JOURNAL #3582024.08.14更新日:2024.09.06

防災グッズを見直そう|負担感のない安心安全な備え方とは?

広報:空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

2024年に入ってから、地震や水害などの自然災害が各地で頻発しています。他地域の被災を知り、新たに防災グッズを用意したり、備蓄品の見直しをおこなったりする方も多いでしょう。しかし、時間が経つと防災の意識が薄れ、見直しが後回しになることもあります。

この記事では、防災グッズの概要と実際の準備状況を紹介し、災害時に持ち出すアイテムや備蓄品の準備、チェック方法を詳しく解説します。

防災グッズの目的

防災グッズ

防災グッズは現在、通販などで手軽に用意できるアイテムとなっています。しかし、市販の持ち出しリュックが届いた後に安心して中身を確認せず、他に必要なものを揃えないままでいる方もいるかもしれません。

実際に世帯に応じた防災グッズを適切に用意するために、まずは防災グッズの目的を確認しましょう。

防災グッズとは?

防災グッズは、災害発生時に迅速な対応を促し、安全を確保するための重要なアイテムです。命を守り、生活を支えるための準備物であり、日常生活でも役立つアイテムが含まれます。特に、水や食料、応急処置キット、簡易トイレなどは基本的な備蓄として重要です。

防災グッズといえば、多くの人が非常用持ち出しリュックを思い浮かべるでしょう。しかし、災害発生時や避難時に命や生活を守るためには、市販のグッズだけでは不十分な場合もあります。

そのため、防災グッズは非常時の持ち出し用品だけでなく、日常的に携帯する持ち物も考慮することが重要です。防災グッズには、以下の備えが含まれます。

  • 0次の備え:日常持ち歩いたり車内に入れたりしておくもの
  • 1次の備え:避難する際に自宅から持ち出すもの
  • 2次の備え:避難生活を続けるために必要な備蓄品

この記事では、これら3種類の備えを考慮し、それぞれの用途と使い方を確認します。状況に応じた適切な備えを整え、災害時にスムーズに対応できるようにしましょう。

防災グッズの準備を進めるためには

防災グッズの準備を進めるためには、以下の視点や行動が重要です。

  • 各世帯で必要な備え(0次〜2次)を確認し、誰がどれくらい準備すべきかを明確にする
  • 効率的で負担の少ない準備や補充法を探し、実行しやすい方法を取り入れる
  • 準備が後回しになりがちな高齢者世帯の状況を改善する
  • 定期的に見直しの機会を設け、防災グッズや備蓄品の点検、更新をおこなう

一人暮らしの高齢者よりも、家族と同居する高齢者のほうが防災グッズを準備しやすい傾向があります。世帯状況による準備の差を埋めるためには、親戚や知人、地域の自治会などを通じて情報を共有し、負担の少ない準備と点検をおこなうことが重要です。

防災グッズの選び方

「防災グッズ」といっても、いつ・何のために・誰が使うかによって、その準備物やまとめ方も変わってきます。前述で紹介した0次、1次、2次の備えを用意し、時と場合によって使い分けることが重要です。

まずは本当に必要な物を用意する

防災グッズのなかでリュックの持ち運び範囲に注意することは重要なポイントです。災害発生時には、命を守ることが最優先です。重たい荷物を持ち運ぶのはリスクが大きいため、リュックに詰めるものは必要最小限にとどめましょう。

また、缶詰やレトルト食品をすべてリュックに詰め込んだ場合、避難所で自分だけが食べられるかどうかも考慮する必要があります。避難所では、同じ食べ物を共有することで逆に精神的なストレスを軽減できるかもしれません。

品名0次の備え1次の備え2次の備え備考
飲料水・1人1日3リットル×3日分が目安
・脱水予防に効果的なスポーツ・持ち出しリュックには500mlペットボトル2本
食料・そのまま食べられるものや調理が簡単なもの・人数×3日分が目安・0次~2次の備えごとに準備することが推奨される
懐中電灯・家族の人数分あると良い・予備の電池も準備する
モバイルバッテリー・スマートフォンの使用頻度が高くなるため必需品
簡易トイレ・避難所生活で困ることが多いため用意しておく・吸収剤や凝固剤が入っているものがおすすめ
トイレットペーパー・ティッシュの代わりとしても使える
防寒具・急な気温の低下にも対応しやすい・コンパクトなアルミブランケットが重宝する
ホイッスル・閉じ込められたり救助を求めたりするときに活用する
運動靴・足を保護するために必要・避難所ではスリッパが便利
軍手・手を保護するために必要
布粘着テープ(ペン)・メモしてメッセージを伝えたり傷口の止血に使ったりする
救急セット・絆創膏、包帯、常備薬など
現金・災害発生直後はATMや電子マネーが使えない可能性が高い・小銭で1~2万円程度用意しておく

災害や避難状況によって準備するものは異なります。

たとえば、通勤中に災害が発生した場合に備えて、バッグに飴やチョコレート、プロテインバーなどを常備することが考えられます。避難所に向かう際には、リュックに乾パンやビスケットを入れておくと便利です。在宅避難中に電気やガスが止まった場合には、カセットコンロと鍋を用意しておくことで、レトルト食品やアルファ米、ラーメンなどでしのげます。

また、懐中電灯についてはスマートフォンのライトを使うこともできますが、その場合はモバイルバッテリーも携帯する必要があります。災害情報を取得するために、ラジオを持つ場合は、予備の電池や手回し式ラジオも考慮するとよいでしょう。

あってよかった防災グッズも念頭におく

突然の災害発生時に慌てずに避難し、避難生活を安心して過ごすためには、「あってよかった防災グッズ」を知っておくことが重要です。ここでは、実際に役立ったとされる防災グッズを紹介します。

0次の備えとして普段から持ち歩いたり、車に入れておくもの、1次の備えとして避難時に持ち出すリュックに入れるもの、そして2次の備えとして家や倉庫に置いておくものに分けて考えましょう。

■洗面用具(0次あるいは1次の備え)

普段持ち歩く用、あるいは非常時に持ち出すリュックのなかに入れておくとよいものです。

  • 歯ブラシ・歯磨き粉・マウスウオッシュ
  • タオル
  • マスク
  • ティッシュ・ウエットティッシュ
  • 体温計
  • 手指用消毒アルコール・ハンドソープ

口腔ケアが不十分になると感染症を引き起こすといわれるため、携帯用の歯ブラシはポーチのなかに入れておきます。マスクも避難所での感染予防や防寒対策としても重宝します。

■調理や食事に使う用具(1次あるいは2次の備え)

乾パンや缶詰などの非常食に加えて、以下の用具を準備しておくと便利です。

  • カセットコンロとボンベ:電気やガス不通時の調理に便利、予備のボンベも忘れずに
  • ポリタンク:ライフラインが止まって給水する際に使う
  • 紙皿や紙コップ、わりばし、ラップ、ポリ袋
  • 万能ナイフ類・缶切り:包丁の代わりに使用可能
  • ライターやマッチ、新聞紙:調理用や暖房器具の火起こしに使える

紙皿のかわりに使わなくなったプラスチック容器を備蓄しておくことも推奨されます。食事の前に皿にラップを敷くことで洗い物が減りますが、衛生面には注意が必要です。

■服装など(1次あるいは2次の備え)

避難時に必要なアイテムは以下の通りです。

  • ヘルメット・防災ずきん:落下物から頭を守る
  • 下着・靴下、着替えの衣類:動きやすく、防寒具も寒い季節には必要
  • 雨具:上下分かれたカッパが便利
  • ヘアゴム:髪をまとめるために役立つ

特に避難する際には身につけ、持てるものは限られますが、上記を考慮しましょう。

■そのほか(2次の備え)

状況が落ち着いたところで、避難所から自宅に戻る方もいるでしょう。その際、片づけや補修などの際に便利なものとして以下の物が挙げられます。

  • ほうき・ちりとり
  • ブルーシート
  • バケツ
  • ゴミ袋(雨具や敷物、などにも使える)

また、子どもたちのストレス軽減のために、トランプや折り紙なども用意しておくとよいでしょう。避難所での生活が続く場合はアイマスクや耳栓も、周囲の音が気になる人には便利です。

防災グッズは必要な人に応じて準備しよう

防災グッズの準備は、家族全員の安全を確保するために重要ですが、特定の人々には特別な配慮が必要です。家族全体の備蓄を整えるだけでなく、各人のニーズに応じた準備も不可欠です。

個人ごとに持ち出し用リュックを用意することが求められます。また、定期的に見直す機会を設けて常に最新の状態を保つようにしましょう。

高齢者

高齢者の防災準備には、以下のアイテムが重要です。特に一人暮らしの高齢者に対しては、関係する人々が適切にサポートする必要があります。

  • 常用している薬や医療機器(血圧計、糖尿病用のインスリンなど)
  • 補助器具: 歩行器や杖など
  • 保険証やマイナンバーカード、お薬手帳など
  • 介護食や食事の際に使いやすい用具
  • 補聴器や眼鏡など

また、高齢者が緊急時に連絡できないことも考えられます。特に一人暮らしのお年寄りの場合、家族や親戚の連絡先をリュックに入れておくことも重要です。

障がい者

障がい者の場合、個別のニーズに合わせた準備が必要です。

  • 必要な支援機器(車椅子や義足など)
  • 緊急連絡手段(緊急時の連絡方法や対応策)
  • 特別な医療ニーズ(特殊ケアに必要な器具や薬、医療情報)

障がいのある方にとって、特に緊急時のコミュニケーションサポートは不可欠です。 聴覚障害者のために、手話通訳アプリや聴覚補助器具、視覚障害者のために音声ガイド付きの機器など、必要なサポートグッズを揃えておきます。

妊産婦&乳児

妊産婦や乳児の防災準備には、以下のアイテムが必須です。

  • マタニティ用品(妊婦用のサポートグッズ)
  • 緊急時に必要な産科情報の準備
  • 赤ちゃんのミルクと離乳食(調理のいらないもの)
  • おむつとおしりふき
  • ベビーカーや寝具
  • お気に入りのアイテム(おもちゃやぬいぐるみ、ブランケットなど)

赤ちゃんが安心できるよう、お気に入りのぬいぐるみやブランケットを持参するのが良いでしょう。

子ども

子どもが安全に避難し、安心して過ごせるためには、以下のアイテムを準備しましょう。

  • 着替えと防寒具
  • おもちゃや学用品
  • 持病がある場合の常備薬

防災グッズを揃える場合、お子さんと一緒に準備し、防災意識の向上に役立てることも大切な視点です。学生や社会人になって一人暮らしをする際の助けにもなります。

ある調査では、20代の人は他の世代と比べて防災グッズを用意していない割合が高く、その主な理由として挙げられたのが「必要だと思っているが、まだ対策できていない」(79.5%)でした。若い世代に必要性を啓発し、家族や友人とともに早めの準備を整えることが求められます。

ペット

ペットの安全を確保するためには、以下のアイテムを準備しましょう。

  • フードと水(数日分を用意)
  • リードやケージ
  • トイレ用品(トイレシートやトイレ)
  • 薬や医療品
  • おもちゃやブランケット

動物と一緒に避難する場合も考えられます。避難所で生活するのを躊躇して、車中泊をおこなう人も少なくありません。災害時を想定して適切な準備を整えておくことが肝要です。

以下のコラムでは、ペットの備蓄に関する情報を詳しく紹介していますので、ぜひご確認ください。

【関連記事】ペットの備蓄を用意しよう。備蓄品のチェックリストや便利グッズを紹介

フェーズフリーとは?

フェーズフリーについて説明しているイメージ画像です。

フェーズフリー(Phase Free)とは、平常時と非常時の両方で利用できるデザインを指し、日常生活に役立ちつつも災害時にそのまま使用できるアイテムが含まれます。フェーズフリーを活用することで、準備物の負担感を軽減し、普段使いできるアイテムで非常時にも対応可能です。

現在、フェーズフリーの考えを取り入れたアイテムが多様に存在しています。

  • モバイルバッテリー:大容量バッテリーやポータブル電源を備えたものも含まれる
  • 蓄光LED電球:普段はLED電球として使用し、消灯後もほのかに光ることで暗所の目印になる
  • 簡易トイレ付きアート作品:簡易トイレが内蔵されたアート作品
  • クッション寝袋:普段はクッションとして使い、災害時には寝袋やブランケットとして利用できる
  • バケツにもなる撥水バッグ:日常生活では雨からパソコンや書類を守る役割を果たし、災害時には給水用のバケツとしても使える
  • 懐中電灯にもなる靴ベラ:靴ベラと玄関用ライトとして使えるだけでなく、非常時には懐中電灯としても活用できる

日常的に使える防災アイテムを選び、少しずつ備えを整えることで、日常と非常時のギャップを最小限に抑えることが可能です。フェーズフリーによって安心な生活が実現します。

こちらの記事でもフェーズフリーや対応可能なアイテムについて紹介していますので、ぜひご確認ください。

【関連記事】フェーズフリーとは?非常時もいつも通り生活するために

防災グッズに関するQ&A

最後に、防災グッズに関するQ&Aについて紹介します。この記事で紹介しきれなかった大事な情報も含まれますので、ご確認ください。

災害時にあってよかった食べ物は?

災害時には、長期間保存できる非常食が非常に重要です。アルファ米は、賞味期限が5年と長く、軽量でコンパクトです。豊富なラインナップがあり、アレルギー対応のものもあります。

お子さんには、乳酸菌が豊富で便秘対策にも役立つビスコ缶もおすすめです。非常時には見慣れた味が心の支えになることがあります。普段から好きなレトルト食品やカップ麺を備えておくのもよいでしょう。

どこに保管する?

防災グッズや備蓄品を用意する際は、保管場所や方法にも留意しましょう。備蓄品はパントリーなどに管理し、消費期限が分かるように日付の付箋を貼る「ローリングストック」を実践します。また、家族全員が保管場所を把握し、必要時にすぐ取り出せるようにすることも重要です。

災害時の取り出しに備え、複数の場所に分散して保管することも考えられます。たとえば、長靴やシューズ、雨具などは玄関近く、緊急用持ち出し袋は枕元に置くと迅速な避難が可能です。

いずれにしても、物を見えないところや確認しにくい場所に保管しないようにしましょう。

【関連記事】災害備蓄の「ローリングストック」とは?基本から実践まで解説!

車に用意しておきたい防災グッズは?

車に常備すべき防災グッズには、非常食や水、懐中電灯、応急キット、寝袋、タオル、バッテリー充電器などがあります。これにより、緊急時に迅速に対応できます。ただし、車両の性能や燃費に影響を与えないように、多くの荷物を詰め込むのは避けましょう。車両が使用できない場合に備えて、車外で取り出せる簡易防災バッグを用意するのが推奨されます。

南海トラフの備えは何日分?

南海トラフ地震に備えては、1週間分の備蓄が推奨されています。地震後には物流が途絶える可能性が高いためです。必要な医薬品や生活必需品を合わせて準備し、家族全員分だけでなく、ペットの食事や衛生用品も考慮しましょう。少なくとも7日分を備えておくことで、災害発生後の初期対応がスムーズになります。

夏に備えて防災グッズとして必要なものは何ですか?

夏の防災には、熱中症対策と衛生対策が重要です。冷却シートや保冷剤、うちわなどの冷却用品が役立ちます。また、UVカットの帽子や軽量の防水シートも暑さ対策に有効です。衛生管理のために、ウェットティッシュや消毒液等も準備しましょう。

冬の災害時になくて困ったものは?

冬の災害時には、地域によって異なる寒さ対策が必要です。厚手のコートや手袋、毛布、暖房器具やポータブルストーブを用意しておくとよいでしょう。水道が凍結することもあるため、飲料水の備蓄が特に重要です。また、温かい食事が用意できる非常食も推奨されています。

防災バッグに現金はどのくらい?

災害時にはATMが使用できない可能性が高いため、1〜2万円程度の現金を用意しておくと便利です。家族全員分の現金を個別に準備し、身分証明書や重要書類のコピーも防災バッグに入れておくと、緊急時の対応がスムーズになります。

以上の内容を確認し、いざというときに迅速に行動できるように準備を整えましょう。また、防災の日に地域の防災活動に進んで参加しましょう。防災の日や関連する地域防災についての詳細は、こちらの記事で解説していますので、合わせてご確認ください。

【関連記事】防災の日2024年|災害から学び、未来への備えを万全に

防災グッズを適切に準備し、災害時の迅速な対応につなげよう

防災グッズの見直しは、災害に対する準備を確実にするために不可欠です。この記事では、効果的な備え方として、0次から2次の備えに応じたアイテムの用意とその管理方法を紹介しました。

特に、普段から携帯するものや避難時に持ち出すアイテム、家庭での備蓄品のバランスを取り、常に最新の状態を保つことが重要です。高齢者や障がい者、妊産婦など、個々のニーズに応じた防災グッズの準備も欠かせません。定期的な見直しと適切な準備を通じて、いざという時に迅速かつ冷静な対応ができるようにしましょう。

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空飛ぶ捜索医療団"ARROWS" 編集部

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