JOURNAL #4302025.04.25更新日:2025.04.25

雷注意報とは?命を守るために知っておきたい雷災害と対策

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

雷は私たちの身近で発生しうる自然災害の一つです。2025年4月には奈良県で、部活動中の中学生が雷の被害に遭う痛ましい事故がありました。これまでも各地で被害が報告されており、雷への認識や対応の重要性があらためて問われています。

この記事では、雷注意報の意味や雷が起きる仕組み、過去の被害事例を紹介し、屋内外で実践できる具体的な対策を解説します。大切な命を守るため、正しい知識を身に着け迅速な行動を心がける一助となれば幸いです。

雷注意報とは?

「雷注意報が出ています」と天気予報で耳にすることがありますが、これはどのような状況で発表されるのでしょうか?また、すぐに避難しなければならないものなのでしょうか?ここでは雷注意報や発令される状況、関連する用語について詳しく解説します。

「雷注意報」の意味は?

雷注意報は、気象庁が「落雷による災害が発生するおそれがある」と判断した場合に発表されます。これは、「すぐに危険が迫っている」というほどの緊急性はないものの、「雷によって被害が生じるおそれがあるため、念のため注意を払ってください」という呼びかけです。

災害のおそれがあるときに気象庁が出す注意喚起には、「注意報」に加え、より重大な災害が予想される場合に発令される「警報」や「特別警報」があります。ただし雷に関しては、発生する場所や時刻を高い精度で予想するのが難しいなどの理由から、「雷警報」は存在していません。

つまり、「雷注意報」は雷のリスクが高まっているという最大級の注意喚起であり、必ずしも雷が鳴るとは限らないものの、「油断は禁物」という状況です。空模様や周囲の変化に敏感になり、自らの判断で安全行動をとることが求められます。

雷注意報が出るのはどんなとき?

雷注意報の背景には、強い上昇気流によって急速に発達する分厚い雲、「積乱雲(せきらんうん)」の存在があります。積乱雲は発達すると、雷、突風、ひょう、竜巻、そして短時間の激しい雨などをもたらします。

特に夏場や大気が不安定な日は、こうした雲が急速に成長しやすく、午後になって急に空が暗くなり雷雨に見舞われる、といった現象も珍しくありません。こうした雲の発生が予想されるときに雷注意報が発表されます。

「集中豪雨」や「局地的豪雨」との違いは?

雷注意報と一緒に耳にすることの多い「集中豪雨」や「局地的豪雨」。どちらも積乱雲が関係していますが、性質には違いがあります。

局地的豪雨は、1つの積乱雲がもたらす短時間の激しい雨で、狭い範囲に強い雨を降らせます。一方の集中豪雨は、積乱雲が次々と発生し同じ場所にかかり続けることで、長時間にわたって強い雨が降り続く現象です。被害が広がるのは後者ですが、どちらも雷を伴うことが多いため、雷注意報が出ているときは、突風や大雨などその他の影響にも注意が必要です。

雷注意報は直ちに避難を促すものではないものの、気象の変化に備えるべきタイミングを知らせる大切な情報です。「まだ晴れているから大丈夫」と油断せず、空模様の変化や雷鳴に注意しながら、自分の身を守る行動をとることが重要です。なお、具体的な対策については後ほど詳しく解説します。

雷はどうして起きる?仕組みとリスク

雷は命に関わる重大なリスクをもたらします。直撃した場合はもちろん、落雷の周囲への影響も大きく、日常生活のなかでも注意が必要です。以下に、雷が発生する仕組みや被害の実例を紹介します。リスクを避けるために重要な「早めの避難」と「正しい気象情報の把握」について確認してください。

雷の発生原因と仕組み

雷は、雲の中で発生した電気が一気に流れ出すことで起こります。その仕組みを順を追って見ていきましょう。

①水蒸気が上昇する
太陽で温められた地面や海の水が水蒸気となり、空へと昇る
②積乱雲ができる
水蒸気が冷やされ、水や氷の粒ができて積乱雲になる
③氷の粒がぶつかり静電気が発生する
雲の中で氷の粒がこすれ合い、プラスとマイナスの静電気が発生する
④電気がたまり雷が発生する
雲や地面との間で電気の差が限界に達すると放電が起こり落雷が発生する

1回の雷の電圧は約1億ボルトといわれます。これは、家庭用電気100ボルトの100万倍もの威力です。

なお、気象庁のデータによると落雷害は8月に多いものの、1年を通じて発生しています。そのため、季節に関係なく常時、注意が必要です。また、4月から10月には主に太平洋側で、11月から3月には日本海側で多発する傾向があります。

主な雷の種類と危険性

雷にはいくつかの種類があり、そのなかでも最も危険なのは「直撃雷」と「側撃雷」です。直撃雷は、雷が直接人や建物に落ちる現象で、最も致命的な結果を引き起こす可能性があります。直撃雷を受けた場合の死亡率は約8割とされ、生死に関わる事態になるおそれがあります。

側撃雷とは、雷が近くの木や電柱に落ちた際に電流が横に広がり、付近の人が感電する現象です。安全な場所にいても、側撃を受けることがあるため、細心の注意を払う必要があります。

また、金属を身に着けることが必ずしも雷を引き寄せるわけではありません。むしろ、自分より高い物を持つ行為、たとえば傘をさすことのほうが、落雷のリスクを高めます。

実際にあった雷災害の事例

雷は一瞬で命を奪う危険があります。気象庁の「落雷による災害例」によると、部活の練習中や、釣りや登山中の事故、木の下で雨宿りをしていた人が亡くなるケースが報告されています。

また最近、奈良県の中学校で、部活動中に生徒が落雷の被害に遭うという事故が発生しました。雷注意報の把握が不十分であったことも被害をもたらした一因とされています。

稲妻が遠くに見えたり雷鳴が遅れて聞こえたりしても、必ずしも安全とは限りません。特に、グラウンドやイベント会場など開けた場所や、海・山といった避難が難しい場所では、落雷の危険性が一層高まります。命を守るためには、迅速に安全な建物に避難することが最も重要です。

雷から身を守る行動と対策

雷は予測が難しい自然現象ですが、兆候に気づき、適切な行動を取ることで命を守れます。特に被雷しやすい状況を知り、事前に対策を整えることが重要です。ここでは、落雷リスクを予測するための天気把握や、屋内外、シーン別の対策、雷に関する情報収集について解説します。

雷が近づいている兆候を見逃さない

雷は突然やってくるわけではなく、いくつかの兆候によってその接近を察知できます。以下のサインが見られたら、すぐに避難行動をとりましょう。

  • 積乱雲が見える、近づいている:雷を引き起こす雲が発達している兆候
  • 急に空が暗くなる:雲が増え、雷雨が迫っている証拠
  • ゴロゴロという雷鳴が聞こえる:音が聞こえた場合、その雷が近くにあることを示す
  • 冷たい風が吹き始める:雷の前に冷たい風が吹くことがある

以上の兆候を見逃さないよう注意し、急な大粒の雨が降り始める前に活動を止めて避難するようにしましょう。

事前&リアルタイムで情報収集を

雷に対する備えと対応は、事前の情報収集と迅速な判断が鍵です。たとえば、気象庁では以下のような対策を推奨しています。

■前日や当日の朝

テレビやラジオで天気予報を確認し、「雷を伴う」という予報があれば、雷に備えて準備をしておく

■外出前と活動中

気象庁の「雷ナウキャスト」を逐一チェックする

「雷ナウキャスト」で示す活動度の見方

出典:気象庁|雷ナウキャストの見方

雷ナウキャストは雷の強さや発生可能性を1km単位で解析し、1時間先までの予測を10分ごとに更新しています。活動度1以上の予測があれば、1時間以内に雷が発生する可能性が高いため、避難を想定した行動が重要です。

素人判断に基づいた行動は絶対に避けなければなりません。特に屋外の活動が予定されている場合、その前日はもちろん当日、そしてリアルタイムで情報確認が必要です。

屋外での基本的な対策

雷はどこにいても発生する可能性があり、特に開けた場所や高所では危険度が増します。屋外での行動には十分な注意が必要です。

以下の「木や電柱から離れる」「雷しゃがみ」は、あくまで屋内や車内へ避難できない緊急時の対応手段として覚えておきましょう。最も安全なのは、近くの建物や車内に避難することです。

■木や電柱から4m以上離れる

雷は高い場所に落ちやすいため、木や電柱の近くには近づかないようにしましょう。特に電柱や鉄塔など高い物の周囲では、頂上を45度以上の角度で見上げる範囲から4メートル以上離れることが、安全を確保するための目安となります。

■「雷しゃがみ」を覚える

どうしても避難できない場合に備えて、緊急時の姿勢「雷しゃがみ」を知っておくとよいでしょう。

  • 姿勢を低く保つ:高い位置にいると落雷の対象になりやすいため、できるだけ低くしゃがむ
  • 耳をふさぐ:雷の音は非常に大きく、耳を傷める可能性があるため、耳をふさいで守る
  • 足をそろえる:足を開いていると電流が体内を通りやすくなるため、足は閉じてそろえる
  • つま先立ち:地面との接地面を減らすために、できたらつま先立ちでしゃがむ(手・膝・お尻を地面につけない)

この姿勢をとることで、落雷が体内を通るリスクを軽減し、感電による被害を最小限に抑える効果が期待されます。ただし、この姿勢で命の安全が保証されるわけではありません。安全な場所(屋内・車内)への避難が最も重要です。

■できる限り屋内や車に避難する

「雷しゃがみ」は緊急時の手段であり、基本的には屋内や車内への避難が最も効果的で安全な対策です。近くに建物や車がある場合は、迷わずすぐに避難してください。

たとえば、学校の部活動中であれば、雷注意報や雷ナウキャスト、雷鳴や稲光などの兆候を確認した時点で、すぐに活動を中止し、校舎や体育館などの安全な建物に避難しましょう。

アウトドアやキャンプ中の場合は、テントや木の下は避け、近くにある車や建物への避難が基本です。通勤・通学中に雷鳴が聞こえた場合も、ただちに最寄りの建物に入って身を守ってください。

また、車内は比較的安全な場所とされています。車に雷が落ちた際には、電気が車の外側(金属部分)を伝ってタイヤから地面へと流れるため、車内にいる人が感電する可能性は低いためです。

ただし、車内でもピラーやドア枠などの金属部分には触れないようにすることが重要です。加えて、雷によって車が故障し、走行不能となる恐れもあるため、運転中に雷に遭遇した際は屋内の駐車場など安全な場所へ避難しましょう。

屋内での基本的な対策

屋内にいるときも油断は禁物です。落雷によって家の配線や構造物を通じて電気が伝わることがあります。以下の行動を心がけて安全を確保しましょう。

■電子機器の使用は控える

雷が鳴っている間は、電化製品を使用しないようにする

■壁・窓・コンセントから離れて過ごす

雷の電流が家の構造を通ることがあるため、部屋の中央に移動し、壁や窓から1mは離れるようにする

■雷が止んでからも20分以上待機する

雷鳴が止んでも、しばらくは安全な場所で待機し、再発の可能性に備える

屋内であっても気象庁の雷注意報や雷ナウキャストを利用して、リアルタイムで雷の位置や予測を確認しましょう。

なお、雷が落ちたとき、電線や電気機器に異常な電圧や電流が発生することがあります。この現象は「雷サージ」と呼ばれ、瞬間的な過電圧や過電流によってコンセントにつながっているパソコンや電気機器が故障してしまう場合もあるため、雷サージ保護機能付きの電源タップを使用するなどの対策をしておくとよいでしょう。

命を守るために雷への正しい備えと素早い判断を

雷は、命に関わる危険を伴う自然災害です。雷注意報が出たときだけでなく、空が急に暗くなったり、雷鳴や冷たい風を感じたりしたら、すぐに安全な場所へ避難しましょう。天気情報や雷ナウキャストを活用し、「まだ大丈夫」と思わず、「そろそろ危ないかも」と感じた時点で行動する判断力が大切です。この記事を通して雷の仕組みや対策を知り、万が一のときに落ち着いて対応できるよう備えておきましょう。

【参考】
気象庁|急な大雨や雷・竜巻から身を守るために
気象庁|局地的大雨から 身を守るために
気象庁|気象等の注意報の種類と内容
気象庁|「雷」による災害
気象庁|雷とは?
気象庁|雷の正体
気象庁|雷ナウキャスト
日本気象協会|雷レーダー
関西電力|雷ってどうやっておこるの?
関西電力|かんでんWITH YOU 雷が発生する仕組みは?イラストでわかりやすく解説!
九州電力|雷のメカニズム
防災ニッポン|知らないと危ない!雷の怖さと備えるポイント

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