半数が避難方法を事前に決めていなかったことがわかっています。また、宿泊施設では口頭での事前避難説明が約50%にされていたものの、地震発生時に説明や誘導がなかったケースが25%に達したことが明らかになりました。
これらの調査結果を踏まえ、旅行先や帰省先での備えは事前にしっかりとチェックしておくことが重要です。宿泊施設や実家の避難経路、非常口の位置を確認し、避難場所を把握しておきましょう。もし宿泊施設で事前の避難説明がなかった場合はスタッフに確認し、避難経路をしっかり確かめてください。
お盆や年末年始の帰省は、特に高齢の親御さんと防災対策を見直す良い機会です。地震、火災、大雨、津波など、さまざまな災害リスクに備えるため、以下のポイントをチェックしましょう。
まず、地震対策として家具の配置を確認しましょう。タンスや本棚が倒れて出入口やベッドを塞がないように移動し、しっかり固定します。特に重い家具は高齢者だけでの移動が難しいため、帰省時などに一緒に確認し、必要に応じて見直しましょう。
また、非常用持ち出し袋には大人用オムツや杖、補聴器、薬など、高齢者に必要な物が揃っているか確認してください。就寝時の位置にも注意を払うなど、倒れた家具や津波の被害を避けるため、安全な場所を選ぶことが命を守るために重要です。
万が一の火災に備えるため、住宅用火災警報器の点検も忘れずにおこないましょう。設置から10年以上経過している場合は、電池切れや本体交換が必要な可能性があります。警報器をテストして動作を確認し、不具合があれば早急に対処してください。
初詣などの外出前に、避難所や避難ルートを親と一緒にチェックしましょう。ハザードマップを活用して津波による浸水被害などを想定するとともに、危険な段差や倒壊のおそれがある場所を把握します。
能登半島地震では車で避難した人の半数以上が渋滞に遭遇したとの報告があります。そのため、徒歩でも安全に避難できるルートをあらかじめ確認しておくと安心です。
近隣の方と連絡先を交換しておくことも重要です。特に帰省時以外に災害が発生した場合、安否確認や避難のサポートをお願いできる信頼関係が助けになります。お隣への挨拶を兼ねて、連絡先交換を進めてみましょう。
帰省時には、災害伝言ダイヤル(171)や緊急時に役立つアプリの登録もおこないましょう。家族全員で使い方を確認しておけば、離れていても連絡手段が確保できます。
防災対策は行政任せにせず、すべての人が自分と家族を守る意識を持つことが大切です。帰省をきっかけに、家族や親戚と防災について話し合い、全員が安心して暮らせる備えを整えましょう。
地震への備えは事前の準備から始まり、発生後の適切な行動や情報共有まで広がります。この記事を参考に、万が一に備えて準備を整え、実際には家族や地域と連携し冷静に対応することが命を守るために最も重要です。地震は予測できないからこそ、日々の備えをおろそかにせず、しっかりと準備を進めましょう。
【参照】
東京消防庁|地震に対する10の備え
首相官邸|災害が起きる前にできること
気象庁|地震から身を守るために
防災ニッポン|帰省先で被災したら?確かめておくこと、準備すべきこと
JA共済|地震発生時の心得
YAHOO!JAPAN|スマホ防災
NHK防災|年末年始の帰省 実家の防災チェックを!
東北大学 災害科学国際研究所|帰省等で普段いない場所で地震に遭遇した住民の対応行動
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